インソース総合研究所

VRIO分析とは?強者が衰退する時代に「持続的な競争優位」を築く方法【SWOT分析との違いも解説】

企業の持つ強み・優位性は、簡単に失われていく

ビジネスの世界では、かつて圧倒的な地位を築いた企業が、わずか数年でその優位を失うことがあります。

例えば、ある音楽プレーヤーは一時代を築きましたが、デジタル化やスマートフォンの普及といった技術革新に対応しきれず、競合に主導権を奪われました。また、国産の液晶テレビで世界市場をリードしていた企業も、製品のコモディティ化や価格競争の激化により、海外のメーカーにシェアを奪われています。これらは「技術革新への対応力」が持続的な競争優位を左右する重要な要素であることを示しています。

一方で、技術や製品に強みがあったとしても、不祥事によって信頼を失い、一気に経営危機に陥るケースもあります。食品業界や自動車関連部品の分野では、過去に品質問題や情報偽装が発覚し、社会的信用を失った事例がありました。これは「組織として信頼を維持する仕組み(ガバナンス)」がなければ、いかに強みがあっても持続的な優位性は保てないことを物語っています。

このように、今現在どれほどの強みを持っていたとしても、「技術や市場の変化」「信頼の喪失」などをきっかけに、その優位性は簡単に崩れ去ってしまうのです。

VRIOフレームワークとは?~自社の価値が持続的な優位性を持っているかを評価する

VRIOとは、企業の強みが持続的な競争優位になりうるかを評価するフレームワークです。

  • Value(価値):顧客にとって明確な価値を生んでいるか
  • Rarity(希少性):他社にはない独自性があるか
  • Imitability(模倣困難性):模倣するのにコストや時間がかかるか
  • Organization(組織活用):それを活かす体制や仕組みがあるか

この4つの観点でふるいにかけることで、単なる「強み」と「持続的な競争優位」を区別できます。これは、投資の世界で「モート(Moat=濠)」と呼ばれる考え方と通じるものです。モートが深く広いほど競合は攻め込めず、企業は長期にわたって優位を維持できます。VRIOは、そのモートの強さを測るレンズとも言えるでしょう。

SWOT分析は強みと弱みの現状把握、VRIO分析は価値の持続性評価

SWOT分析とVRIO分析の比較表

項目 SWOT分析 VRIO分析
目的 外部環境と内部資源を網羅的に整理 強みが持続的競争優位(モート)になるかを評価
メリット ・全体を俯瞰できる
・現状把握の第一歩に有効
・持続性を判定できる
・差別化要因を明確化できる
デメリット ・時間軸や模倣困難性は評価できない
・「棚卸し」で終わりやすい
・主観に依存しやすい
・外部環境変化は直接反映できない
活用方法 強み・弱みの「棚卸し」に有効 SWOTで抽出した強みをさらに精査するのに有効

SWOTとVRIOを組み合わせて考える

両者は対立するのではなく、補完関係にあります。

SWOT分析で、「強みの棚卸し」を行う。

VRIO分析で、その強みが「持続的競争優位=モート」になり得るかを評価する。

例えば、技術力はSWOT上「強み」と見えますが、VRIOで見ると模倣が容易で持続性は低く、モートとしては浅いと判断されます。

一方、ブランド力は模倣困難で組織的にも活かせるため、深い堀を築き、持続的な競争優位となり得ます。

競争優位の持続性は、事業戦略にも全社戦略にも活かされる

競争優位の持続性を見極める視点は、単に一つの事業領域にとどまらず、全社的な戦略判断にも直結します。

事業戦略への活用
各事業部門レベルでは、自社が持つ強みをVRIOで精査することで、「模倣されやすい一時的優位」ではなく「持続的に差別化できる優位」に資源を集中できます。結果として、営業戦略・製品開発・ブランド構築など具体的施策に落とし込みやすくなります。

全社戦略への活用
どの事業に経営資源を集中すべきか、あるいは撤退すべきかを判断する際に、各事業の「モートの深さ」を比較することは極めて有効です。例えば、多角化戦略やM&Aの意思決定において、「その事業は持続的競争優位を築けるか」を問うことが、長期的な企業価値向上につながります。

つまり、VRIOで測られる「モートの強さ」は、現場レベルの事業戦略から、全社レベルのポートフォリオ戦略まで、一貫して役立つ視点なのです。

VRIOの理論を広めた、ジェイ・B・バーニー『企業戦略論』から競争戦略を学ぶ

VRIOフレームワークを提唱したジェイ・B・バーニーの著作『企業戦略論(Gaining and Sustaining Competitive Advantage)』は、競争優位の持続性を体系的に整理した名著です。この書籍を手がかりに、現代の企業に求められる戦略経営を1から学べるのが、インソースの【名著から学ぶ】シリーズ研修です。

■基本編
【名著から学ぶ】経営戦略研修1~戦略経営プロセスと環境分析

■事業戦略編(2テーマに分けて実施)
【名著から学ぶ】経営戦略研修2~競争優位性を追求する差別化戦略とコスト戦略
【名著から学ぶ】経営戦略研修3~不確実性の価値を取り込んだ戦略選択と経営判断

■全社戦略編(2テーマに分けて実施)
【名著から学ぶ】経営戦略研修4~経営多角化や垂直統合による組織の事業拡大
【名著から学ぶ】経営戦略研修5~戦略を推進する組織デザインと提携・M&A戦略

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