2025年10月10日

SIer(システムインテグレーター)に広がるM&Aの波 事業拡大や人材確保が狙い

情報システムなどを企画から運用、保守までを一括して請け負う事業者であるSIer(システムインテグレーター)にM&Aの動きが広がっている。

日本の多くの企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)化に取り組んでおり、SIerが手がける情報システムの開発や運用などに対する需要は拡大傾向にある。

その一方で、DXを推進するための人材の不足が表面化していることから、M&Aを活用して、事業拡大や人材確保を進めようというのが狙いだ。

DXが企業に浸透

デジタル基盤の提供やデジタル⼈材の育成などを進める独⽴⾏政法⼈の情報処理推進機構が、2025年6月にまとめた「DX動向2025」によると、「DXに取組んでいる企業の割合は77.8%(回答企業1535社)となり、2022年の69.3%(同543社)と比較すると、着実にDXが企業に浸透しつつある」という。

またSIerなどの情報サービス事業者の団体である情報サービス産業協会が、同協会の会員を対象に2025年6月に行った調査では、雇用判断DI値(不足すると答えた割合から過剰と答えた割合を引いた値)は63.6ポイントとなり、多くの企業が従業員の不足感を持っていることが分かる。

こうした状況の中、中堅SIerであるIDホールディングス<4709>は、人材、技術・ライセンス、顧客などの拡充を目的としたM&Aを目指す計画だ。

人材については、上流工程の人材を確保する方針で、コンサルタントやプロジェクトマネージャーなどを対象とし、技術・ライセンスでは、SaaS(インターネット経由でソフトウエアを利用できるサービス)や、ネットワーク関連ソリューション、サイバーセキュリティなどの領域で対象企業を探索する。

さらに顧客に関しては、既存業界の新規顧客と、新規業界の顧客の獲得を狙いに候補を探索する計画で、こうしたM&Aに今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)に50億円を投じる。

同社では2028年3月期に、2025年3月期比21.3%増の440億円の売り上げを目指す計画だが、この目標にはM&Aによる増加は含んでいないため、M&Aが実現すればその分が上積みされることになる。

直近のM&Aでは2020年に3件を適時開示しており、同年11月に発表したソフトウエア開発のウィズ・ホールディングスの子会社化以降はM&Aから遠ざかっている。

人月ビジネスからの脱却も

中堅SIerのコアコンセプト・テクノロジー<4371>は、M&AでDX関連の製品やサービスの拡充と、人的資源の拡大に取り組む。

DX関連の製品やサービスの拡充については、DX支援に強みを持つIT企業を、人的資源の拡大については地方の中小IT企業を中心に、売上高10億円以上の企業を候補として探索する。

M&Aには今後3年間(2025年12月期~2027年12月期)に15億~35億円を投じる計画で、大型M&A実施の際には借入や社債の活用も検討するとしている。

2025年12月期は売上高218億円(前年度比13.7%増)を見込んでおり、その後は2027年12月期に向け年平均15%の成長を目指す。

直近では2024年に、物流・販売システムの開発を手がけるPro-X(大阪市)と、製造業向けソフトウエア開発や技術者派遣のデジタルデザインサービス(大阪市)、AI(人工知能)を活用したシステムの企画、設計、開発を手がけるPros Cons(東京都江東区)の3社を子会社化している。

東邦システムサイエンス<4333>では、M&Aを活用して事業規模の拡大を目指す。

同社は人月ビジネス(人数×月数によって料金を請求するビジネス)からの脱却を目標に掲げており、これまでもスマートフォンを活用した証券業務の運用ビジネスのサービス化や、災害時の安否確認サービスの構築などに取り組んできた。

今後もサブスクリプション型ビジネスのような新たなビジネスモデルの創出を進める中で、M&Aを検討する。

今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)にM&Aに50億円以上を投じ、2028年3月期にはM&Aによる増収分を含め、2025年3月期比72.9%増の300億円の売上高を目指す。

JFEシステムズ<4832>は、コンサルティング力の強化や新ビジネスモデルの構築などを目的としたM&Aを進める計画で、業務管理システムを手がける「ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)ソリューション」と、ITインフラの構築や運用などを行う「基盤サービス」でM&Aを活用する。

生産性向上や業務効率化で成果

情報処理推進機構の調査では、DX化による成果は「コスト(人件費・材料費など)削減」や「製品・サービスなど提供にかかる日数の削減」などの生産性向上や業務効率化に関わる内容が多いという。

今後も生産性向上や業務効率化などを目的にDX化に取り組む企業が増加することが予想されるため、継続してSIerによるM&Aは増えていくとみてよさそうだ。

配信元:文:M&A Online


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