人的資本経営時代の部長に求められる、戦略的人事の新常識~「人材の流動化」を前提とした、戦略的人事マネジメント
人的資本経営時代における部長の役割とは
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これまでの部長職の人事マネジメントは、既存メンバーの労務管理と、その労働力の効率的な業務への投入に重点を置いてきました。
しかし、人的資本経営時代の部長には「人材」という経営資本を最大限に活用し、価値創造を最大化するための戦略実行者としての役割が求められるようになっています。
この役割転換において最も重要なのは、人材を「コスト」ではなく「投資対象」として捉える思考です。部下のスキル開発、適材適所の配置、そして離職防止への取り組みを、すべて投資収益率(ROI)の視点で評価する必要があるのです。
「人材の流動化」を前提とした人事施策の立案
現代の労働市場では、従来のような終身雇用を前提とした人材管理は現実的ではなくなってきています。この「人材の流動化」を受け入れつつ、それを組織力向上の機会として活用する施策を立案することが部長には求められています。
具体的な施策例
- 属人化を防ぐためのナレッジシステムの構築
業務マニュアルやナレッジベースの整備を進め、特定人材の退職が業務の停滞やパフォーマンスの低下につながらないようにする - クロストレーニングを通じた人材の多能工化
複数の業務を担当できる人材を育成し、欠員による業務停滞リスクを軽減する - アルムナイネットワークの構築
退職者との良好な関係を維持し、将来的な復職や外部協力者としての活用を図る
継続的なリスキリングの必要性の周知
業務が短いタームで次々と変化していく今の時代においては、リスキリングはもはや常態化した取り組みといえるでしょう。求められる従業員のスキルセットが急速に変化するため、適切なスキル習得機会を提供しつつ、本人の中長期的なキャリア構築支援も求められることとなります。
- 個人のキャリア目標と組織目標の統合
部下一人ひとりが持っているキャリアビジョンを把握し、それを組織の戦略目標と結び付けながら、スキル開発計画の策定を支援する - 学習時間の確保と評価制度への反映
業務時間内に学習機会が得られるように制度化し、必要なスキルの習得が人事評価等に適切に反映する仕組みを構築する
キャリア採用は事業部門トップの最重要命題
人材獲得競争が激化する中、キャリア採用を人事部任せにしていては優秀な人材を確保できません。
部長自身が採用プロセスに積極的に関与し、組織の魅力を直接伝えていく必要があります。面接プロセスへの関与はもちろん、業界イベントや勉強会に参加するなどにより、潜在的候補者との接点を主体的に創出することが重要です。また、現在の部下たちがリファラル採用の起点となるよう、社内の魅力や働きがいを日常的に醸成することも欠かせません。
離職要因を正しく分析する視点
「最近の若い人は忍耐力がない」「今の先輩世代は後輩指導の仕方を知らない」と、個人や世代に離職要因を求めている限り、根本的な離職防止策を打つことはできません。優秀な部長は、離職の真因を組織構造やマネジメント手法の問題として捉え、大胆に育成方法の変革に取り組みます。
離職要因の構造的分析手法
- 業務設計の見直し
個々人に合わせた業務の与え方ができるよう、先輩社員の裁量範囲を広げるとともに、セーフティネットを設けることによって、過度にリスクを感じることなくやりがいを感じられるチャレンジを与えることができるようにする - コミュニケーション頻度と質の改善
フィードバックを通じて若手の成長を支援し、また、キャリア形成に向けたアドバイスを行うための1on1ミーティングを効果的に実施する - キャリアパスの可視化
組織内でのキャリアパスを見える化することで、社員一人ひとりが自社でどのように成長し、どのような役割を担っていくことができるのかを具体的に思い描くことができるようにする
戦略思考に基づく人事マネジメントの実践
これらの取り組みを効果的に推進するためには、部長自身が経営視点での戦略思考を身につけることが欠かせません。短期的な業績目標と中長期的な人材育成のバランスを取りながら、組織全体の持続的成長に貢献する人事マネジメントを実践していくことが求められています。
<経営人材育成シリーズ>
ヒューマンリソース・マネジメント研修(2日間)
インソースでは、現代の経営環境に対応した部長級管理職向けの「ヒューマンリソース・マネジメント研修」を提供しております。人的資本経営時代に求められる戦略的人事マネジメントのスキル習得を、2日間の集中プログラムでサポートいたします。
人と組織のマネジメントに関する最新のトレンドと実務ノウハウを体系的に学びたい管理職の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
よくあるお悩み・ニーズ
- 人のマネジメントに必要な知識を網羅的に学ばせたい
- 通信教育では学習の実態が見極められないため、研修にスイッチしたい
- 研修の場を通して、候補者同士に切磋琢磨する意識を持たせたい
本研修の目標
- 経営視点での人材の活かし方や管理の仕方を身につける
- 管理監督者としての労務管理の重要性が分かる
- 競争力の高い人材の獲得・育成の方法を理解する
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<経営人材育成シリーズ>マネジメント・ストラテジー研修(2日間)
「マネジメント・ストラテジー(経営戦略)」は、部長級の方が経営層の一員として主体的にその構築に関わっていくことになる重要なテーマです。
本研修では、多彩な戦略を体系的に整理して理解を深めることができるため、自社の事業の中でどの戦略を選び活用していけばよいかが分かるようになります。また、具体的な事例を紹介しながら戦略のポイントをお伝えするので、実効性を伴った活用イメージを持っていただけます。
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「ビジネス・アカウンティング(財務・会計知識)」は、経営層である部長級の方にとって、事業の戦略を立てるうえでも、計画の進捗を管理するうえでも必要不可欠なスキルです。
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本研修は、デジタル時代の上級管理職に向けて、環境の変化にスピーディに対応していくための事業経営力を身に付けていただくためのプログラムとして構成しました。


