2025年8月29日
農業法人によるM&Aや出資を通じた再編の動きが広がりつつある。農業経営の継承問題や採算悪化が深刻さを増すなか、広域展開による農業の大規模化が現実に進み始めている。千本木啓文ダイヤモンド副編集長に農業M&Aの可能性について聞いた。
千本木氏は「すでに農業分野でもM&Aによる大規模化が始まっており、今後も農業集約のツールになる」との見方を示す。日本記者クラブの会見で、M&A Onlineの質問に答えた。
その事例として、物流大手のヤマタネ<9305>が出資する中森農産(埼玉県加須市)を挙げた。同社は本社を置く埼玉のほか、栃木、島根、山口の計4県で東京ドーム72個分に当たる330ヘクタールの農地を運営している。3県には、それぞれ支社を置いている。
このほかにも新潟県の農業法人が山口県で100ヘクタール規模で農業経営に取り組むなど、全国規模で農地を集約し、農業の効率化を図ろうとする動きが広がっているという。
しかし、こうした動きにはハードルも伴う。他県からの進出に対して地元農家から反発を受けることが少なくないからだ。農作業後のトラクターが道路に泥を落としたことを巡るトラブルや、農機具が破壊されたとの極端な話もあるという。
こうした事情から、千本木氏は「他県での農業展開は難しいとの声も聞く」と明かす。「子会社化よりも緩やかな業務提携の方が現実的だといった意見や、自社の営農ノウハウを提供する対価として生産物の販売を委託してもらった方が良いのではないかとの声もある」と話す。
さらには、農業M&Aを進めるうえでの実務的な課題もある。
「売り手側が高値での売却を求めたり、農地の所有権を手放したがらず経営権のみの譲渡を希望したり、自ら所有する農機の使用を条件に賃借料の支払いを求めたりするなど、買い手にとって受け入れにくい条件を提示されることも少なくない」(同)という。
これは、農業M&Aが始まったばかりで完了案件が少ないために、交渉の前提となるコンセンサスがないことが原因と見られる。
こうした課題を乗り越えるには、農地の取引に関する慣習や価格設定に「こなれた相場感が必要だ」(同)という。完了案件が増えて市場が成熟し、地元農家と農業法人の利害が調整されれば、農業のM&Aはよりスムーズに展開していくはずだ。
農業のM&Aには、複雑な課題が多く残されている。だが、農業ビジネスの持続可能性と中山間地を含む農村地域の再生を両立させる手段として、有効な「ツール」であることに間違いないだろう。
配信元:文:M&A Online
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