ストレスチェックを義務ではなく資産とするための4つの活用術~いきいき働ける会社になる

ストレスチェック制度は、2015年12月から労働安全衛生法により義務化されました。加えて、2025年5月の法改正により、従業員50人未満の事業場でも実施が義務化されることに決定しました。義務化の範囲拡大と共に従業員の健康に関心が高まる昨今、以下のような声を多く耳にします。
- 毎年ストレスチェックを実施はしているが、それ以上の活用ができていない
- ストレスチェックの結果を活用したいとは思うが、何から始めるべきかわからない
ストレスチェックは、ワークエンゲージメントの把握から健康優良法人認定への取り組みまで、広く活用できます。本コラムでは、ストレスチェック結果の4つの活かし方や改善の際のポイントについて解説します。
1.職場や部署、階層特有の課題の発見、対策に活用する
ストレスチェックは個人のストレス度だけでなく、職場の課題を可視化することもできます。
例えば、ある職場において、ストレスチェック結果を集団分析したところ、「職場環境によるストレス」という項目が、全体より低いスコアであったとします。その場合、職場環境を重点的に調べることで、以下のような普段気づきにくい課題まで明らかになり、「職場環境によるストレス」への対策を立てることが可能になります。
- ゴミ箱が遠くデスク周りにゴミが溜まりやすい
→対策:デスクそばに小型のごみ箱を複数個配置する - 蛍光灯が切れたまま
→対策:「蛍光灯が切れた場合は総務に連絡する」といったルールを周知する - 寒暖差の大きい窓際に冷えを感じる社員の席がある
→対策:社員の希望を踏まえた席替えをする - 共有文具棚が散らかっている
→対策:共有文具の戻し位置を写真で明示する
このように、ストレスチェックの結果で偏りが出ている部分を把握し、部署・階層別に傾向を整理し調査することで、現実に即したストレス度軽減を行うことができます。
改善時のポイント
全項目を一度に改善しようとすると、施策が形骸化しやすくなります。まずは「全社平均との差が大きい項目」「前年から悪化している項目」「特定の部署・階層だけが低い項目」など、変化や偏りが目立つポイントに優先的に取り組むのがよいでしょう。
2.プレゼンティーズムの早期発見、低減に活用する
プレゼンティーズムとは、欠勤にはいたっておらず勤怠管理上は表に出てこないが、健康問題が理由で生産性が低下している状態
プレゼンティーズムは、会社を休んではおらず、花粉症や肩こり、睡眠不足といった要因も影響するため、周囲に気づかれにくいことが特徴です。しかし、そのまま放置してしまうと悪化して病気・病欠につながる可能性があり、早めに気づいて対応することが求められます。
そこで、近年は健康経営の流れから、ストレスチェックにプレゼンティーズムの質問項目を追加し、数値化して把握する組織が増えています。数値として可視化されることで、より積極的に改善を目指すことができます。
改善時のポイント
プレゼンティーイズムの改善については、日常の小さな工夫がポイントです。例えば「朝の短いストレッチ時間の設定」「集中タイムを設けて、通知や割り込みを減らす」などからでも効果を発揮します。さらには、管理職による相談しやすい雰囲気づくりや、体調に応じた勤務形態(在宅勤務や軽作業への切替え等)の許容もできると、よいでしょう。
3.ワークエンゲージメントの測定と向上に活用する
ワークエンゲージメントとは、従業員個々人が仕事から活力を得て、仕事に誇りを感じ、いきいきと働けている状態の度合い
労働人口が不足し価値観が多様化する現在、組織は選ばれる存在となっており、多様な働き方のニーズに対応できない組織では優秀な人材の流出と人材の採用難に歯止めがかかりません。「ワークエンゲージメント」の調査・改善は、優秀な人材の確保、維持という視点で、非常に重要です。
厚生労働省が出している「新職業性ストレス簡易調査票(80項目)」には、ワークエンゲージメントの質問も含まれています。自組織のワークエンゲージメントを可視化し、従業員が、活力・熱意・没頭を感じられる環境を整えていきましょう。
