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無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が引き起こすハラスメント~心理的安全性が高い職場を築く視点

偏見は、誰もが無意識に持っているものであり、悪意がなくても不適切な発言につながることがあります。

このコラムでは、意図せずハラスメントとみなされる言動の背景を探ります。個人と組織がどのように意識を変え、行動することで、良好で成果を生む職場環境を築けるのかを解説します。

ハラスメントの根源にある思い込み

社会の多様化が進む現代において、ハラスメントの基準は大きく変化しています。かつては問題視されなかった言動が、今ではハラスメントと認定されることも少なくありません。インターネットやSNSで個人の経験が容易に共有される時代背景も、その意識変革に影響します。

「自分は大丈夫」という思い込みや勘違いは、非常に危険な考え方です。ハラスメントであるかどうかの基準は、受け止める相手が決めるものだからです。自身の言動が他者にどう影響するかを、常に想像力を働かせながら意識する必要があります。

多様な価値観が交錯する職場で生まれる無意識の偏見

多様な人材が共に働く現代の職場で、ハラスメントは「無意識の偏見」から生じることがあります。これは「アンコンシャス・バイアス」と呼ばれ、自身では気づきにくい決めつけや思い込みとして表れます。

■アンコンシャス・バイアスな発言例

  • うちはベンチャーだから、残業は当たり前だよね。
    ⇒企業のフェーズや文化に対する固定観念で、働き方に対する多様な価値観を排除する可能性があります。
  • このプロジェクトは、皆が家族のように助け合うから成功するんだ。
    ⇒「家族のような関係性」を理想とすることで、プライベートと仕事を分けたい人にはプレッシャーとなり、特定の人間関係を押し付けています。
  • 独身だから、急な出張もお願いしやすいよね。
    ⇒独身者に時間的制約がないという無意識の決めつけが含まれています。
  • 体育会系だから、根性があるに違いない。
    ⇒所属団体や経験に対する偏見(体育会系の人は精神力が強いという思い込み)が含まれています。
  • ベテランなのに、新しいツールをすぐに使いこなせてすごいですね。
    ⇒年齢に対する偏見(高齢者は新しいことを学ぶのが苦手だという思い込み)が含まれています。
  • 最近の子はSNSとか詳しいから、これお願いしていい?
    ⇒「若い世代はデジタルに強い」という年齢に関する無意識の偏見です。若者すべてがそうではない可能性を無視しています。
  • さすが男性だね、力仕事は頼りになるよ!
    ⇒性別に関わらず得意・不得意があり、本人の意思を無視した役割期待は負担になることがあります。
  • 女性が多い部署だから、和やかな雰囲気で良いよね。
    ⇒性別で職場の雰囲気を一般化する偏見で、性別と職場環境を結びつけるステレオタイプです。
  • 彼は海外経験があるから、プレゼンがうまいのも納得だ。
    ⇒特定の経験が特定のスキルに直結するという前提で、個人の努力や才能を過小評価するバイアスです。
  • 彼女はポジティブ思考だから、困難な状況でも心配いらないね。
    ⇒ポジティブな特性を褒める一方で、その人が抱える不安や課題に目を向けていないバイアスです。

まさかこれも? という例もあったのではないでしょうか。表面上はポジティブな意図や客観的な感想に見えても、アンコンシャス・バイアスが潜んでいる場合があります。

アンコンシャス・バイアスは、意図せず相手を傷つけたり、不快な思いをさせたりする原因となります。組織内の人材が多様化している現代において、アンコンシャス・バイアスへの理解とそれに対する対応は極めて重要です。自身の思い込みを自覚し、それらを排除することが求められます。

良好な人間関係を育むためのコミュニケーション変革

ハラスメント防止の意識が高まる一方で、適切なコミュニケーションに悩むケースも少なくありません。ハラスメントを過度に恐れるあまり、部下への指導を避けたり、必要以上に距離を取ったりする「過大すぎ」た対応が生じることもあります。結果的にコミュニケーション量が減少し、部下の成長が停滞する問題も起こりえます。

影響力を理解し「言葉を選ぶ」重要性

特に管理職の不用意な発言は、組織や個人に多大な損害を与えます。現代においては「知らなかった」や「うっかり」では済まされません。発言する前に、ジェンダー、国籍、障がい、容姿など、あらゆる差別につながる可能性がないか確認すべきです。

ユーモアのつもりの発言や、配慮したつもりの言葉が、かえって相手を不快にさせることもあります。自身の常識が世間の常識ではないことを認識し、あらゆる人の視点に立って一歩立ち止まって考えることが求められます。

