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社員教育が「福利厚生化」している組織で起こる3つの変化~人材育成を停滞させないために人事が持つべき視点

人材育成は大切だと分かっている。だから研修コンテンツも用意し、学べる環境も整えている。それでも、忙しさに押されて受講は後回しになり、未受講者がいても業務は何とか回ってしまう。

結果として、教育はあるが、育成の手応えは感じられない。多くの組織で見られる光景です。

教育には福利厚生としての側面があります。社員が自ら学べる機会を提供すること自体は、否定されるものではありません。しかし、学ぶかどうかが完全に個人任せになり、学ばなくても評価や業務に影響がない状態が続くと、教育は単なる福利厚生へと変わっていきます。その変化は急激ではなく、ゆっくりと進行するため、問題として認識されにくい点が特徴です。

教育が福利厚生化した組織では、業務は回っているにもかかわらず、育成は進まなくなります。本記事では、そうした組織に静かに起きている3つの変化を整理し、なぜ人材育成が停滞するのかを解説します。

変化1 教育が業務の前提から外れ、学びが使われなくなる

教育が福利厚生化した組織では、学びが業務の前提として扱われなくなります。以下の3つの現象が同時に進行します。

1.学習が業務の前提から外れていく

業務が回っている限り、教育は緊急性の低いものとして扱われます。学ぶことは重要だと理解されていても、やらなくても困らない以上、日常業務の中で優先順位は上がりません。こうして教育は、あるが必須ではないものとして、静かに業務の前提から外れていきます

2.業務は成立してしまうため、学びが使われなくなる

教育が福利厚生化した組織では、業務そのものは教育を受けていなくても回るように設計されています。日々の仕事はOJTや引き継ぎによって進められ、教育を受けていないことが、直ちに業務上の支障になるわけではありません。

そのため、教育で得られるはずだった考え方や視点は、業務の中で使われる前提になりません。学びはあっても、それを前提に仕事が設計されていないため、教育は業務と切り離された存在になってしまいます。

3.教育の価値が「余裕があるときのもの」になる

業務が成立している以上、教育は緊急性の低いものとして扱われます。学ぶこと自体は重要だと理解されていても、やらなくても仕事は進むため、日常業務の中で優先順位は自然と下がっていきます。

こうして教育は、使われないまま残り、余裕がある人だけが取り組むものとして扱われます。結果として、組織運営の前提から静かに外れていきます

変化2 判断と説明が管理職に集中し続ける

教育が福利厚生化すると、全員が同じ知識を持っている前提を置けなくなります。ここでは、その結果として管理職に判断と説明が集中する構造を整理します。

共通理解を前提にできない組織構造

教育が任意参加にとどまる組織では、全員が同じ知識や考え方を身につけている前提を置くことができません。そのため、業務の背景や判断基準といった共通理解を、教育として体系的に伝えることが難しくなります。

現場では手順やルールは共有されていても、その理由や考え方までは十分に浸透しません。部下は仕事を進めることはできても、自信を持って判断できず、最終判断を管理職に委ねる場面が増えていきます

判断と説明が管理職に集中する

この結果、管理職は業務を肩代わりしているわけではないにもかかわらず、判断や説明、確認を繰り返す役割を担うことになります。これは個々の能力の問題ではなく、教育が組織の共通言語として機能していないことによって生じる構造的な負荷です。

変化3 成果が個人にとどまり、組織に蓄積されなくなる

教育が業務と切り離されると、成果が個人にとどまり、組織に蓄積されにくくなります。

成功が個人の経験で終わる

教育が福利厚生にとどまる組織では、成果につながる考え方や工夫が、全員に共有すべき知識として整理されません。良い成果が出た場合でも、それは個人の経験や能力として扱われ、教育内容として体系化されることはありません

再現性が失われ、育成が偶然に左右される

成果が教育として蓄積されないため、人が変わると結果も変わります。育成は上司や本人の力量に依存し、成功を意図的に再現することができません。この状態は、組織の成長を不安定にするリスクでもあります。

なぜ教育が単なる福利厚生になると問題なのか

教育が福利厚生にとどまる最大の問題は、成果責任だけではありません。実施できる教育の中身そのものが限定されていく点にあります。

教育が任意参加となり、業務と切り離されると、独自の教育を設計し、確実に届けるための基盤がありません。その結果、実施しやすい既製の教育や、なあなあで定められた内容だけが繰り返されます。本来、経営陣や人事、現場の教育担当者が「今、本当に学ばさせたい」と考えているテーマは、実現されにくくなります。

こうして教育は、組織の意思を反映する手段ではなくなり、個人の自己啓発に近い位置づけへと後退します。教育を行っているにもかかわらず、育成の手応えが失われていくのはこの構造が原因です。

教育を福利厚生で終わらせないために人事が持つべき視点

教育を福利厚生で終わらせないために、最初に必要なのは新しい施策ではありません。教育をどう位置づけるかという判断基準を、人事・教育担当者自身が明確に持つことです。

まず考えるべきは、教育を個人の自己啓発として扱うのか、それとも業務を成立させる前提条件として扱うのかという点です。福利厚生としての教育は前者の発想に立っています。一方で、人材育成として機能する教育は後者の発想に立っています。

次に、人事として向き合うべきは、誰が学んでいる前提で業務を設計するのかという問いです。教育が任意参加のままであれば、現場は学んでいない前提で業務を回さざるを得ません。逆に、特定の教育を受けていることを前提に業務や役割を設計できれば、教育は「組織の共通基盤」として機能し始めます

さらに重要なのは、経営陣や現場が本当に実施したい教育を、現実に実行できる状態をつくることです。人事・教育担当者に求められるのは、誰に、何を、どこまで学ばせるのかを明確にし、それを確実に届け、把握できる状態を設計することです。

インソースの教育管理システムが支援できること

当社の教育管理システムLeaf Lightning(リーフ ライトニング)は、教育を単なる福利厚生で終わらせず、組織の意思を反映した人材育成を実行するための基盤として設計されています。

経営陣や人事、現場の教育担当者が本当に実施したい教育を、自社の状況に合わせて設計し、確実に届けることが可能です。実施できる教育に内容を合わせるのではなく、実施したい教育を実現するための環境を整えます。

また、上司部下機能により、学習を個人任せにしません。上司が部下の受講状況や進捗を把握できることで、教育は日常のマネジメントの一部として機能します。さらに、受講履歴や進捗を一元管理することで、教育を配慮ではなく、成果を求める投資として位置づけ直すことができます

教育を実施しているにもかかわらず、育成の手応えが得られていない。その背景にある構造を見直したいとお考えの方は、ぜひインソースにご相談ください。

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