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営業職の「サボり」は仕組みが原因~部門間の連携で、行動と評価の透明性を高める

組織の売上を作っている多くの営業職は架電・訪問・提案・契約やクレーム対応に毎日全力投球です。

しかし、「外回りから一向に戻らない」「アポの間に1時間以上の空白をよく作っている」「帰社時にもっともそうに『先方担当者の長話につき合わされて困った』と嘘ぶく」こういったサボり癖のある営業社員に悩んでいる企業も少なくありません。

もちろん、こうした行動を取る営業職本人のマインドチェンジは望まれます。しかし、2-6-2の法則(働きアリの法則)が示すように、どのような組織や集団においても、働かない人はおおむね2割程度存在するのが現実です。そのため、これを単なる「怠け」や個人の性格の問題として片づけてしまうだけでは、根本的な解決には至りません。

営業職の行動の背景には、管理体制・評価制度・組織文化の歪みが潜んでいます。この記事では、人事部門を中心に、上司や他部署が連携して「信頼を再構築する仕組み」を整えるための具体策を解説します。

「営業職がサボれる」状況を作り出しているのは組織

1. 業務の可視化不足が自由時間を生み出す

営業職は外出が多く、業務のほとんどが社外で行われます。そのため、上司の目が届かない時間が長くなります。日報やスケジュール報告が形骸化していると、実際の行動がブラックボックス化し、「報告さえしておけば問題ない」という風潮が生まれます。

とくに「午前のアポと午後のアポの間に1時間以上空きがある」「商談が長引いたと説明するが実際はカフェで休憩していた」といったケースでは、行動ログの不透明さが根本原因となっています。この可視化不足は、サボりの温床であると同時に、誠実な社員の努力を見えにくくしてしまいます

2. 成果主義が行動の質を低下させる

営業職では、今なお「結果さえ出せば評価される」という成果主義が根強く残っています。短期的な数字を重視するあまり、行動のプロセスや顧客対応の丁寧さが評価されにくい。その結果、「売上を上げていればサボっても許される」という誤った価値観が組織内に浸透してしまいます。

しかし、顧客との関係性を重視する現代の営業では、日々の小さな行動の積み重ねこそが信頼の源泉です。成果偏重の評価制度を見直さない限り、営業職のサボり癖は根絶できません。

3. 管理職の信頼喪失が放置を助長する

上司が部下の行動を把握しきれず、「また言い訳されるだけ」と注意をためらううちに、沈黙の容認が広がります。一方で、部下の側も「上司はどうせ見ていない」「少しくらいサボっても問題ない」とつけあがるようになります。この相互不信が定着すると、チーム全体の規律が緩み、「誰も言うことを信用しなくなる」状況に陥ります。

放置が招くリスク~信頼の崩壊と離職の連鎖

営業職のサボり癖を放置すると、まず崩れるのが信頼関係です。上司は部下を疑い、部下は上司を軽んじ、同僚間にも不公平感が広がります。「自分だけ真面目に働いて損をしている」と感じる社員が増えると、モチベーションは低下し、離職につながります

さらに、こうした行動は他部署との関係性にも悪影響を及ぼします。たとえば、営業部が帰社予定時間を守らず、報告も遅い場合、事務・経理・カスタマーサポートなどが次の対応に支障をきたします。「営業は自由すぎる」「あの支社の営業は全くルールを守らない」というレッテルが貼られ、組織全体の信頼性が損なわれるのです。評価を得るまでには1年かかりますが、批判されるようになるには1日で十分です。

人事部が中心となって行う4つの改善ステップ

営業職のサボり癖は、個人の意識改革だけでは解決できません。人事部門が中心となり、仕組み・評価・マネジメント・文化の4方向からアプローチすることが求められます。

1. 行動データの「見える化」で信頼の基盤をつくる

訪問履歴、移動ルート、滞在時間、商談記録などをデジタルツールで一元管理し、上司やチームがリアルタイムで確認できる環境を整えます。「監視」ではなく「透明性」を目的とすることで、行動に対する不信感を払拭できます。この見える化により、「事実に基づいて話し合える職場文化」が醸成されます。

2. 成果だけでなく行動評価を導入する

成果評価だけでは、短期的な数字ばかりが重視され、誠実な行動が報われません。そこで、訪問件数・提案準備・顧客との関係構築など、プロセスを評価指標に加えることが重要です。「数字」だけでなく「行動の質」も見られるようになると、営業職の時間の使い方に自然と緊張感が生まれます。

3. 上司だけでなく、他部署からの指摘を受け入れる仕組み

営業部門の行動を客観的に見られるのは、実は他部署の社員です。たとえば、サポート部門が「資料提出がいつも遅い」「商談報告が曖昧」、業務部へのアフターフォロー依頼が遅く、お客さまから催促を受けるなどで気づくケースは多いでしょう。こうした他部署からのフィードバックを「クレーム」ではなく改善提案として吸い上げる制度を作ることで、サボりの兆候を早期に察知できます。

また、他部署メンバーからの指摘は、上司からの注意よりも効果的な場合があります。「営業だけが頑張っているわけではない」という横の視点を得ることで、当事者意識が生まれ、行動変容につながるのです。

4. マネージャー研修で「信頼を壊さずに指導する力」を磨く

恒常化している営業職のサボり癖に対して、突然、強く叱責すると逆効果になることがあります。重要なのは、事実確認と冷静な対話を通じて行動を変えさせるスキルです。人事部門は、営業マネージャーを対象に、面談力・傾聴力・モチベーション管理をテーマに教育を実施し、対話型のマネジメントを支援することが有効です。

他部署連携で「組織ぐるみの信頼回復」を進める

人事部と営業部だけでは、組織文化の改善は難しいものです。経理、総務、CS(顧客サポート)など、営業活動を支える部門との横断的な連携が必要です。たとえば、経理部門が経費精算データから不自然な外出時間を検知したり、CS部門が顧客対応からフィードバックを共有したりすることで、サボり行動の早期発見が可能になります。

また、他部署からの指摘を通じて、営業職本人が「自分の行動が社内にどう影響しているか」を認識できる点も大きな効果です。このような組織全体でのモニタリングとフィードバック体制を整えることで、営業部門に限らず、全社的に誠実な働き方が浸透していきます。

他部署メンバーからの有効な声掛け例

  • 「予定表にある帰社予定時間には、事務所に確実に戻って来てもらわないと。君のオーダーが起点で、私たちの部署は商品の配送処理に進めるんだよ」
  • 「このアポとアポの間の時間で、お客さまへの入金確認を済ませてもらえませんか?前月みたいに月次が締められないと、全社に影響が出ます」
  • 「こちらの部署に昨日何度もお客さまから『営業担当に連絡がつかない』とお電話をいただいて、運転中に事故などのトラブルに巻き込またのではと、とても心配していました」

信頼を取り戻すのは「仕組み」と「連携」から

営業職のサボり癖は、個人の怠慢のみならず、見えない時間をどう管理するかという組織の課題です。帰社しない、直行直帰が多い、言い訳が多い、といった好ましくない行動を早期に是正するには、上席者だけでなく人事部からの「誠実な行動をしているメンバーを高く評価する」という強いメッセージが不可欠です。周りの部署とも連携しながら行動を可視化し、信頼の土台を整えることがいかに重要かを、仕組みによって気づかせることが鍵です。

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