クラウドの基礎知識を浸透させる3ステップ~社員からの「これ、クラウドですか?」をなくす方法
現代ビジネスにおいて、クラウドサービスの利用はもはや当たり前になりました。しかし一方で、社員一人ひとりのクラウドに対する理解度が追いついていないという現実も存在します。このギャップが、無用なトラブルや非効率な業務を生み出す原因となることがあります。
本記事では、クラウドが当たり前になった今だからこそ考えるべき、社員のクラウド基礎知識浸透の重要性と、その具体的なアプローチについて解説します。
クラウドは「社員が気が付かないうち」に使っている
「これ、クラウドですか?」「クラウドって危ないんでしょ?」などと漠然とした質問をされ、辟易しているセキュリティ担当者や、ヘルプデスクの方も少なくないのではないでしょうか。
- OneDriveやGoogle Driveでファイルを共有している
- GmailやOutlookなどのメールサービスを利用している
- Dropboxで写真や書類を保存している
もちろんこれらはすべて、クラウド上で提供されているサービスです。これ以外にも、個人のスマートフォンで利用するSNSや写真のバックアップなども、クラウドサービスの一例です。
しかし、その「身近さ」ゆえに、クラウドの特性やリスクについて十分に理解しないまま、なんとなく利用しているビジネスパーソンも少なくありません。これが、情報セキュリティ上の懸念や、ヘルプデスクへの問い合わせ増加につながる要因となっています。
なぜ、社員のクラウド基礎知識が必要なのか
社員のクラウド基礎知識が不十分なままだと、以下のような問題が発生する可能性があります。
情報セキュリティリスクの増大
社員がクラウドサービスに対する正しい知識を持たないことで、セキュリティ上のリスクを高めてしまうことがあります。例えば、以下のようなケースが考えられます。
- シャドーITの横行: 会社が許可していないクラウドサービスを、社員が自己判断で業務に利用してしまうことです。これにより、情報漏洩のリスクや、セキュリティ対策の抜け穴が生じる可能性があります
- 不適切なデータ共有: クラウドストレージの共有設定を誤り、機密情報が外部に公開されてしまうなど、意図しないデータ漏洩を引き起こすことがあります
- フィッシング詐欺への脆弱性: クラウドサービスを装ったフィッシング詐欺に対して、社員がだまされやすくなる可能性があります
業務効率の低下とヘルプデスクの負担増大
クラウドに関する基本的な理解がないため、些細な操作でつまずいたり、不必要な問い合わせが発生したりすることがあります。
- 問い合わせの増加: クラウドサービス利用に関する基本的な操作方法や、不明点に関する問い合わせが増加し、ヘルプデスクの業務を圧迫します
- トラブル発生時の対応遅延: クラウドサービスの特性を理解していないため、トラブル発生時の原因特定や解決に時間がかかり、業務の停滞を招く可能性があります
- 導入効果の半減: クラウドサービスが持つ本来の利便性や効率性を、社員が十分に活用できず、導入効果が半減してしまうことも考えられます
クラウドの基礎知識浸透のための3ステップ
これらの問題を解決し、社員がクラウドサービスを安全かつ効率的に利用できるようにするためには、体系的な基礎知識の浸透が不可欠です。以下に、具体的なステップをご紹介します。
ステップ1: 現状把握と課題の明確化
まず、自社の社員がどの程度クラウドについて理解しているのか、どのような疑問や不安を抱えているのかを把握することから始めます。
- ヘルプデスクへの問い合わせ内容の分析: クラウド関連の問い合わせで特に多い内容は何か、どのような誤解が多いのかを分析します
- アンケート調査の実施: 社員全体を対象に、クラウドに関する理解度や利用状況、抱えている不安などをアンケート形式で調査します
- 部署ごとのヒアリング: 特にクラウドサービスを多く利用している部署や、問い合わせが多い部署に対して、個別ヒアリングを実施し、具体的な困りごとを把握します
ステップ2: 基礎知識教育の実施
現状把握で明らかになった課題に基づき、社員向けの基礎知識教育プログラムを策定し、実施します。
- クラウドの基本概念: クラウドとは何か、どのような種類があるのか(IaaS・PaaS・SaaSなど)、そのメリットとデメリットなどを分かりやすく解説します
- 社内で利用しているクラウドサービス: 自社で導入している具体的なクラウドサービスについて、その利用目的、基本的な操作方法、利用上の注意点などを説明します
- 情報セキュリティの重要性: クラウド利用におけるセキュリティリスク、情報漏洩を防ぐための対策(パスワード管理・多要素認証など)、緊急時の対応方法などを周知します
- 利用規約とガイドライン: 自社で定めているクラウド利用に関する規約やガイドラインを説明し、遵守の重要性を徹底します
ステップ3: 定期的な情報提供と啓発活動
一度の教育で終わらせず、継続的に情報提供と啓発活動を行うことが重要です。
- 社内ポータルサイトでの情報共有: クラウドに関するFAQ・トラブルシューティング・最新情報などをまとめたページを作成し、いつでも参照できるようにします
- 定期的なメールマガジンやニュースレター: クラウドに関する新しい情報や注意喚起などを定期的に発信します
- 事例共有と成功体験の共有: 社内でのクラウド活用事例や、セキュリティ対策の成功事例などを共有し、社員の意識向上を促します
- eラーニングの活用: 自分のペースで学習できるeラーニングコンテンツを提供し、全社員の知識レベルの底上げを図ります
- 公開講座(オープンセミナー)の実施: 異業種交流型の公開講座で、生きた知識を吸収する
まとめ
クラウドに関する基本的な理解不足は、ヘルプデスクへの問い合わせ増加やトラブル対応の遅延を引き起こし、結果として業務効率の低下やクラウド導入効果の半減にもつながります。
これらの課題を解決し、社員がクラウドサービスを安全かつ効率的に活用できるようにするためには、まず現状を正確に把握し、その上でクラウドの基本概念、自社で利用しているサービス、情報セキュリティの重要性などを体系的に教育することが不可欠です。外部研修やeラーニングなどを活用しながら、社員全体のリテラシーを高めることをご検討ください。
(半日研修)クラウド理解研修~セキュリティから基礎を固める
社員のクラウド基礎知識向上は、情報システム部門・ヘルプデスク部門の負担軽減だけでなく、企業全体の情報セキュリティ強化と業務効率化に直結する重要な課題です。しかし、専門知識を持つ担当者が限られている中で、全社員を対象とした研修を企画・実施することは容易ではありません。
本研修では、基礎知識からその種別と仕組み、リスクとセキュリティ、ビジネスでの活用事例まで幅広く学ぶことができます。クラウド初心者の社員の方も問題なくついていける内容です。
よくあるお悩み・ニーズ
- 社内でクラウドのシステムを利用しているが、どのような仕組みなのかわからない
- クラウドについて知るだけではなく、ビジネスにおいてどのように活用されているのかを知りたい
- ITベンダーとの調整を進めるために、 クラウドについての基礎知識を身につけたい
本研修の目標
- クラウドサービスを理解し、自社のビジネスに応用できる基礎知識を身につける
- クラウドの仕組みやメリットを説明できる
- 自組織の業務内容からクラウド化できる業務を見つける
受講者の声
- クラウドの種類やオンプレとの違いを知識として身に付けることができたので、目的に応じて使い分けながら実践で取り入れていきたい
- 自身の業務の中で、困っていることや非効率的なところを、「既出のクラウドサービスを使って解決できるかもしれない」という視点を持つ
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