インソース マーケティング&デザイン室

Excel指導のゴールは「検索」と「自己解決」ができること~DXのための「Excelの教え方」3

Excelを人に「教える」際、ただ操作方法を伝えるだけでは、真のスキル習得にはつながりません。

なぜなら、操作方法だけをどれだけマスターしたところで、実際の現場で使えるかどうかはまた別問題だからです。また、Excelには膨大な機能と活用方法があり、それらを知識として覚えることは不可能です。

では、どのようにすれば、初心者が自らExcelを使いこなし、問題解決できるようになるのでしょうか?

ゴールの設定:Excel指導のゴールは「検索」と「自己解決」

Excel指導における究極のゴールは、初心者がすべての機能を暗記することではありません。「自分で調べ、問題を解決する力」を身につけてもらうことです。

現代のExcelは機能が多岐にわたり、バージョンアップも頻繁です。すべての操作を網羅的に教えるのは現実的ではありませんし、覚えたとしてもすぐに忘れてしまうでしょう。

大切なのは、「こんなことをしたい」と思ったときに、どのキーワードで検索すれば解決策にたどり着けるか、どのような手順で試行錯誤すれば問題がクリアできるかを自分で考え、実行できる能力です。私たちは、そのための道筋を示す案内人となることを目指すべきです。

コツ1:経験者ほど雑になりがちな「正しい用語」を把握する

自己解決能力を育む上で、「正しい用語」の理解は不可欠です。例えば、「Excelの一番上のところ」ではなく「リボン」と呼ぶ、「マス目」ではなく「セル」と呼ぶといった、基本的な用語の統一から始めましょう。

なぜなら、正確な用語を知っていることは、効率的な情報検索の第一歩だからです。例えば、「Excel 表 集計」よりも「Excel SUMIF 関数」と検索する方が、はるかに的確な情報にたどり着けます。初心者が「これは何て呼ぶんだろう?」と疑問に思ったときに、正しい言葉を教えることで、彼らが自力で情報を探しやすくなる基盤を築くことができます。

コツ2:「Excelでできること」の理解を深める

「Excelで何ができるのか、具体的にイメージできない」という声は少なくありません。

多くの人にとってExcelは「表を作るもの」「計算するもの」といった漠然とした認識に留まりがちです。しかし、Excelはデータ集計・グラフ作成・条件付き書式・ピボットテーブル、さらにはVBAによる自動化など、実に多様なことができます。

指導の際には、ただ機能を羅列するのではなく、「Excelで何ができて、それが日々の業務にどう役立つのか」という視点で具体例を交えて説明しましょう。例えば、「このXLOOKUP関数を使えば、顧客リストから瞬時に担当者情報を引っ張ってこられますよ」といった、業務に直結するメリットを示します。こうすることで、初心者の「Excelでこんなこともできるのか!」という気づきを促し、学習意欲を高めることができます。

コツ3:「検索癖」をつける

自己解決能力の核心は、まさにこの「検索癖」にあります。

初心者が質問してきた際に、すぐに答えを教えるのではなく、「それ、どうやって調べたらわかると思いますか?」「どんなキーワードで検索してみますか?」と問いかけてみましょう。最初は戸惑うかもしれませんが、一緒に検索して解決策を見つける過程を共有することが重要です。検索のコツや、正しいキーワードの選び方、検索結果のどこを見れば良いのかなどを、実践的に学んでもらいます。

これにより、彼らは「困ったらまず検索してみる」という習慣を身につけていくでしょう。

その他のコツ~試行錯誤する機会を多く設ける

その他にも、Excelの教え方のコツは沢山あります。いくつか例を見てみましょう。

すべてのボタンを押してみる

Excelのインターフェースには、膨大な数のボタンや機能が隠されています。初心者のうちは、よく使う機能以外のボタンには触れようとしないものです。しかし、「すべてのボタンを押してみる」という大胆な行動は、Excelの理解を深める上で非常に有効です。

