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【業界別7事例】メンタルヘルス不調の例から考える「人が健康的に働ける職場づくり」の3ステップ

人材不足が深刻化する中、「人が健康的に働ける職場づくり」は、すべての業界に共通する経営課題となっています。その背景には、業務負荷や人間関係、働き方の変化などに起因するメンタルヘルス不調の増加があります。

こうした不調は、個人の資質や努力の問題として片づけられるものではありません。多くの場合、業界特有の業務構造や職場環境そのものがストレス要因となっており、組織としての対策が不可欠です。ストレスチェックはその要因を見つけ出し、従業員が長く元気に働ける職場づくりのヒントを得られる有力なツールです。

本記事では、サービス業界、IT業界、運輸・倉庫業界、流通・小売業界、介護・福祉業界、不動産業界、人材・教育サービス・BPO業界の7つの業界を例に、起きやすいメンタルヘルス不調の例を整理しながら、ストレスチェックを活用した職場改善のステップを具体的に解説します。

業界ごとに異なる「メンタルヘルス不調の背景」

メンタルヘルス不調の現れ方は似ていても、その原因や構造は業界ごとに大きく異なります。まずは、各業界で起きやすい不調の背景を整理します。

(1)サービス業界|感情労働と人員不足が慢性化

接客中心業務では、感情コントロールを継続的に求められます。慢性的な人員不足が重なると、若手へ負荷集中が起きやすくなります。

サービス業界で起きやすいメンタルヘルス不調の例

  • 情緒的消耗:常に笑顔での接客を求められる、感情を抑圧し続けることにより「情緒的消耗」がおきる
  • カスタマーハラスメントによる自己肯定感低下:カスタマーハラスメントやクレームなど、理不尽な言葉や態度にさらされることで自尊感情の低下や心身の不調につながる
  • シフト不公平感:店長や同僚とのコミュニケーション不全、シフトの不公平感などから人間関係のストレスが溜まる
  • 生活リズム乱れ:不規則な勤務体系により生活リズムや自律神経が乱れ、体調のコントロールが難しくなる

(2)IT業界|裁量過多と孤立環境が併存

短納期開発や仕様変更が常態化し、責任範囲が曖昧になりやすい構造があります。リモート勤務拡大により孤立も進行します。

IT業界で起きやすいメンタルヘルス不調の例

  • 慢性的緊張状態:短納期・仕様変更・トラブル対応など慢性的な緊張状態が続き、心身に不調をきたす
  • 相談機会不足:リモートワークなどにより相談や雑談の機会が減り、孤立感が高まったり、心理的なサポートが得られにくくなったりする
  • 責任所在不明確:プロジェクトごとにチームが固定され、人間関係の軋轢があってもメンバーを替えにくく、ストレスが長期化しやすい
  • 技術変化焦燥感:技術変化が早く、常に勉強し続けしなくてはという焦りや、同僚と比較して自分が無力に思えてくるなど、メンタルのバランスを崩してしまう

(3)運輸・倉庫業界|長時間拘束と単独作業

長時間運転や繁忙期集中など、業務特性自体が負荷要因です。単独業務時間が長く、相談経路が限られます。

運輸・倉庫業界で起きやすいメンタルヘルス不調の例

  • 慢性疲労:長時間運転や過密スケジュールによる疲労の蓄積、慢性的な身体疲労が心理的なストレスに結び付く
  • 孤立感:運転や倉庫作業では個人作業が多く、相談機会が少ないことから、孤立感やコミュニケーション不足によるメンタル不調が起きる
  • 納期プレッシャー:納期や配送品質についての顧客からのプレッシャーやクレームにさらされることで、メンタルのバランスを崩してしまう
  • 過労状態:人手不足や繁忙期の負荷集中から、慢性的な過労状態が発生し心身に不調をきたす

