2023年11月15日
歴代最多となる高校通算140本のホームランを放ったスラッガーとして進路が注目されていた花巻東高校の佐々木麟太郎選手が、日本でプロ志望届は出さずに米国の大学へ留学することが明らかになった。留学先は未定なので、学問の修得ではなく野球留学とみられる。日本球界を蹴って米メジャーへの最短ルートを選択したようだ。野球に限らず、「卒業したら海外で就職」が当たり前の時代が目前に迫っている。
佐々木選手はメジャー入団が幼い頃からの夢といい、9月中旬に渡米してメジャー球団の施設や、バンダービルド大学など野球の強豪大学を視察している。花巻東出身の大谷翔平選手や菊池雄星選手がメジャーで活躍しているが、大谷選手は5年間、菊池選手は9年間、日本球団に所属した後の移籍。佐々木選手が米国でプロ入団すれば、それだけ長くメジャーで活躍できる。
2022年の国内プロ野球選手の一軍選手(外国人選手を除く)は平均年俸4312万円、最低年俸1600万円だ。これに対してメジャー選手は平均年俸441万4184ドル(約6億5800万円)、最低年俸70万ドル(約1億円)と、円安もあって平均年俸では15倍以上の開きがある。
一般のサラリーマンに比べて働ける期間が短い野球選手だけに、年俸が段違いに高いメジャーへ1年でも早く入団したいのは当然だろう。しかもメジャーではプロとして尊重され練習やシーズンオフの調整は選手個人の裁量が大きいのに対して、日本では効果に科学的なエビデンスがない猛特訓を課す球団も少なくない。若い有望選手から「できれば日本の球団には所属したくない」と思われても仕方ない状況だ。
これは何もプロ野球だけの話ではない。一般企業への就職でも円安の影響で給与水準が日本企業よりもはるかに高く、長期の有給休暇が遠慮なく取れ、長時間残業も強いられない海外への人材流出が始まっている。
2023年3月に海外留学サービス会社のリアブロード(東京都渋谷区)が発表した同4月~6月に渡航予定の1008人を対象に実施した「2023年春のワーキングホリデー渡航者実態調査」によると、2022年1月以降にワーキングホリデービザで渡航する人が急増し、2023年4月までの1年間で3倍以上も増えていることが分かった。
渡航者の内訳で最も多かったのは社会人の45.7%で、かつては主流だった大学生・専門学生の35.5%を上回った。「国内で就職する前に学生らしい経験をしたい」のが目的だったワーキングホリデーだが、今や社会人が「外国で就職するために就労経験を積む」ための制度になりつつあるようだ。
外務省の「海外在留邦人数推計推移」(*)によると、海外在留邦人は2019(令和元)年に141万356人でピークを迎えた後に、新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の世界的なパンデミックにより3年連続で減少し、2022(令和4)年には130万8515人となった。しかし、このうち在留国で永住権を認められて、生活の拠点を海外に移した海外永住者は55万7034人と過去最高を記録している。

地域別では長期滞在者を含む全体では米国、中国、豪州の順だが、永住者では米国、欧州、豪州と日本よりも賃金水準が高く、労働環境や社会的多様性が良好な国に集中している。日本だと賃金はじめ雇用条件が劣悪な女性永住者の比率が約62%と高いのも象徴的だ。
かつて円高時代は定年退職を迎えた高齢者が、物価の安い国に移住していた。今となっては円建ての年金や金融資産を頼りに海外で余生を過ごすのは割高でリスクが高い。永住者の多くは現地で定職を得て永住権を認められたものとみられる。
今後、東京大学や京都大学、一橋大学、早稲田大学、慶應義塾大学といった名門大学の新卒者が海外へ渡航して外国企業へ入社する事態になれば、若手人材が一気に海外へ流れる動きが加速する可能性がある。深刻な人手不足が懸念される日本だが、人材獲得も「国際競争」となる時代が近づいている。
配信元:M&A Online
