心理的安全性とは~1人ひとりが自然体でいられる環境をつくる4つの処方箋

心理的安全性とは
~1人ひとりが自然体でいられる環境をつくる4つの処方箋

1999年エドモンドソンにより提唱された「心理的安全性」という指標があります。グーグル社の4年に及ぶ大規模な調査の結果、"心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要である"と発表され、日本でも注目されるようになりました。

心理的安全性とは、「メンバー1人ひとりがチームに対して気兼ねなく発言できる、自然体でいられる環境・雰囲気」のことを指します。

では、心理的安全性を高め、メンバーが最も良いパフォーマンスを上げるために、具体的にはどう働きかければよいのでしょうか。本日は、「安全を脅かされると感じる職場でのストレス解消」に対し、効果的な4つの処方箋についてご提案します。

職場の心理的安全性を高める4つの処方箋
1. コミュニケーションが円滑な明るい職場にする
2. ハラスメントを許さない環境・風土を作る
3. 失敗が許容されチャレンジできる居場所を作る
4. チームの方針、メンバーへの役割期待を明確にする

それでは、それぞれの処方箋ごとに、有効なストレス事例と具体的な取り組みを見ていきましょう。

1. コミュニケーションが円滑な明るい職場にする

<こんなストレスに効く!>
a. チームに連帯感がなく居心地が悪い
「チーム内に、腹を割って話す、意見を言い合う風土がない」
「異動をしてきたが、メンバー間の会話が少なく、居心地が悪い」

b. 上司に安心して相談できない
「何か相談してもすぐに否定されるので話す気がなくなる」
「もっと整理して、順を追って聞いてくれないと教えようがない。と叱責された」

c. メンバーへの相談のしにくさ・頼れなさ
「テレワークにしたいと言いだせない。同僚にわがままだと思われることが怖い」
「育休明けに、子どもがすぐに熱を出し、休暇や早退をもらうことが多くなった。いつも業務を代行してくれる方に申し訳ない」

こういった居心地の悪さから生じるストレスを解消するには、お互いに声をかけやすい雰囲気を作ることです。

それには、まず管理職から率先してコミュニケーションを取りましょう。上司が常に忙しそうであったり、話しかけにくい雰囲気を発していては職場全体のムードにも影響します。

とはいえ、長い期間の重い空気を簡単に払しょくすることは大変です。「チームワーク」をテーマにした楽しいゲーム形式の外部研修などをチーム全員で受講し、そうした非日常的な空間の中での対話・交流によって空気・雰囲気を変えるよう試みるということも効果的な一手です。

コミュニケーションが円滑な明るい職場にするポイント

〇管理職自ら気持ちの良いあいさつをする

〇定期的なチームミーティングで会話をする機会を設ける

〇時間がある時は自ら声がけし、気持ちよく部下の相談を受ける

〇チーム全員での外部研修の受講
会話が増えることで、部下は気兼ねなく質問や相談ができ、指示待ち時間のムダを減らすことができます。コミュニケーションを円滑にするにはアサーティブな話し方を心がけることもポイントです。

アサーティブ(自他尊重)な話し方とは

話の途中で否定や反論をせず最後まで話を聴くだけで、相手は安心を感じます。アサーティブな話し方の一例として、「I(アイ)メッセージ」があります。自分を主語にすると、相手を傷つけるような言い方を避けることができます。

(悪い例)「あなたは、もっと協力すべきです」
→Youメッセージ=協力しないあなたが悪い

(良い例)「力を貸してくれると、(私は)助かるよ」
→Iメッセージ=「私は~と感じる」、「私は~だと思う」、「私は~したい」

2. ハラスメントを許さない環境・風土を作る

<こんなストレスに効く!>
d. セクハラ
「異性の先輩が打合せに他のメンバーを入れない。断ることもできず、恐怖を感じる」

e. パワハラ
「上司が引出しを大きな音を立てて閉めたり、パソコンを大きな音でタイピングする。何か失敗したかな?さっきの報告で時間をとったから怒ってる? と心配になる」

相手にストレスを与えないために気をつける4つのポイント

〇性に対する価値観や考え方は男女間・世代間で個人差があると認識する

〇雇用形態の違いや職位の上下関係でNoと言えない人がいると知る
※派遣/非正規雇用/取引先に対しても注意が必要です。

〇セクハラを見かけたらすぐに対処する
※行為者に対して止めるよう注意を促しましょう。相談を受けたら、相手の立場で考え、必要な場合には相談窓口への相談を勧めます。問題を軽くとらえることは、重ねて被害者を傷つけることになります。

〇パワハラと部下指導の線引きを明確にする
※部下指導では、人格の否定をしない、ミスがあっても人前で叱らないなどの配慮が必要です。業務命令の内容や態度は合理的に行いましょう。

