2025年9月24日

AI関連のM&Aが増加傾向に 今後さらに加速か

AI(人工知能)関連のM&Aが増加傾向にある。

M&A Onlineが構築したM&Aデータベース(適時開示ベース)によると、2025年1月~8月にAI関連の主なM&Aは13件に達した。

前年の2024年は18件で、同期間では9件だったため、前年を上回るペースで進んでおり、2年前の2023年の11件、3年前の2022年の6件も上回っており、右肩上がりの状況にある。

ここ10年間の推移を見ても2016年、2017年がゼロ、2018年から2021年は1~3件だったため、2022年以降に増加局面に入ったことがうかがわれる。

AIを活用した新製品や新サービスを開発

2025年は、直近では8月15日に書籍の要約サービスを手がけるフライヤー<323A>が、未経験者が最短1カ月で副業、フリーランスデビューを目指せるAI養成講座「AIStep」の開発・提供を手がけるAIStepを子会社化すると発表した案件がある。

フライヤーはAIStepの子会社化によって、生成AI領域に本格参入し、個人・法人向けの研修事業を拡大するのが狙いだ。

前日の8月14日にも、経営・ITコンサルティング大手のアクセンチュアが、AI教育事業を手がけるアイデミー<5577>をTOB(株式公開買い付け)で傘下に収めると発表した。

アクセンチュアはアイデミーのAI教育プラットフォームを活用し、企業向けのAI導入支援や人材育成サービスを強化するとともに、AI教育市場での競争力向上を狙う。

「資格の学校」を運営するTAC<4319>が、教育コンテンツのデジタル化やAIの活用などを推進するために、株式を非公開化して経営判断の迅速化と施策の実行力強化を進めるといった案件もあった。

同社は従来の対面型授業からオンライン講義への転換のほか、低価格の新興事業者の台頭や、少子高齢化による国内市場の縮小といった事業環境の悪化に直面しており、早急にデジタル化やAI活用など進める必要があると判断した。

教育分野のM&Aは、AIが大きな要因となっているようだ。

AI技術を持つ企業がさらなる発展を狙いにM&Aに踏み切るケースもある。

金融機関向けシステム開発などを手がけるCAICA DIGITAL<2315>は、通信機器開発・販売のネクスを子会社化すると発表した。

CAICA DIGITALが持つブロックチェーンやAI、セキュリティー関連技術と、ネクスのIoT(モノのインターネット)機器や通信インフラの技術を組み合わせて、新たなサービスの開発に取り組む。

AI技術を持つ企業がさらなる事業拡大を目指してM&Aに踏み切ったのは13件中5件で、残りはAI技術を活用して、既存事業で新製品や新サービスの開発を進める案件だった。



2025年のAI関連の主なM&A

経産省には危機感も

経済産業省は、2024年10月にまとめた「デジタル社会の実現に向けて」の資料で、生成AIについて「革新的な製品・サービスを創出し、経済成長を実現するとともに、人口減少による構造的な人手不足やGX(グリーントランスフォーメーション=温室効果ガスを削減し、経済社会システム全体を変革する取り組み)などの社会課題を解決する技術」と位置づけ「この技術の獲得に向けて各国がしのぎを削っている」と分析する。

これを踏まえ「我が国企業が競争力を失わず、成長し続けるためには、優れたAIやそれを動かす最先端の半導体を自社の製品・サービスなどに早期に取り込んでいくことが重要」との認識を示した。

さらに「そのためには、国内に最先端のAI・半導体技術や産業、人材の基盤があることが必要。さもなければ、我が国産業の国際競争力の強化に必要なコア技術基盤の海外依存度が高まるうえ、貿易赤字も一層拡大するおそれがある」として危機感をあらわにしている。

一方、矢野経済研究所が2025年4月に発表した「国内生成AIの利用実態に関する法人アンケート調査」によると、生成AIの導入が加速しており、2023年調査との比較では1年で15.9ポイントアップの25.8%に達した。

同社では「本調査から生成AIは企業で浸透し始めている技術であることがうかがえる」としている。

こうした調査を踏まえれば、今後AIに関連する技術や人材獲得を目的にしたM&Aが増加することが予想される。

競争力強化や生産性向上を実現

実際、AI関連企業にM&Aを積極化する動きが見られる。

アクセンチュアの傘下に入ったアイデミーは、AI Related App(生成AIや機械学習などのAI技術を組み込んだ業務アプリケーション)領域で、M&Aによって開発力を強化する方針を打ち出した。

すでにファクトリアル、まぼろし、トゥーアールの3社のM&Aを実施しており、今後も業界ごとの業務アプリケーション展開を目指す中で、M&Aを模索する。

AIを活用した需要予測などを手がけているJDSC<4418>は、オーガニックな事業成長(内部の経営資源を活用した成長)に加えて、M&Aなどによる非連続な成長機会を積極的に探索する方針だ。

すでに2021年の上場後900を超えるM&A案件を検討し、ダイレクトメール制作・発送代行のメールカスタマーセンターと、投資銀行事業を手がけるファイナンス・プロデュースの2社を買収。

今後は、システム開発やコンサルティングなどの労働集約ビジネス領域をはじめ、AIで競争力を高めることができる領域や、AIで生産性向上や価値創出が可能な領域をM&Aの重点検討領域と位置付け、探索を進める。

AIを活用したコンサルタント事業を展開するグロービング<277A>も、非連続成長を目指してコンサルティング領域や、AI事業領域でM&Aを模索するとしている。

2025年にAI関連M&Aが前年実績を超える可能性は高そうだ。

配信元:文:M&A Online


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