銀子の一筆

思ったこと言える?

子どもの日が制定されて、男女別の節句を祝う習慣が少なくなったせいか、住宅事情のせいか、雛壇を飾る家も少なくなった。
日本の原風景が姿を消すのは寂しく、個人的に簡単な歳時を守っている。桃と菜の花を飾って、ちらし寿司と蛤の吸い物で在宅勤務の昼食にしよう。

◆気持ちもディスタンス

季節が変わっても社会変容は続き、リモートワークに関してはニューノーマルになりつつある。今年の新卒者も社会生活はリモートで始まるのだろうか。

テレワークの功罪については度々話題になるが、人材確保・経費削減・労働者のワークライフバランスの向上など、総じてメリットが大きいとされているようだ。
デメリットとしては組織の管理上の課題、コミュニケーションの課題がよく取り上げられる。 過剰にウェットな人間関係に縛られないことは風通しがいいともいえるが、コミュニケーションが希薄になりがちでは組織の結束としては弱くなるのだろう。

◆心理的安全性のある環境 

社員が辞めたくない企業としての要件、または辞めたい原因として「心理的安全性」がここ最近、話題にあがる。

心理的安全性は、「~と思われるんじゃないだろうか、などと他人の反応に怯えたり、恥ずかしいと思うことなく、いつでもだれでも自然な自分のままで意見を言える状況」をいう。 こうした環境を作れば、生活の質が向上し、企業の生産性が高まり、経済全体にも好影響が及ぶとされる。

心理的安全性が高ければ、ビジネスだけでなく、学校でも家庭でも、複数の人間が集まるところでは、必ず良い結果を生むだろう。成功するチームの構築に最も重要なものとして認識されている。

心理的安全性の対極にあるのがモラルハラスメント(モラハラ)ではないか。 モラルハラスメントは「相手に精神的なダメージを与えることを目的とした加害行為」だが、自分が正しいと思い込んでいる加害者本人に自覚がなく、 被害者自身も「自分が悪いのではないか」と思い込むことが多いため表面化しにくい、とされる。
モラハラな発言・行動は良くないが、仲良しチームが必ずしも良い結果を生み出すかというと、そうでもないのだが。

◆異論反論は新しいヒント  

私はごく若い頃からどうも集団生活が苦手だった。

一応ルールは守るが、「精神一到」とか「根性」「一丸となって」などは、違和感のある考え方だった。
広告の仕事が長かったが、仕事以外の、立場による忖度だの空気を読むだの、 面倒な人間関係に巻き込まれないフリーランスでよかったと思っていた。

それでも面倒なことは起こる。
昔、取引先のミーティングで「男女平等ですから忌憚のないご意見をお聞かせください」と言われて、忌憚のない意見をいったら、呼ばれなくなったことがあった。
素朴な疑問や率直な意見、異論や反論などを口にして、孤立した経験が重なると、集団生活自体が疎ましく思えてくる。

取引先には、まだ古い上下関係に固執するところが多かったが、救いだったのは、多くの制作者と心理的安全性の高い交流があったことだった。

当時、広告業界では日常的にブレーンストーミングが行われていて、基本的に心理的安全性に合致した考え方で進行していたのだ。

一般企業内の会話より、かなり自由度が高かったし、上下の関係も濃くなかった。
上手く運ばないブレーンストーミングもあったが、多くは先輩の誰かリードできる人がいて、皆の心理的な壁を低くしていった。 「ここでは何でも言っていいんだ」と、みんなが同じように意識をもって参加するときに、発想力が上がって制作意欲も増した。

◆自分の場所を育てよう  

心理的安全性は企業が一方的に命令しても、個人が喧嘩腰で望んでもスムーズではない。 役職がどうであれ、フラットな当事者意識が共有されていることが大事だと思う。

しかし、人の輪に飛び込めない人もいる。
特に上下関係があると、さまざまな心理的な懸念が先に立つだろうし、話すのが苦手な人もいる。 ましてや、入社したての新人が、昨今のリモートからの出発では、なかなか心理的な安全性を得ることは難しいのかも知れない。

もちろん上に立つ人の意識が高ければいいが、必ずしも職場のリーダーだけが心理的な安全性を高める役割を担う訳ではないと思う。 同僚や先輩後輩にかける言葉や、態度次第で職場の雰囲気を変えることができるのではないか。

リモートでも対面でも、上下を外した仕事仲間として尊重する気持ちが生まれれば、少しずつ「ここが自分の場所」になって、怖がらずに物が言える活発な交流が生まれると思う。

2021年 3月 10日 (水) 銀子

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