2023年7月31日
米国で怒涛(どとう)の生成AI(人工知能)買収ラッシュが続いている。今後のITビジネスのみならず、製造業やサービス業など実業の世界を大きく変えると言われている生成AIだけに、小規模なスタートアップ企業のうちに「青田買い」で技術を囲い込もうというわけだ。問題はないのか?
最近では5月にSaaS型データウェアハウスの米Snowflakeが、サブスクリプション型検索エンジンの米Neevaを買収。6月にはブラウザ上で共同編集できるデザインプラットフォームを展開する米Figmaが生成AIを利用した対話型デザインツールを開発する米Diagramを、AIによる分析サービスを手がける米ThoughtSpotがビジネスインテリジェンス (BI) プラットフォームの米Mode Analyticsを、ビッグデータ向けのクラウド型統合データ分析プラットフォームを手がける米Databricksが、生成AIプラットフォームの大規模言語モデル(LLM)を開発する米MosaicMLを、多国籍大手情報サービス企業の米トムソン・ロイターが米AI法務データベーススタートアップのCasetextを、それぞれ買収した。
買収金額は1億5000万ドル(約210億円)から13億ドル(約1820億円)と、注目されている新技術にしては買収しやすいことも買収を後押ししている。生成AI最大手の米Open AIは推定企業価値が290億ドル(約4兆円)と破格だが、49%を出資する米マイクロソフトの系列企業だ。
こうした早い段階の買収の結果、生成AI開発企業の多くは大手企業の支配下にある。スタートアップ期に画期的な新技術が誕生するものだが、その期間が短ければイノベーションが起こりにくくなる可能性もある。人間に例えれば伸び盛りの青年期が短くなり、10代で壮年期に入るようなものだ。
米連邦取引委員会(FTC)技術局は、特定の企業や業グループが生成AIの構成要素を独占した場合、その支配力を用いて競争を抑制したり、歪めたりする可能性があると指摘している。当面、AIスタートアップの買収熱は冷めそうにないが、行き過ぎた囲い込みが生成AIを「殺す」リスクもあるのだ。
| 発表日 | 内容 | 買収額 (億ドル) |
買収額 (億円) |
| 5月24日 | SaaS型データウェアハウスを手掛ける米Snowflakeが、サブスクリプション型検索エンジンの米Neevaを買収 |
1.5 | 210 |
| 6月22日 | デザインプラットフォームを展開する米Figmaが、生成AIベースの対話型デザインツールを開発する米Diagramを買収 |
未公開 | 未公開 |
| 6月26日 | AIを活用した分析会社の米ThoughtSpotがビジネスインテリジェンス (BI) プラットフォームを手がける米Mode Analyticsを買収 |
2 | 280 |
| 6月26日 | クラウド型統合データ分析プラットフォームの米Databricksが、大規模言語モデル(LLM)を開発する米MosaicMLを買収 |
13 | 1820 |
| 6月26日 | 米Thomson Reutersが、AI法務データベースを手がける米Casetextを買収 |
6.5 | 910 |
配信元:M&A Online
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