■関連記事一覧
更新
【人事評価制度への不満3】評価面談が苦手はただの言い訳。イケてない上司を脱却するマインドセットと準備
上司が評価面談から逃げようとしている様子は残念ながら部下にも伝わり、「自分は正当に見てもらえていない」「こんな人に評価されたくない」「こんな人を昇格させている組織に長く居てはいけない」とエンゲージメントを下げる要因になり得ます。
更新
【人事評価制度への不満2】通常業務ができないくらい面倒!真面目になんてやってられない
評価記録は何を使ってまわしていけばいいの?表計算ソフト、クラウド型評価システム、日報等のコメントフィードバックツール...それぞれを用いた場合のメリット・デメリットを解説します。
更新
「やる気が出ない」とはもう言わせない~部下のモチベーションを高める目標管理術
数値化した目標を部下が自分で立てられるように導きます。明日から使える目標管理スキルが身につきます。
更新
評価のブレを防ぎ信頼を築く!期末に押さえるべき人事評価6つのポイント
期末評価で陥りがちな心理的エラーを避け、公正で納得感のある評価を行うための6つのポイントと、評価の質を高める実践的な方法を解説します。
更新
評価の不満を解消する3つの解決策~人事評価制度の本当の役割は「人材育成」
人事評価に対する上司・部下からの不満には、主に3つの原因があります。これらを解消し、納得感のある公正な評価の仕方を学ぶ「評価者研修~公正な評価のポイントを学び、納得感のある評価を行う」を紹介します。
更新
360度評価
350度評価とは、アメリカにおいて能力開発のツールとして開発された考え方です。
更新
無理して働く疾病就業「プレゼンティーイズム」とは?〜疲弊する現場のケアで休職連鎖を防ぐ
職場内で相次ぐメンタルヘルス不調者の発症を防ぎ、人員不足や職場の士気低下を起こさないための人員管理術、職場環境の改善施策について解説していきます。
更新
KPIはノルマじゃない~KSFと組織目標から逆算する、KPI設計法
KPIとはあくまで「指標」であり、目標ではありません。本コラムでは、KPIの設定方法と、有効にするための改善サイクルの回し方を解説します。組織目標と連動したKPIを決め、必要に応じて見直しながら運用することが大切です。
更新
人材評価を語る
インソースでは「人材評価」について、適正な人事評価によって社員・職員の能力・資質を向上させることを目的にしている、と基本的に考えています。その「人材評価」の効果、特徴、内容等について、弊社代表・舟橋がインタビュー形式で語るページです。
■関連研修シリーズ
■関連商品・サービス一覧
更新
(半日研修)コンピテンシー基礎研修~成果につながる行動特性の理解と実践
更新
実践!評価者研修~目標設定・面談編(半日間)
更新
働く高齢者のための安全と健康管理
更新
喫煙防止講座~今吸っていないあなたにも
更新
メンタルヘルス(セルフケア)研修~自身のストレスへの対処法を学ぶ(冊子教材・テスト付き)
更新
レジリエンス研修~しなやかにストレスと向き合い、回復力を身につける(冊子教材・テスト付き)
更新
アクティブモチベーション講座~ポジティブな考え方で意欲をセルフコントロールする(スライド付き)
更新
評価者研修~下位評価の伝え方(半日間)
更新
コンピテンシー基礎研修~成果につながる行動特性の理解と実践(半日間)
下記情報を無料でGET!!
無料セミナー、新作研修、他社事例、公開講座割引、資料プレゼント、研修運営のコツ
※配信予定は、予告なく配信月や研修テーマを変更する場合がございます。ご了承ください。
配信をご希望の方は、個人情報保護の取り扱いをご覧ください。
無料セミナー、新作研修、他社事例、公開講座割引、資料プレゼント、研修運営のコツ

登録は左記QRコードから!
※配信予定は、予告なく配信月や研修テーマを変更する場合がございます。ご了承ください。
配信をご希望の方は、個人情報保護の取り扱いをご覧ください。
人事のお役立ちニュース