インソース マーケティング&デザイン室

「Excelが苦手」な人の本音を理解し、劣等感を抱かせない教育を行う~DXのための「Excelの教え方」2

Excelを組織全体で活用することの重要性と、それがもたらす具体的なメリットについては、理解されている方も多いかと思います。

しかし実際、どれほどメリットがあると言われても、多くの人がExcelに対して苦手意識を持っているのが現実です。彼ら・彼女らが心の中で抱えている「本音」を知ることは、効果的なExcel教育を行う上で不可欠です。

Excelが苦手な人の「本音」~苦手意識の根源を考える

「初めから得意な人に任せたほうが早くて正確」

これは、Excelが苦手な人が真っ先に思い浮かべる言い訳の一つかもしれません。特に忙しい業務の中では、「自分で調べて、試して、間違えるよりも、詳しい人に頼んだ方が手っ取り早い」と考えてしまうのも、無理はありません。

しかし、この考え方は長期的・組織的に見るとあまり好ましくないといえます。特定の個人への業務集中を生み出し、組織全体の生産性向上を阻害します。また、Excelが得意な一部の人材以外の多くの人のスキルアップの機会が失われるという見方もできます。

誰もが基本的なExcelスキルを身につけることで、業務の属人化を防ぎ、より柔軟な人員配置やチーム連携が可能になります。

「自分が触ってExcelを壊すと迷惑がかかる」

数式を消してしまったらどうしよう...
データがめちゃくちゃになったら困る...
自分で直せないから触りたくない...

これらは、Excelを触ることに抵抗がある人が抱きがちな、根深い恐怖心といえます。特に、複数人で共有しているファイルや、重要なデータが含まれているファイルであればあるほど、このプレッシャーは大きくなります。

この恐怖心は、単なる操作ミスへの懸念だけでなく、「完璧でなければならない」という心理的な壁にもつながっています。この心理的なハードルを取り除くことが、Excel教育の第一歩となります。

「なにが分かっていないのか、分からない」

Excel学習の大きな壁の一つは、「自分が何を知らないのか、何が課題なのか」を把握すること自体が難しい点です。

例えば、XLOOKUP関数を知らない人は、そもそも「XLOOKUPを使えば解決できる」という発想に至りません。あるいは、効率的なショートカットキーを知らない人は、それが存在することすら知らないため、無意識のうちに非効率な作業を繰り返してしまいます。

この「無知の知」の欠如は、学習意欲の低下や、適切な学習方法を見つけられない原因となります。教える側は、この「なにが分かっていないのか、分からない」状態を理解し、具体的な課題や解決策を提示していく必要があります。

教える側として持つべきマインド~劣等感を抱かせない

これらのExcelが苦手な人の本音を踏まえると、教える側としてどのようなマインドを持つべきでしょうか。

まず、「完璧主義を手放す」ことが重要です。Excelは広範な機能を持ち、すべてを一度に教えることは不可能ですし、教わる側も一度にすべてを習得することはできません。まずは、業務で頻繁に使う基本的な機能や、効率化に直結するポイントに絞って教えることから始めましょう。これを理解しないまま「もう教えたことなのに」「なぜ分からないの?」などと行ってしまうと、教わる側は劣等感を抱き、「自分はExcelに向いていない」と諦めてしまいます。

何よりも大切なのは、「間違えてもいいから、まずは一度やってみて」という後押しです。「間違えても大丈夫」「壊しても元に戻せるから」という安心感を与えることが、Excelに対する苦手意識を払拭する上で不可欠です。

この安心感を与えるために、教える側が積極的に取り組むべき具体的なアプローチをいくつかご紹介します。

「練習用のファイル」を用意し、自由に触って試せる環境を提供する

これはExcel教育の最初のステップとして非常に重要です。

業務で実際に使うファイルではなく、思う存分失敗できる「砂場」のような練習用ファイルを用意しましょう。ダミーデータや、業務でよく使うレイアウトを模したものなど、リアリティを持たせつつも、間違えても支障がない安全な環境を提供することで、初心者は安心して様々な機能を試せます。例えば、「今日のタスク管理表」や「簡単な売上集計表」など、身近なテーマのファイルから始めると良いでしょう。

元に戻す(Ctrl + Z)機能の重要性を強調し、操作ミスを恐れないマインドを育む

Excelを触るのが怖いと感じる人の多くは、「一度操作を間違えたら元に戻せない」という不安を抱えています。

ここで、「元に戻す(Ctrl + Z)」というショートカットの存在を、繰り返し強調して伝えましょう。これは、ほとんどのPC操作で使える基本的な機能であり、Excelの操作ミスを恐れる必要がないことを示す強力なツールです。実際に目の前でミスを再現し、「ほら、こうやって簡単に元に戻せるんですよ」と見せることで、初心者の不安を大きく軽減できます。

質問しやすい雰囲気を作り、些細な疑問でも気軽に聞ける関係性を築く

「こんなこと聞いたら恥ずかしい...」「忙しいのに迷惑かな...」と、Excelが苦手な人が質問をためらうのは、典型的な心理です。

教える側は、常にオープンで、非難しない姿勢を心がけましょう。「どんな些細なことでも大歓迎です」「わからなかったらすぐに聞いてくださいね」といった言葉をかけたり、定期的に「何か困っていることはありませんか?」と声をかけたりすることで、質問のハードルを下げます。上司部下や先輩後輩の立場であれば、休憩時間中の雑談や、ランチタイムなどの非公式な場でのコミュニケーションも、信頼関係を築き、質問しやすい雰囲気を作る上で効果的です。

「小さな成功体験」を積ませ、積極的にほめる

例えば、簡単な数式を一つ組めるようになる、ショートカットキーを一つ覚える、といったことでも良いので、とにかく実践してもらいましょう。

学習のモチベーションを維持するために最も効果的なのは、「できた!」という成功体験です。例えば、オートSUMで合計値を出す、特定のセルに色を塗る、Ctrl + C(コピー)とCtrl + V(貼り付け)を使うなど、すぐに成果が見える小さな目標を設定します。そして、それができた時には「素晴らしい!」「よくできましたね!」と積極的にほめ、その成果を認めましょう。この小さな成功の積み重ねが、Excel学習への自信と意欲を育てます。

まとめ

教える側は、単に知識やスキルを伝えるだけでなく、教わる側の心理的なハードルを取り除き、Excelに対する「苦手意識」を「楽しい」「できる」という感覚に変えるファシリテーターとしての役割を担う必要があります。

Excel教育は、一朝一夕に成果が出るものではありません。しかし、地道な取り組みが、やがて組織全体の生産性向上という大きな実を結びます。このコラムが、Excelを「教える」ことの重要性を再認識し、より効果的な教育実践への一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

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DXのための「Excelの教え方」シリーズはこちらから

  1. Excelは組織で活かす!Excelを「教える側」と「教えられる側」の心理
  2. 「Excelが苦手」な人の本音を理解し、劣等感を抱かせない教育を行う
  3. Excel指導のゴールは「検索」と「自己解決」ができること
  4. 初心者が「できた!」を実感できる、Excel教育のポイント
  5. 絶対参照と相対参照、IF・AND・ORのネスト...一歩進んだ機能の適切な教え方
  6. グラフ、条件付き書式、表示形式、フィルタ...業務効率化を加速させる応用機能
  7. 我流からの脱却!「なぜ?」を深掘りする応用機能
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