「教育体系の見直し」で人材育成を加速させる~人材要件の整理から始める戦略的アプローチ
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人材育成において「教育体系の整備」は、企業の成長を支える重要な取り組みです。
しかし、実際に教育体系を見直そうとすると、「何から始めればいいのか分からない」「どんな要件を定めればいいのか」と悩む担当者も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、教育体系の構築において最も重要な「人材要件の整理」から始める方法を中心に、具体的な進め方や注意点、そして教育体系がもたらすメリットについてご紹介します。
教育体系の出発点は「人材要件」の整理
教育体系の見直しにおいて、最も重要になるのは、人材要件の設定です。
人材要件とは
人材要件とは、経営戦略や事業戦略などからそれぞれの部署・ポジションごとの社員のあるべき姿を算出し、「どの段階でどのような能力が必要か」を定義したものです。あるべき姿と現状とのギャップを確認しながら、それを埋めるための施策を考えることが、効果的な教育のためには必要となります。
等級ごとの役割を具体化する
多くの企業では「等級制度」として、等級(グレード)ごとに求められる役割・行動(等級要件)が定められています。これは、採用・教育・評価など、すべての人事・教育の根幹になるものです。
この等級要件を因数分解して、その等級の役割を実現するために必要なマインド、スキルを具体化していきます。係長級の具体例が以下となります。
(例)「係長級」の等級役割定義
「チーム内の課題を特定し、現状・原因分析を自ら行いながら、効果的な解決策を導き出し、チームメンバーを巻き込んで課題解決できる」
- 必要なマインド:当事者意識
- 必要なスキル:課題解決力(問題発見、分析力)、巻き込み力
アンケートとヒアリングで人材要件を強化
さらに人材要件を強化するための方法として、ボトムアップとトップダウンの両方のアプローチがあります。
全社員アンケートで現場の声を吸い上げる
社員全体からアンケートを取り、現場の声を反映させながら要件を作り上げる方法です。オリジナル性の高い教育体系が構築できますが、特に管理職以上の要件は最終的には各社で似通ってくる傾向があります。
| 設問項目 | 設問 | |
|---|---|---|
| 1 | 氏名 | あなたの氏名を教えてください |
| 2 | 部署 | あなたの部署を教えてください |
| 3 | 等級 | あなたの現在の等級を教えてください |
| 4 | 現在の担当業務 | あなたの現在の担当業務を教えてください |
| 5 | 業務を行うために必要な知識・技術 | (例)マーケティング関係の知識(用語、フレームなど)、広告宣伝に関する各種規約等の知識 |
| 6 | 部署内で必要な資格 | (例)マーケティング検定、Adobe認定プロフェッショナル、SNSマネージャー |
| 7 | 自分の階層で求められる役割・行動 | (例)部下・後輩のスキルや知識、仕事の状況などを把握し、必要な指導・フォローを行う |
| 8 | 自分の1つ上の階層で求められる役割・行動(自分より1つ上のレベル) | (例)短期目標のみに囚われず、中長期的な目標を立てる。/目標の実現に向けてマネジメントを行う |
| 9 | 自分の1つ下の階層で求められる役割・行動(自分より1つ下のレベル) | (例)自身に課された業務を責任感を持ってやり遂げる。/上司・先輩に対して必要なホウレンソウを過不足なく行う |
トップへのヒアリングでビジョンと紐づける
トップ・経営層へのインタビューを通じて、企業のビジョンや戦略に基づいた「あるべき姿」を設定する方法です。企業の方向性と育成方針を一致させることができます。例えば、「部長には経営者視点を持ってほしい」といった絞り込んだメッセージを要件として設定することで、「育成のコンセプト」がより明確になります。
より良い人材要件を設定するために
要件を絞り込むことの重要性
人材要件を多く作りすぎると、かえってズレが生じやすくなります。理想像を絞り込んで設定することで、教育体系の軸がぶれず、効果的な育成が可能になります。
外部専門家の活用
近年は「役割等級制度」のように、「人」よりも「業務」や「役割」を定義する方向性が重視されています。「○○部の部長はどのような役割を果たすべきか」といった役割を明確に定め、そこに人を配置する考え方です。
このような制度設定においては、自社だけでの構築が難しい場合も多くあります。外部の専門家を活用することで、より精度の高い体系が構築できます。
まとめ:教育体系の整備は、企業の成長を支える基盤
教育体系の整備は、企業の成長を支える基盤であり、その出発点となるのが「人材要件の整理」です。経営戦略に基づいた「あるべき姿」を明確にし、等級ごとの役割や必要なスキルを具体化することで、教育の方向性が定まります。
さらに、全社員アンケートによるボトムアップの視点と、経営層ヒアリングによるトップダウンの視点を組み合わせることで、現場と経営の両方に根ざした実効性の高い教育体系が構築できます。人材要件を軸にした教育体系の見直しは、社員一人ひとりの成長を促し、組織全体のパフォーマンス向上につながる重要な取り組みです。
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