株式会社インソースデジタルアカデミー

社員のITリテラシー格差が業務を停滞させる前に~人事が知っておくべき「ITの基礎知識」底上げ戦略

「クラウド移行を検討しています」
「DX推進が経営課題です」
そんな会議の場で、参加者の表情が曇る瞬間を見たことはありませんか。

IT部門の担当者が熱心に説明すればするほど、非IT部門のメンバーは黙り込み、結局「IT部門に任せます」という言葉で議論が終わる。このような光景は、多くの企業で日常的に繰り返されています。

「フォルダって何ですか?」その質問に、あなたの組織は答えられますか

問題の本質は、社員一人ひとりのITリテラシーに大きなばらつきがあることです。毎日PCを使って業務をしているはずなのに、フォルダの概念を理解していない、ファイルの保存場所が分からない、簡単な操作でもすぐにIT担当者を呼んでしまう。こうした状況は、個人の業務効率を下げるだけでなく、組織全体のデジタル化を妨げる大きな障壁となっています。

本記事では、ITリテラシー格差が生まれる背景を紐解きながら、組織として底上げを図るための具体的な考え方と、押さえておくべきITの基礎知識についてお伝えします。

なぜ「PCを使っているのにITに弱い」という現象が起きるのか

一見すると矛盾しているように思えます。毎日メールを送り、ExcelやWordで資料を作成しているのに、なぜ基本的なIT知識が身についていないのでしょうか。この背景には、「使えること」と「理解していること」の違いがあります。多くの社員は、業務上必要な操作を「手順」として覚えているに過ぎません。しかし、その裏側でどのような仕組みが動いているのか、データがどこに保存されているのかといった本質的な理解が欠けているのです。

さらに、「分からないことがあればIT部門に聞けばいい」という文化が定着してしまうケースも少なくありません。結果として、社員は自ら学ぶ機会を失い、IT担当者への依存度が高まる一方で、IT部門は本来注力すべき戦略的業務に時間を割けなくなるという悪循環が生まれます。

ITリテラシー格差がもたらす、見えないコスト

この格差は、単なる個人のスキル不足という問題にとどまりません。組織全体に深刻な影響を及ぼします。

まず挙げられるのが、業務効率の大幅な低下です。ある企業では、社員一人あたり週に平均3回、「ファイルが見つからない」「印刷ができない」といった理由でIT担当者を呼んでいるという調査結果が出ました。全社で100人いれば、週に50時間もの時間がこうした基本的な問い合わせ対応に費やされている計算になります。

次に、情報セキュリティリスクの増大も深刻です。ITの基礎知識が不足していると、どのような行動がセキュリティリスクにつながるのか判断できません。不審なメールの添付ファイルを開いてしまう、社外に持ち出してはいけないデータをクラウドストレージに保存してしまう。こうした行動は、知識不足から生まれる無自覚なリスクです。

そして最も深刻なのが、デジタル変革への参画機会の喪失です。DXやクラウド化といった議論の場で、IT部門と非IT部門の間に認識のギャップがあると、建設的な対話が成立しません。現場のニーズを持っているのは非IT部門なのに、ITの基礎知識がないために自分の意見を述べられない。結果として、現場の実態に即さないシステムが導入され、誰も使わない失敗プロジェクトを生み出してしまうのです。

まず押さえるべき「ITの基礎知識」とは何か

では、社員全員が身につけるべき「ITの基礎知識」とは、具体的にどのようなものでしょうか。

ファイルとフォルダの概念を理解する

「フォルダ」という概念を正しく理解していない社員は少なくありません。デスクトップにすべてのファイルを保存している、ファイル名に「最終版」といった言葉を延々と追記している、といった状況は、フォルダによる階層的な整理方法を知らないことから生じています。

また、ローカル保存とクラウド保存の違い、自分のPC内に保存されているのか、サーバー上に保存されているのかを理解することも重要です。これが分からないと、「家のPCからアクセスできない」「PCが壊れたらデータが消えた」といったトラブルの原因になります。