教える側は、「壊れても元に戻せるから、怖がらずに色々なボタンを押してみてくださいね」と促します。リボンのタブを一つずつ開き、各グループにあるボタンを実際にクリックさせてみましょう。そうすることで、それぞれのボタンが持つ機能の断片が頭に入り、いざという時に「そういえば、あのボタン、こんな機能があったな」と思い出すきっかけになります。

ショートカットキーは「使わずに」教える

Excelの操作効率を上げる上でショートカットキーは非常に強力です。しかし、初心者に最初から多くのショートカットキーを教えるのは逆効果になることがあります。なぜなら、覚えることが増えてしまい、基本的な操作への集中を妨げる可能性があるからです。

最初は、マウス操作やリボンの利用といった直感的な操作を優先して教えましょう。そして、初心者が基本的な操作に慣れてきた段階で、「実は、この作業はもっと早くできる方法があるんですよ」と、必要に応じて少しずつショートカットキーを紹介していくのが効果的です。例えば、コピー&ペーストのCtrl+C/Ctrl+V、元に戻すのCtrl+Zなど、使用頻度の高いものから段階的に導入することで、無理なく習得を促せます。

自分で操作する時間を多くとる

Excelが得意な人がついやってしまいがちなのは、「操作を代わってもらう」「操作して見せる」ことです。一見効率が良く見えますが、長い目で見るとExcelスキルを育てる意味ではよくない影響もあります。

座学で知識を詰め込むよりも、実際に手を動かすことで得られる学びは何倍も大きいです。指導中は、教える側が一方的に操作を見せる時間を減らし、初心者自身がPCに向かい、操作する時間を最大限に確保することが大切です。自分でできた、という経験が記憶に刻み込まれれば、それがやがて自己解決力に大きく寄与します。

具体的なタスクを与え、「これをやってみてください」「どうすればいいと思いますか?」と問いかけながら進めます。その中で、初心者が自分で考え、試行錯誤する機会を多く設けます。エラーが出た時や、操作につまずいた時こそ、彼らが自力で解決しようと努力するチャンスです。私たちは、その隣で適切なヒントを与えたり、方向性を修正したりする役割に徹しましょう。

複数名に教える「研修」や「勉強会」の場合に気を付けるべきこと

企業内研修や勉強会など、複数名にExcelを教える場合は、個別で指導する場合とは異なる配慮が必要です。

  • レベル差への対応: 事前アンケートなどで初心者のExcelスキルレベルを把握し、内容の難易度を調整するか、レベル別のグループ分けを検討しましょう。共通の基礎部分を短時間で終え、応用は選択式にするなどの工夫も有効です
  • 質問への対応: 一人からの質問に長く時間を取ると、他の初心者が退屈してしまいます。全体に関わる質問以外は、「後で個別にフォローします」と伝えます。休憩時間や終了後に対応するなどのルールを設けておくとスムーズです
  • 進捗確認: 全員の進捗状況を把握し、遅れている人がいないか注意を払いましょう。全員が同じスピードで進むのは難しいため、余裕を持ったスケジュール設定を心がけましょう。また、詰まってしまった人へのサポート体制を整えることが重要です
  • アウトプットの重視: 最後に全員が小さな課題をクリアできるよう、具体的な目標を設定します。その成果を発表する機会を設けることで、達成感を共有し、学習意欲を高めることができます

まとめ

Excel指導は、単なるツールの使い方を教えるだけでなく、初心者が自律的に学び、問題解決できる能力を育むプロセスです。このコラムで紹介した考え方やコツが、あなたのExcel指導の一助となれば幸いです。

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  1. Excelは組織で活かす!Excelを「教える側」と「教えられる側」の心理
  2. 「Excelが苦手」な人の本音を理解し、劣等感を抱かせない教育を行う
  3. Excel指導のゴールは「検索」と「自己解決」ができること
  4. 初心者が「できた!」を実感できる、Excel教育のポイント
  5. 絶対参照と相対参照、IF・AND・ORのネスト...一歩進んだ機能の適切な教え方
  6. グラフ、条件付き書式、表示形式、フィルタ...業務効率化を加速させる応用機能
  7. 我流からの脱却!「なぜ?」を深掘りする応用機能
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