株式会社インソースデジタルアカデミー

意識改革の次は「実行改革」~自治体DXを「動かす」、プロジェクト設計人材の育て方

「DXの重要性は理解した。でも、次に何をすればいいのか分からない」多くの自治体で、いまそんな声が聞かれます。

総務省の推進方針では、意識改革の先に「実装力」が求められていますが、現場では「旗を振る人」はいても、「動かす人」がいないという課題が目立っています。庁内にDX推進担当を設けたとしても、実際に業務プロセスを再設計し、関係部署を巻き込みながらプロジェクトを進められる人はまだ少数派です。

多くのリーダーが「何から手をつければいいのか」「どこまで自分で決めてよいのか」と迷い、結果的にツール導入で止まってしまう。そんな停滞が全国で見られます。

この記事では、意識改革の次に来る「実行改革」をテーマに、現場を動かすDXリーダー(=プロジェクトを設計できる人)をどう育てるか、全国の取り組みをもとに実践的なステップを整理します。

ツール操作より「構想力」~DXリーダーの真の条件

多くの自治体では、DX人材というと「ツールを扱える人」を指しがちです。しかし、本来のDXリーダーとは、課題を発見し、内外のリソースを使って解決を実行に移せる人材。必要なのはITスキル以上に、構想力と対話力です。

  • 課題を言語化する力:抽象的な「効率化」ではなく、誰の業務をどう変えるかを明確にする。
  • 技術と業務をつなぐ翻訳力:ベンダーと共通言語で議論できる。
  • プロジェクトを動かすマネジメント力:期限・予算・関係者を調整し、成果を形にする。

例えば、庁内の文書決裁を電子化する場合でも、「どの手続きが本当にデジタル化の効果を生むのか」「誰の負担を減らしたいのか」を言語化しない限り、現場には浸透しません。この構想の力を持つ人こそが、真のDXリーダーです。

つまり、DXリーダーとは「ツールを使う人」ではなく、「仕組みを動かす人」なのです。

研修から現場へ〜学びを実践に変える育成設計

座学だけで人は育ちません。DXリーダーを育てるには、学びと実践を同時に動かす仕掛けが必要です。「学んだことを明日から試せる場」を設計することが、育成施策全体の鍵となります。

効果的な育成の3ステップを紹介します。

  • 現場課題で「小さな実践」の場を作る
    業務改善・市民対応など、当事者意識を持てるテーマで始めます。「窓口混雑の削減」「報告書作成の簡素化」など、身近なテーマでかまいません。
  • 研修(学び)と実践を直結させる
    「業務の可視化」「ペルソナ設計」など、学びを実務に直結させます。講義で学んだフレームワークを自庁課題に即適用することで、学びが行動に変わります。
  • 上司・推進部署が「伴走」し、成果を評価する
    改善提案を庁内で共有し、発表会などで可視化します。評価・表彰制度と連動させるのも効果的です。

OJTと実践を回しながら育てた職員は、単なる学習者ではなく「自走する変革の担い手」になります。

人をシェアする発想〜連携型DXで人材育成を加速する

人材不足はどの自治体にも共通の課題です。そこで注目されているのが、複数自治体が連携して取り組む広域DXです。例えば、近隣市町村が連携して共通のデジタル基盤を整備し、民間企業や大学とも協働。専門人材や研修、ノウハウを「シェア」するのです。

この連携型DXは、単に人を補うだけでなく、「標準化」と「学習共有」の仕組みとして機能します。データの定義や業務プロセスを共通化すれば、成功事例を他自治体にも展開しやすくなり、職員の学びも横展開されます。

重要なのは「他の事例を真似る」ことではなく、地域特性に合わせて「設計」すること。連携によってこそ、設計できる人のネットワークが生まれるのです。

実行を「文化」に変える~DXを継続させる3つの仕掛け

DXを本当に動かすのは、意識ではなく「仕組み」です。どんなに意欲的な職員がいても、制度や仕掛けが伴わなければ動きは続きません。そこで、実行を継続するための3つの仕掛けを紹介します。