改善時のポイント
対象に応じたアプローチを行うことで、エンゲージメント向上の効果を高めることができます。例えば、若手層などでは、「成長実感」がエンゲージメント向上に直結しやすいため、研修機会やフィードバック制度の充実が有効です。
4.健康経営優良法人の認定に活用する
「健康経営」とは、企業が従業員の心身の健康づくりに積極的に関与することで、従業員の仕事の質や企業の生産性を上げていこうとする経営戦略です。現在、経済産業省は健康経営の普及促進に向けて「健康経営優良法人の認定」を行っています。健康経営優良法人に認定されることは、組織の一つの経営戦略の成功といえるでしょう。
健康経営優良法人の認定においては、制度を導入しているかどうかだけでなく、従業員の健康課題を把握し、改善に向けて継続的に取り組んでいるかが重視されます。ストレスチェックを通してプレゼンティーズムやワークエンゲージメントを測り、「どの部署・階層にどのような傾向があるのか」を言語化し、改善施策と結びつけることは、健康経営の実行性を高めます。
改善時のポイント
継続的な健康経営を行うためには、大がかりな施策から始めるのではなく、小さな職場改善や運用ルールの見直しを積み重ねることがとても重要です。その結果を次年度のデータで確認し、改善を続けていく姿勢そのものが、健康経営有料法人認定の評価につながります。
ストレスチェックを始点に健康経営を始める
ストレスチェックは、単に法令を遵守するための年中行事ではなく、従業員の声を客観的なデータとして捉え、職場環境や働き方を見直す大切な機会です。集団分析を通じて職場や部署ごとの課題を可視化し、プレゼンティーズムの早期発見やワークエンゲージメントの向上、さらには健康経営の推進へとつなげることができます。
まずは、自社のストレスチェック結果を丁寧に振り返り、「どこに課題があり、何から着手できそうか」を整理することから始めてみましょう。その積み重ねが、自社ならではの健康経営のストーリーを形づくり、健康経営優良法人の認定取得に向けた確かな一歩となるはずです。
ストレスチェック支援サービス~実施から職場環境改善まで
本サービスでは、従業員が安心して回答できる仕組みを整えつつ、ストレスチェックの実施から結果の集計・分析までを一括サポートします。
集団分析の結果を基に、職場改善施策の提案やフォロー施策の実施が可能で、高ストレス者への産業医面談や全従業員向けのセルフケア支援も提供します。さらに、管理職や人事が組織全体の健康リスクを把握できるよう結果を可視化し、事前説明会や運用支援サービスも併せて提供することで、制度導入を全面的にサポートします。
上でご紹介したプレゼンティーズム、ワークエンゲージメント計測もお任せいただけますので、健康経営優良法人の認定を目指している方は、ぜひご相談ください。
セットでおすすめの研修・サービス
ストレスチェック後の職場改善プログラム
インソースでは、管理職層や受検者の方に向けて、集団分析の数値の読み方、改善のヒントを学べるプログラムをご用意しています。お客さまのストレスチェック結果に基づきカスタマイズを行いますので、毎年実施することで、より効果的に職場のメンタルヘルス改善に役立てることができます。
健康経営推進研修~ウェルビーイングを通して従業員エンゲージメントを高める(半日間)
この研修では、健康経営®の概略をお伝えするとともに、自組織の中で取り組んでいくべき事項を具体的に考えていただきます。
また健康経営推進に向けた具体的な事例紹介を通して、実践的なノウハウを持ち帰っていただけます。
アドラー心理学を活用したメンタルタフネス研修(半日間)
アドラー心理学にもとづき、困難を前向きに捉え、自己成長とチームの活性化につなげていくための研修です。
日常のストレスや人間関係の悩みに対し、自分が持つ思考のクセを踏めて冷静に対応する方法を身につけます。また、自分と他者の課題をうまく切り分け対処していくコツを、ワークを通じて学びます。最後には、自分の強みを再認識し、職場やチームの中でどのように活かせるかを考えていきます。