ネットワークとクラウドの基本を知る

「Wi-Fiが繋がらない」と言われたとき、それがインターネット接続の問題なのか、社内ネットワークへの接続の問題なのかを切り分けられるかどうか。この判断ができるだけで、トラブル対応の速度は格段に上がります。

クラウドサービスは、インターネットを経由して、遠隔地にあるサーバー上のデータやアプリケーションを利用する仕組みです。この基本を理解すれば、「クラウドに移行する」という言葉の意味も具体的にイメージできるようになります。

情報セキュリティの基本原則を身につける

情報セキュリティは、もはやIT部門だけの責任ではありません。最も基本的なのは、パスワード管理です。推測されやすい単純なパスワードを使わない、複数のサービスで使い回さない。これだけでも多くのリスクを回避できます。

さらに、データの取り扱いに関する基本ルールも欠かせません。個人情報や機密情報がどのようなデータを指すのか、それらをどのように保存・共有・廃棄すべきなのか。こうした知識がなければ、善意の行動が情報漏洩につながるリスクがあります。

組織としてITリテラシーを底上げする3つのアプローチ

個人のスキルアップに任せるだけでは、組織全体のITリテラシー向上は実現しません。人事担当者として、戦略的にアプローチする必要があります。

1.階層別・役割別の研修設計

すべての社員に同じ内容の研修を実施しても、効果は限定的です。重要なのは、受講者の現在のレベルと業務内容に合わせた研修設計です。新入社員にはPCの基本操作から、中堅社員には業務効率化のためのツール活用法を、管理職にはDXやクラウド化といった経営課題を理解できる内容が適しています。

2.IT部門と人事部門の連携体制づくり

ITリテラシー向上施策は、人事部門だけでも、IT部門だけでも成功しません。IT部門は技術的な知識と現場での問い合わせ実態を把握しており、人事部門は育成体系や研修運営のノウハウを持っています。両者の緊密な連携により、実態に即した効果的な研修プログラムを設計できます。

3.学び続ける文化の醸成

一度研修を実施すれば終わり、ではありません。重要なのは、社員が自発的に学び続ける文化を組織に根付かせることです。社内ポータルに「今週のITミニ知識」を掲載する、ランチタイムに任意参加の勉強会を開催する、社員同士が教え合える仕組みを作る。こうした小さな取り組みの積み重ねが、学習習慣の定着につながります。

ITリテラシー向上が、組織の未来を切り拓く

ITリテラシーの底上げは、単なるスキル研修ではありません。それは、すべての社員がデジタル時代の変化に対応し、組織の成長に貢献できる土台を作る取り組みです。フォルダの概念を理解し、クラウドの仕組みを知り、セキュリティの重要性を認識する。こうした基礎があって初めて、社員はDXやクラウド化といった議論に参加し、自分の業務をどう変えていけばよいかを主体的に考えられるようになります。

まずは自組織の現状を把握することから始めてみてください。どのような問い合わせが多いのか、どの部署でつまずきが多いのか。

そこから見えてくる課題が、最適な施策を設計するヒントになります。

いまさら聞けないITリテラシー研修

本研修では、「いまさらこんなことを同僚には聞きづらい」「分かった気になっているが、実はよく理解できていない」と、ひそかに感じている方が少なくないパソコン操作の基本、クリップボードの活用法、ネットワークの構成などをかいつまんでお伝えします。

パソコンの基本操作・情報セキュリティなどビジネスパーソンとして必要最低限のITリテラシーを習得いただきます。

よくあるお悩み・ニーズ

  • パソコンを使う業務から離れていたため、基本的な操作方法がわからない
  • 社内ネットワークとローカルに保存してあるファイルへのアクセス方法といった内容について、仕組みから学びたい
  • OJTの一環として、ITリテラシーを教えるための基礎知識が知りたい

本研修の目標

  • ITリテラシーの基礎を学び、業務に活用できるようになる
  • パソコンやネットワークを利用する際の用語が理解できる
  • 業務の上で必要なセキュリティ対策を意識し、実践できる

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