  • 現場課題を拾う「仕組み」
    職員が気づいた改善点を気軽に共有できるフォームやボードを設置します。例えば、週1回の「課題発見ミーティング」を定例化するだけでも、意見が集まりやすくなります。
  • 部局を越えた「プロジェクト制」
    部局を超えたチームで課題に取り組み、半年単位で成果を可視化します。兼務を前提にしつつ、目的と権限を明確にすることで実行力を高めます。
  • 成功体験を「組織知」に変える
    属人的な成功を組織知に変え、次の改善につなげます。「業務可視化マニュアル」や「RPA適用判断シート」を共有すれば、他部署でもすぐに応用できます。

こうして、DXはプロジェクトから文化へ。継続的に改善が回る自治体こそ、真の意味でDXを体現しています。

小さな実践から始める〜動かせる人が育つ組織へ

自治体DXの次のステップは、「育てて、動かす」人材の育成です。ツール導入や意識改革を超え、プロジェクトを設計できる人を増やすことが持続的な変革の鍵となります。この設計できる人は、必ずしもITの専門家である必要はありません。むしろ、現場の業務を最もよく知る人こそ、最適な設計者になり得ます。

課題を正しく定義し、関係者を巻き込み、デジタルの力を使って仕組みを再構築できる。それが、次世代の自治体リーダーの姿です。明日からできる一歩は、「自分の部署で小さなDXプロジェクトを立ち上げる」こと。成功も失敗も実践知として蓄積し、次の改善に生かす。その小さな循環が、庁内に動く文化を根づかせ、やがて組織全体を動かす力へと変わっていきます。

【DX推進者シリーズ】課題設定力研修~全社的な課題を見極めて最適化する

DX時代に求められる「問題発見」「問題分析」「課題設定」の3つのスキルを学ぶ研修です。全体最適や標準化の考え方を理解したうえで、さまざまな視点やフレームワークを活用して問題を正しく捉え、本質的な課題を設定する力を身につけます。自部署で解決すべき課題を見極め、業務改善につなげられるようになることを目指します。

よくあるお悩み・ニーズ

  • DXを成功させるために、適切な課題が設定できるようになりたい
  • 課題設定のための、一連のプロセスが知りたい
  • 多くの業務が標準化されておらず、業務の属人化に困っている

研修のゴール

  1. 問題と課題の違いを理解し、全体最適でDX推進を考えられる
  2. 課題解決のためにおさえるべきポイントや流れがわかる
  3. 組織内のメンバーを巻き込み、設定した課題を解決に導けるようになる

>公開講座の詳細はこちら

セットでおすすめの研修・サービス

【DX推進者シリーズ】仮説構築力向上研修~多面的にデジタル化を考える

DXの推進には、ツール導入による効果の予測と検証が不可欠です。本研修では、DX推進を加速するための仮説構築を学びます。ワークでは学んだ手法を実践し、今ある情報から将来かかるコストやツール導入後の効果を推定します。また、立てた仮説をどのように検証し修正していくかについても解説します。粘り強く改革を進められるDX人材を目指すプログラムです。

>公開講座の詳細はこちら

プロジェクト推進研修~関係者を巻き込み業務改善を実現に導く

業務改善活動が上手くいかない真の要因を突き止め、実効性のある活動推進の手順やノウハウ、活動に投じる人的リソースの捻出の仕方などを学んでいただきます。ワークでは、ある企業の業務改善における奮闘記を読んで、何が改善を阻んでいて、何がきっかけとなって成功につながったのかをグループ討議していただきます。

>公開講座の詳細はこちら

>講師派遣型研修の詳細はこちら

DX推進のための業務改革研修~デジタル活用の視点を持つ

現状の業務を見直し、ITやデジタルによる効率化で組織のDX推進を考える研修です。データを利活用することのメリットやデータドリブン思考、業務を自動化するうえでの考え方について理解を深めます。ワークでは、具体的に問題を洗い出して真因を深堀りし、デジタルツールを使った解決策を検討します。問題解決のステップにそってワークに取り組みながら、実践的に改善の道筋を立てられるプログラムです。

>公開講座の詳細はこちら

関連記事

関連研修シリーズ