待っていた自然の涼風が、やっと朝夕の窓に届くようになった。かなり前から半袖は通年出しているが、長期気象予報によると１１月まで高温傾向が続き、その後急速に寒くなるらしい。二季の国として、これが常態になるのだろうか。秋生まれには、秋の不在が少し寂しい。

ヒトが複数集まれば、個体の得手不得手・向き不向きが現れ、自然に役割が生まれる。集団になり内外の課題対応が必要になると、意思決定の順ができて階層が生まれ管理が必要になる。古代から続くシステムだが、組織の最小単位は単身でも家族でも一つの生活単位である所帯から始まる。長く続いた家庭内の役割分担が崩れ、今は誰もが自律して自己も所帯も管理する時代になった。だが一部にはプライベートな時間になると未だに家父長制に固執して専制君主に戻る人もあり、未だに男性が育休をとると侮辱的な不利益を受ける組織も多くある。そんな例を聞くと自身の管理も改善もせず、メンバーの人間性も尊重できなくて、どうして組織の管理ができるだろうか、と思ってしまう。

■自分事

管理職の使命は、労働現場においてメンバーを指揮監督し、組織の運営・成長に寄与することだが、必要なスキルも責任範囲も階層によって異なる。それぞれ経験や成果・人望などから選出されることが多いが、必ずしも優劣による順位や選別とは限らない。多様化する雇用状況の中、苦労の多い管理職になりたくない人もいる。しかし、管理職がもつべき心構え・認識は管理職候補生または管理職だけのものではない。役職名のない一般層全てのビジネスパーソンの成長にとっても、必要な勉強・考え方として受けとめた方がいいと思う。経営の構造・管理のポイント・人材の流れや制度など組織の全体像を客観視することで、自分が身を置く世界を自分事として整理ができる。

現実に、管理職になって間もない人もベテラン管理職も似た悩みをもっていることが多い。
組織運営に関して、他のリーダーと相談して方針を決めているが本当にこれでいいのか迷う。人員に変化が出ると業務を回すのが精いっぱいで余力がなくなってしまうなど。
周囲との関係では、言いにくいことを言う時や、何かあって代表として対応する時、非常に精神的に疲れる。担当以外の業務に無関心な部下のモチベーションの上げ方や、業務を頼むと断るなど個性も状況も異なる部下との関わり方が難しいなど。
業務量や時間についても、自分の業務のほかスタッフの指導育成や全体の業務進捗などマルチタスクになってしまい、自身のスキルアップの時間がなくなるなど。

■安心感

多くのビジネスパーソンは、管理職の実務的なスキルやルールなど所属組織の特性に応じた研修を積み学んでいるだろう。が、それでも悩みが絶えないのは多分、心的ストレスが非常なのかも知れない。新任の管理職は今までと違う立場に立ち、新たな部下・実務・責任を前にプレッシャーが増しているかも知れない。ベテラン管理職も更新され続ける技術や情報、変化する価値観などを取りこぼさないように気が休まらないかも知れない。
必要以上の責任感や自負心から、部下に任せることができずに自分で何でもやってしまう人もいる。自他の考え方のズレから、上下左右の板挟み状態で情報共有が疎かになる場合もある。ナカナカ簡単ではない立場だと察する。

でも、管理職はビジネス上の経験や貢献度が高くても、突然生まれ変わったように人間が上等になる訳ではない。大きい眼で見れば同じ仕事仲間・先輩ではあるが、今までとは違う立場で動く役割を負っているだけではないか。親の背中を見て子は育つ、という。同じように、何でもできそうな立派な上司がカリカリ気を張り詰めていれば、部下はのびのび仕事ができない。管理職がすべきことは多いだろうが、まずは何が起きても慌てず騒がない安定感を周囲に表すことが大事ではないか。と、多くの心もとない部下は願っていると思う。