部長にとっての財務・会計知識とは~数字を味方にした「攻め」の経営戦略のために
攻めの財務・会計知識とは何か

従来の財務・会計知識は、決算書を読んで過去の実績を把握することが中心でした。しかし、部門経営者に求められる「攻めの財務・会計知識」は、数字を未来への投資判断や戦略立案に活用することです。
事業部門の部長は、自部門の収益構造を深く理解し、どの領域に投資すれば最大のリターンが得られるかを判断する必要があります。そのためには、財務データを単なる結果として捉えるのではなく、事業成長のための戦略的ツールとして活用する視点が不可欠です。
財務諸表から読み取る事業の4つの視点
財務諸表は事業の健康状態を表す重要な指標です。部長として押さえておくべき4つの視点から、自部門の状況を的確に把握します。
1.成長性の分析
成長性は主に、「売上高の伸び」と「市場シェアの拡大」で評価されますが、財務諸表から見て取れるのは主に前者となります。単純な売上増減だけでなく、新規顧客獲得による成長なのか、既存顧客の単価向上による成長なのかを分けて分析します。なお、比較可能な競合の財務諸表が入手できる場合は、市場シェアの評価にも活用することができます。
2.収益性の評価
売上総利益率の変化からは価格戦略の妥当性を、営業利益率の変化からは事業効率の改善度を評価することができます。また、事業別や商品セグメント別での利益貢献度を評価し、リソース配分の最適化につなげることもできます。
3.安全性の確保
営業キャッシュフローと投資キャッシュフローのバランスを評価し、資金繰りリスクの予防に役立てることができます。
4.効率性の向上
在庫回転率や売掛金回転率を定期的にモニタリングすることで、資産効率の最適化を実現することができます。
投資効率という新しい評価軸
課長時代には意識する必要のなかった「投資効率」の概念が、部長職では極めて重要になります。限られた予算と人的リソースをどこに投入すれば、最大の成果を得られるかを数値で判断する能力が求められます。
投資効率評価の実践手法
- ROI(投資収益率)による定量評価
新規プロジェクトや設備投資について、投入コストに対するリターンを明確に計算し、複数案を比較検討する - ペイバック期間の設定
投資回収期間を事前に設定し、リスクと収益のバランスを考慮した意思決定を行う - 機会コストの考慮
ある投資を選択することで失う他の選択肢の価値も含めて総合的に判断する
投資効率の向上は単発的な施策ではなく、継続的なモニタリングと改善のプロセスです。定期的に実績を振り返り、予想との乖離がある場合は迅速に軌道修正を行う仕組みを構築することが重要です。
予算策定は部門経営者としての意思表明
予算策定は単なる数字の積み上げ作業ではありません。部門経営者としての「意思」を数値で表現する重要な経営活動です。どの領域に重点投資するか、どのような成果を目指すかを明確に示すツールでもあります。
戦略的予算策定の実践ステップ
- 現状分析から始める予算編成
前年度実績の詳細分析を通じて、成功要因と改善点を明確にし、それを翌年度の戦略に反映する - 部門ビジョンとの整合性確保
予算数値が部門の中長期ビジョンと整合しているか、各項目の妥当性を論理的に説明できるかを検証する - リスクシナリオの織り込み
楽観・標準・悲観の3つのシナリオを想定し環境変化に対応できる柔軟性を持った予算を策定する
なお、予算は一度策定したら終わりではなく、四半期ごとの見直しを通じて、事業環境の変化に応じた調整を継続的に行うことが成功の鍵となります。
数字で語る部門経営の実現
財務・会計知識を身につけることで、部門の成果を客観的に評価し、改善施策の効果を定量的に測定できるようになります。これにより、経営層への報告や他部門との連携において、説得力のある提案を行うことが可能になり、部門経営者として信頼性の高い発言ができるようになります。
<経営人材育成シリーズ>ビジネス・アカウンティング研修(2日間)
インソースでは、経営幹部向けの「ビジネス・アカウンティング研修」を2日間のプログラムで提供しております。
財務・会計の基本から実践的な計数感覚の習得まで、部長職に求められる知識・スキルを総合的に身につけることができます。事業戦略の立案や進捗管理に活かせる実践的な財務・会計知識を習得されたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
よくあるお悩み・ニーズ
- 組織経営に必要な財務・会計知識を網羅的に学ばせたい
- 通信教育では学習の実態が見極められないため、研修にスイッチしたい
- 研修の場を通して、候補者同士に切磋琢磨する意識を持たせたい
本研修の目標
- 基本的な財務・会計の知識を網羅的に身に付ける
- 自社の経営実態を数字で捉えることができる
- 予算策定、企業分析、採算管理などの具体的な手法が分かる
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「ヒューマンリソース・マネジメント(人と組織のマネジメント)」は、部長級の方にとって、日々の活動の中で最も多くの時間を費やす活動のひとつといえるでしょう。
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役割認識やマインドセットからスタートし、意思決定などの業務面のマネジメント、予算管理、部下・組織のマネジメント、人事評価や労務管理などのスキルを網羅的に学んでいただきます。
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部門全体の成長戦略を描く上では、既存事業を維持・活性化すると同時に、新たな事業を生み出していくような「両利きの経営」が求められます。また、その構想を形にしていくのは「人」であり、「人的資本」への投資を通じてどうパフォーマンスを引き出していくのかが実現のカギを握ります。
本研修は、デジタル時代の上級管理職に向けて、環境の変化にスピーディに対応していくための事業経営力を身に付けていただくためのプログラムとして構成しました。


