2025年7月25日
レアアース(重希土類)を巡るM&Aが活発化している。その背景には、いわゆる「トランプ関税」で中国がレアアースの輸出規制という「資源外交」を強めたことがある。米中交渉の展開次第では、レアアースの供給がさらに逼迫するリスクも考えられ、M&Aによる危機回避の動きは今後も続くだろう。
2025年3月、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC、東京都)と岩谷産業<8088>は、特定目的会社の日仏レアアースを通じて、レアアース精錬を手掛けるフランスのカマレグ(リヨン市)へ最大1億1000万ユーロ(約182億円)を出・融資する契約を締結した。これにより、日本へのレアアース長期供給の実現を目指す。
JX金属<5016>はマイノリティ出資ではあるが、6月9日にオーストラリア(豪州)のRZリソーシズがニューサウスウェールズ州で進めている鉱床開発プロジェクトの権益5%を取得する契約を結んだ。段階的に総額で2000万豪ドル(約18億7000万円)を拠出してレアアースを安定的に入手し、半導体材料として活用する。
海外では、4月に米国の実業家ジェームズ・キャメロン氏(「タイタニック」などを制作した同姓同名の映画監督とは別人)が、中央アジアのカザフスタンでのレアアース採掘に乗り出すルクセンブルクの鉱業大手ユーラシアン・リソーシズ・グループ(ERG)に50億ドル(約7200億円)での買収を提案したと報じられた(ERGは報道内容を否定)。
レアアースはスマートフォンや電気自動車(EV)、パソコン、光ファイバー、LED、風力発電機などに不可欠な素材だ。そのため、米中対立が顕在化する以前から、レアアースの中国への過度な依存は地政学的リスクとして認識されていた。
米地質調査所(USGS)によると、世界のレアアース鉱石採掘量に占める中国の比率は、2024年の推定で約7割に達する。さらにレアアース精錬においては、放射性廃棄物や土壌・水質汚染といった環境問題を理由に、採掘した鉱石を中国に送って処理しているため、中国が約9割のシェアを握っているという。
2024年に豪州のクリティカル・メタルズが、グリーンランドのレアアース鉱山を採掘する「タンブリーズプロジェクト」を最大2億1100万ドル(約300億円)で買収すると発表した。
同年、レアメタル生産の西側諸国最大手である豪州のライナス・レアメタルと、米国最大手のMPマテリアルズとの合併協議が進められた。結局、金額面で折り合わず交渉は打ち切られたが、中国に対抗するための業界再編は各国政府の後押しもあり水面下で模索されているはずだ。
中国と良好な関係にあるロシアですら、「脱中国」の動きを加速させている。2025年5月、プーチン大統領の側近として知られるイーゴリ・セーチン氏が経営する同国石油最大手のロスネフチが、連邦最大のレアメタル埋蔵量があるサハ共和国のトムトル鉱床を運営するボストーク・エンジニアリングを完全子会社化した。
6月15日からカナダで開かれる先進7か国首脳会議(G7サミット)でも、中国へのレアアース輸入依存度を下げるため、調達先の分散化に向けた工程表の策定についての合意文書が作成される見通しだ。「脱中国」に向け、中国以外のレアアース資源を確保するためのM&Aが、世界規模で加速するのは間違いない。
配信元:文:M&A Online
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