(4)流通・小売業界|繁閑差と多様雇用管理負担

流通・小売業界では、接客や販売、レジ業務、在庫管理、物流対応など、業務が多岐にわたる上、繁忙期やセール時期には過重労働や長時間勤務が発生しやすい環境です。

流通・小売業界で起きやすいメンタルヘルス不調の例

  • 残業集中:セールや年末年始など、特定期間の残業増加が慢性的な疲労につながる
  • 人間関係摩耗:アルバイト・パートスタッフが多い現場では、管理者の調整業務やコミュニケーション의負荷が集中し、人間関係やシフト調整の難しさが心理的な負担となる
  • ノルマ圧力:店舗ごとの売上ノルマや達成目標が心理的圧力となり、メンタルヘルス不調に繋がる
  • 相談機会不足:店舗スタッフや物流担当者など、個人作業が中心の職場では相談しづらい環境があり、メンタル不調の兆しに気づきにくい

(5)介護・福祉業界|身体負荷と人手不足の連鎖

介護・福祉業界では、身体的負荷の高い業務や利用者との密接な関わり、夜勤や長時間勤務など、職場環境自体がストレスを高めやすい環境です。

介護・福祉業界で起きやすいメンタルヘルス不調の例

  • 腰痛慢性化:入浴・移乗・排泄介助などの力仕事に加え、夜勤や長時間勤務が続き、疲労の蓄積、慢性的な身体疲労が心理的なストレスに結び付く
  • 感情労働疲労:利用者やその家族の対応が感情労働になるため、心理的な負担となる
  • 業務偏在:人材確保が難しく、一部の人へ業務過多な状況が続き、メンタルヘルス面のケアが追い付かない
  • 相談不足:小規模施設や在宅介護では、同僚や上司と相談する機会が限られる

(6)不動産業界|成果主義と高額商材責任

不動産業界は、景気や市場動向の影響を受けやすく、営業ノルマや顧客対応のプレッシャーが大きい業界です。

不動産業界で起きやすいメンタルヘルス不調の例

  • 過度な成果意識:厳しい売上ノルマ、成果主義による比較意識がプレッシャーとなる
  • クレーム負担:高額商品を扱うため、クレームやトラブル時の責任が重い
  • 休日不足:土日出勤や夜間対応が常態化し、休息が取りづらい
  • 孤立傾向:個人業績評価が中心で、悩みを抱え込みやすい

(7)人材・教育サービス・BPO業界|対人負荷と締切集中

人材・教育サービス・BPO業界は、「人」を扱うビジネスであるがゆえに、従業員の心理的負担が大きい業界です。

人材・教育サービス・BPO業界で起きやすいメンタルヘルス不調の例

  • 感情労働疲労:感情労働によるストレス
  • 対応負担増大:クライクライアント要望への対応プレッシャー
  • 育成負担:新人教育が常態化し、育成担当が摩耗する
  • 達成感欠如:成果が見えづらく、達成感を得にくい

これらの不調は、本人の努力だけでは解決が難しく、組織としてのサポート体制が不可欠です。その第一歩として、「ストレスチェックを活用した職場環境の改善」をお勧めします。

2.ストレスチェックを「対策の出発点」に変えるための3ステップ

ストレスチェックを形式的に実施するだけで終わりにしてしまっては、ストレスの改善にはつながりません。何が課題なのか、どのような形であれば継続的に改善できるかを考え、職場全体で「心身の健康を守る文化」を醸成することが、長期的な組織力向上につながります。分析、実行、検証まで一連で行う必要があります。

STEP1:結果を職種・勤務形態別に分析する

同じ会社や事業所でも職種や勤務形態によってストレス要因が異なります。分析の際は、部署別などに加えて、職種別・時間帯別・雇用形態別の比較を行うことで、より、具体的な改善のヒントが見えてきます。

参考:集団分析とは?どんなことが分かるのか

STEP2.具体的な改善策を実施する

「集団分析の結果」という客観的な数値を踏まえて、現場の声を聴きながら、「続けられる改善」を実施していきます。業界別に、集団分析結果から見える具体例と見直しのポイントを紹介します。

(1)サービス業界の場合

例1:「20代」の「身体的な負担」のストレス度が高い場合

つい「若いから」と力仕事を任せる風潮になっている、他の年代の従業員よりも立ち仕事や歩き回る業務の量が多くなりがち、など思い当たる点を探し、業務内容の再分配を検討する必要があります。

例2:「エリアマネージャー」の「上司からの支援度」のストレス度が高い場合

上司に相談しにくい、困ったときに支援が得られないなどから、ストレス要因となっている可能性があります。報・連・相のスキル向上、上司側の傾聴力向上など、双方のコミュニケーションが円滑に進むような教育や体制の見直しが必要です。