心理的安全性を高める対話の土台づくり

ハラスメントのない職場環境は、「心理的安全性」が高い職場であると言えます。心理的安全性とは、組織内で気兼ねなく発言でき、自然体でいられる環境を指します。これが確保されることで、チームは活発な議論を通じて成果を高められます。

部下との信頼関係を築くことは、健全なコミュニケーションの土台です。部下の成長を促し、組織として成果を上げるためには、単に優しいだけでなく、適切な采配と指導が不可欠です。相手を尊重しつつ、伝えたいことを明確に伝える「アサーティブコミュニケーション」も有効な手法です。

組織を強くするハラスメントリスクの可視化と継続的な学び

組織に潜在するハラスメントリスクは、目に見えにくいものです。問題が表面化する前に、現状を正確に把握し、対応することが重要になります。

潜在リスクを明確にする「アセスメント」の価値

ハラスメントリスクアセスメントは、組織に内包するハラスメントリスクを可視化する有効な手段です。従業員の意識や行動の有無、ハラスメントに関する知識を匿名で調査することで、潜在的な問題や組織特有の要因を数値として明確に把握できます。これにより、漠然とした不安が具体的な課題へと変わります。

数値化された課題に基づいて啓蒙活動や教育を強化することで、自組織の現状に合わせた効果的な対策を立てられます。既存の防止措置も、より実践的で堅牢なものに強化できるというメリットがあります。

変化に対応する知識のアップデートと組織の自浄作用

ハラスメントの種類は多様化しており、問題が発覚した際に、加害者側にその意識が薄いことも少なくありません。これは、当事者が過ごしてきた時代や環境が影響しているためです。組織全体での継続的な知識や認識のアップデートが不可欠となります。

定期的なアセスメントを受検すること自体も、個人の知識・認識をアップデートする効果が期待できます。組織が自ら問題を発見し、解決する「自浄作用」を高めることが、ハラスメントのリスク低減と組織成果の向上を両立させる鍵となるのです。

アンコンシャス・バイアス研修

コラムではアンコンシャス・バイアスについて悪い事のように書いてきましたが、誰もがアンコンシャス・バイアスをもっており、それ自体は決して悪いことではありません。自身の経験や知識をもとに仮説をたて、すばやい行動を起こすことは合理的なものです。

しかし、アンコンシャス・バイアスは何気ない言動に現れるため、ともすると周囲の関係者が自身の意見を伝えづらくなり、職場環境を悪化させてしまう可能性があります。アンコンシャス・バイアスを自覚することは、より働きやすい職場の実現へとつながります。

ハラスメントのない職場は、心理的安全性が高く、最大限の成果を発揮できる組織です。これは一時的な取り組みではなく、継続的な改善が求められます。

研修のポイント

  • 自身や周りの方の「アンコンシャス・バイアス」に気づく
  • 真の「ダイバーシティ・インクルージョン」を実現する
  • 新たな視点でイノベーションを生み、よりよい職場環境を実現する

>アンコンシャス・バイアス研修まとめはこちら

セットでおすすめの研修・サービス

ハラスメントリスクアセスメント

ハラスメントリスクアセスメント

本アセスメントは、完全匿名化できるシステムを用いて従業員の意識や、間接的な行動の有無・知識も含めたハラスメントリスク度・組織の状態・特有の要因や背景を見える化するサービスです。

40の問いかけで、組織に内包するハラスメントリスクと要因・背景を可視化します。

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【全力解説】現代管理職のモノの言い方研修~ハラスメントリスクを低減する

管理職の方は責任ある立場であり、自分の発言の影響度が高いことを理解していただきつつ、不用意な発言をしないために具体的にどのようなことを意識すべきか学んでいただきます。

個々人が、自分の発言を振り返り、今の時代にふさわしくないモノの伝え方になっていないか、改めて見直す研修です。

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部下とのコミュニケーション実践研修~心理的安全性の高い職場を作る

心理的安全性が担保された職場では、一人ひとりが主体的に行動し、成果を上げることができます。

言いたいことを伝えるためのアサーティブコミュニケーション、本音で話せる環境を作るための1対1面談の活用方法を実際によくあるケースをもとに実践的に学びます。

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リーダーのためのアサーティブコミュニケーション研修

リーダーの皆様には、相手を尊重しながらも、言いにくいことや言わなくてはならないことを伝える場面が多くあります。

様々な関係者に対して、よい関係を保ちながら主張をするためのアサーティブなコミュニケーションスキルを学ぶ研修です。

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