(2)IT業界の場合

例1:「開発職」の「仕事の裁量度」のストレス度が高い場合

上司や顧客の指示が細かすぎる、メンバーの意見を受け入れてもらえないなどの理由で「裁量が低すぎる」と感じられている可能性もあれば、 逆に現場メンバーに丸投げされていて、責任の所在があいまいな中で業務をせざるを得ないなど、「裁量が高すぎる」という可能性もありえます。

現在の指示内容や指示系統を見直し、「適切な裁量」を目指す必要があります。

例2:「チームリーダー」の「上司からの支援度」がストレス度が高い場合

上司に現場の負担や課題を報告しても解決されない、結果を求められるばかりで相談に乗ってもらえないなど、ストレス要因となっている可能性があります。報・連・相のスキル向上、上司側の傾聴力、課題解決力の向上など、双方のコミュニケーションが円滑に進むような教育や体制の見直しが必要です。

(3)運輸・倉庫業界の場合

例1:「ドライバー職」の「身体적負担」のストレス度が高い場合

業務の特性上、長時間同じ姿勢が続くこと、人手不足による業務過多、深夜や早朝勤務などによる生活リズムの乱れなどが身体的な負担となりがちです。

福利厚生の一つとしてマッサージや整体のサービスを導入する、運送スケジュールや距離に応じたシフトの見直し、点呼や面談時に「身体の状態確認」をルーティン化するなどで、不調の早期対策につながります。

例2:「管理職」の「上司からの支援度」のストレス度が高い場合

上司に現場の負担や課題を報告しても解決されない、相談しにくい雰囲気があるなどで、ストレス要因となっている可能性があります。報・連・相のスキル向上、上司側の傾聴力、課題解決力の向上など、双方のコミュニケーションが円滑に進むような教育や体制の見直しが必要です。

(4)流通・小売業界の場合

例1:「バックヤード部門」の「仕事のコントロール度」のストレス度が高い場合

セールや年末年始など、ある程度年間の繁閑が見えていたとしても、突発的な在庫補充が必要になったり、現場の発注ミスなどが大きな補填作業になったりと「自分の裁量やペースで仕事ができない」ことによる心的ストレスが高い可能性があります。

突発的な業務負荷をチームで分担する、通常業務の流れを整理しておいて、急な業務にも対応できる余力を備えておくなどの対応が不可欠です。

例2:「店長職」の「仕事の負担(量)」のストレス度が高い場合

十分な教育指導や経験値がないまま店長職となってしまい、管理業務と現場実務の両方をこなす能力が追い付かず多岐にわたる業務をさばけない、人員不足から本来アルバイト等に任せてよい仕事も自分で対応せざるをえないといったケース があります。

スタッフ指導の方法や部下コミュニケーション、業務マニュアル整理やマネジメントスキルなど、研修や教育で改善できる可能性があります。

(5)介護・福祉業界の場合

例1:「介護職員」の「身体的負担」のストレス度が高い場合

業務の特性上、中腰姿勢など体の一部分に負担がかかる、夜勤など不規則なシフトにより疲労が取れないなど、さまざまな理由からストレス度が高くなりがちです。人手不足などから、本来複数名で行うべき作業を1名でこなしているなどあれば、シフトや業務タイミングを調整し、複数名対応を徹底して負担の分散を目指しましょう。

福利厚生の一つとして整体やマッサージを導入したり、コルセットなど腰痛対策グッズの費用補助を行ったりする企業も見られます。

例2:「パート・アルバイト」の「上司からの支援度」のストレス度が高い場合

上司に現場の負担や課題を報告しても解決されない、シフト勤務制などでそもそも相談できるタイミングがないなどで、ストレス要因となっている可能性があります。報・連・相のスキル向上、上司側の傾聴力、1対1面談の機会を設けるなど、双方のコミュニケーションが円滑に進むような教育や体制の見直しが必要です。

(6)不動産業界の場合

例1:「営業職」の「同僚の支援度」のストレス度が高い場合

ノルマや成績が個人単位のため、チームや店舗単位での「助け合う」風土がない、ちょっとした雑談や相談もしにくい雰囲気があるなどの状況がありえます。

チーム単位の目標を掲げて協調意識を高める、朝礼や定期ミーティング時に、あえて雑談の時間を取るなどして、心理的な安全性の高い職場づくりを目指すとよいかもしれません。

例2:「エリアマネージャー」の「仕事の負担(量)」のストレス度が高い場合

各店舗の売上管理や人材育成の両方を担う立ち位置で、本部と現場の板挟みにもなりやすく、多岐にわたる業務量に圧迫されるなどのケースがありえます。

部下育成や目標管理など研修や教育でマネジメントスキルを磨き、業務の整理、調整力を高めることが効果的です。

(7)人材・教育サービス・BPO業界の場合

例1:「講師職」の「心理的な負担度」のストレス度が高い場合

生徒や保護者対応など、感情労働が負担となるほか、受験シーズンなどは合格率などがプレッシャーとなりがちです。また共感性や責任感が高ければ高いほど、精神的な疲労が積み重なってしまいます。

適度なリフレッシュや気持ちの切り替えなど、セルフケアについての知識、スキルを得ることが効果的なケースがあります。

例2:「BPO部門」の「仕事の負担(量)」のストレス度が高い場合

案件ごと、顧客ごとの締切が異なり、スピード感と正確性の両立が求められる現場において、業務内容の整理整頓、スケジュール調整は必須です。

管理職陣が業務プロセスを標準化し、属人化を防ぐマニュアル整理などを行うことで現場の負担が軽減されることがあります。

STEP3:翌年度比較で効果検証する

改善施策を行ったら、次年度のストレスチェックで変化を確認し、効果を数値で捉えましょう。また、改善が進んだ店舗の取り組みを全社で共有すると、他の現場にも良い波及効果が生まれます。

小さな成功事例を積み上げることが、職場全体のストレス耐性を高める最も確実な方法です。

まとめ:ストレスチェックを活用し「不調を生まない職場」をつくる

このように、業界は異なっても有効な進め方には共通点があります。

  • ストレスチェックを「評価」ではなく「改善のためのデータ」と捉える
  • 職種・勤務形態別に分析し、構造的な課題を見える化する
  • 数値と現場の声を組み合わせ、「続けられる改善」を行う
  • 改善結果を共有し、成功事例を積み上げる

このサイクルを回し続けることで、「不調が起きてから対応する職場」から「不調を生まない職場」へと変えていくことができます。

人が辞めない職場とは、特別な制度がある職場ではありません。日々の業務の中で生じるストレスに気づき、データをもとに向き合い、改善を積み重ねていく職場です。ストレスチェックは、そのための「最も現実的で、現場に根差したツール」です。業界特性を踏まえた活用によって、長く、健康的に働ける職場づくりを実現していきましょう。

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メンタルヘルス研修~ラインケア

本研修では、メンタルヘルスに対する知識を身につけ、自分だけではなく、部下への対応を理解し、心身良好な職場を築いていくことを目標とします。

また、厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」にて、管理監督者への教育研修・情報提供が望ましいとされている11項目をわかりやすく学べる内容となっております。

<研修のポイント>

  • ストレスに関する基本的な知識~現状・要因・症状を知る
  • セルフケア~ご自身の思考パターンを知り、ストレスへの対処方法を学ぶ
  • ラインケア~職場メンバーの現状を把握し、変化に気付けるようにする
  • 休業・休職したメンバーの復帰支援の流れ・フローを知る
  • 職場でのコミュニケーション~メンタル不調の早期発見・防止に必要なコミュニケーションスキルを再確認する

<ワークのポイント>

  • ご自身の部下や後輩に関する心配事について考えていただきます。
  • ご自身はどんな時にストレスを感じるか考えていただきます。
  • 部署メンバーを洗い出し、それぞれの性格や働き方など振り返ります。
  • 洗い出したメンバーについて、現在の業務量や職場環境を整理します。
  • 職場のメンバーが気持ちよく働けるために工夫していることを共有します。
  • ケーススタディをもとに想定された人物に対し、どのような働きかけをするか考えてます。
  • 今日から職場で具体的に取り組むべきことについて、具体的に考えます。

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