ハラスメントに対するその他の有効な防止策については、以下をご参照ください。

【ラインナップ】ハラスメント防止研修

【読み物】ハラスメント対策・防止の3つの視点~職場の事例から考える

3. 失敗が許容されチャレンジできる居場所を作る

<こんなストレスに効く!>
f. 知識、スキルの不足を他人に指摘されるのが不安
「こんなこともできないのか。と思われてしまう不安から、ミスを報告せず隠してしまう」
「あの人のせいで、仕事が進まない。と思われてしまう不安から、相談したいことがあっても言い出せない」
「調べてから質問しようと思うが時間ばかりかかる」

g. 失敗が許されずチャレンジできない
「安請け合いしてしまい納期内に納まらず、お客さまにもチームメイトにも迷惑をかけた。それ以来、失敗するのが怖くて思い切った提案ができない」
「ミスしてもフォローしてくれる人がおらず、無理してチャレンジして失敗したら損だと感じてしまっている」

h. 提案が受け入れられる風土がない
「変化を嫌がる人が多く、とりあえず今のままで問題ない。として保留される」
「上司に勇気をもって提案した案件が「預かっておくよ」と言ったきり反応がない」

i. 人と違うことをすると軋轢が生じる
「仕事をもっとやりたいが、働き方改革という雰囲気の中で言いにくい」
「工夫して考えることが好きだが、決まったやり方をしないと注意を受け、自分の強みを活かせないと感じている」
「新しいことをやると叩かれるので人の動きを見てから行動するようになった」

このあたりのストレス解消法は、他人の評価を気にして行動できない不安を取り除いてあげることにあります。未熟さや失敗を受け入れ、本人の強みを伸ばしてあげることが上司の役割です。

失敗が許容されチャレンジできる居場所を作る具体的な方法

〇部下との1対1の対話
何に対して不安を感じるかはメンバーのバックボーンによって違います。多様化する部下と個々にひざを突き合わせ、仕事や評価に関係ない会話(面談)をする時間を持ちましょう。1対1の対話を持つメリットは、「この人は話を聴いてくれる/不安や悩みを解決しようと考えてくれる」という信頼関係を築けることです。また、定期的に話すことでメンタルの変化に気づきやすくなります。

〇メンター制度を取り入れる
「気軽に何でも相談できる相手」であるメンターを設定することで、社内での「安心できる居場所」をつくり出すことができます。離職防止やメンタル悪化防止の効果があります。

〇ほめる・フィードバックをまめにする
こまめなフィードバックや感謝の気持ちでほめられることで意欲が高まり、何をしたら(試案買ったら)よいのかといった判断軸も育ち、安心感も生じます。大げさでない声がけが効果的です。

(良い例)
「ありがとう。いつも仕事が早く助かるよ」
「〇〇さんだからこその丁寧さですね」
「いつもそこに気づいてくれるのは、〇〇さんの長所だね」

〇言動の理由を伝える
メールのCCから外す、ミーティングメンバーから外す等、業務推進のうえで合理的な判断として行った行動であっても、部下からすると疎外感や不安を感じるものです。なぜそのように対処をしたのか、理由を都度伝えることで、部下も安心して働くことができます。

このように、部下が1人で悩んでいることを救い上げ、支援していくことが、モチベーション向上や、仕事のやりがいにつながります。

4. チームへの方針、メンバーへの役割期待を明確にする

<こんなストレスに効く!>
j. チームの方針が不明で仕事がしにくい
「とにかく自分の頭で考えてやってみろ! と精神論しか言われず、どのような方針で仕事をしてよいかわからず、働きにくい」
「この前始まったばかりのプロジェクトにやっと慣れたところでそのプロジェクトが当面はやらなくて良いことになった。理由の説明もなく、聞ける雰囲気でもない」

k. 将来が見通せない
「上司が評価の際も面談を行ってくれない。どのように努力すればよいかわからない。成長実感がなく、自分の今後のキャリアが心配になる」
「会社の売り上げが下がっていることで叱責しかされない。将来が不安」

こういった先が見えないことによるストレスを取り除くには、上司が部下の見通しを明るくしてあげることです。具体的には、管理職が、部署内に「ビジョン」を示すことや、仕事の任せ方を工夫することです。

ここでいうビジョンとは、まず組織の全体目標に基づいて管理職が持たなければならない「あるべき姿・方向性」です。上司が部下にビジョンを示せば、部下はビジョン実現のために何をしなければならないか(何をしてはならないか)が判断できるようになり、チームのベクトルが揃い、より強力なチームワークを発揮できるようになります。

指示・指導する際の伝え方

指示・指導する際には、「なんのためにやるのか」「なぜ自分に頼まれているのか」といった根拠を、部下が納得するまで説明をしましょう。部下は、自身がどのように成長し活躍できるかが想定できることでモチベーションが上がります。 業務の原理原則としての「ビジョン」を示す組織の全体目標を踏まえ、長期的展望が含まれていることがポイントです。

(悪い例)
「いいからとにかくやってくれ、急ぎなんだよ」
「理由はどうだっていいだろ。まずは行動あるのみだよ」
「やってみないと分からないことだってあるだろ。走りながら考えろ」

(良い例)
「△△をすることで、住民にとっては××という点でメリットがあり、当組織の価値向上につながるんだ。少し負担は増えるかもしれないが、やってみよう」
「今のところ〇〇という成果をあげられると考えているが、正直やってみないと分からない部分もあるんだ。随時、軌道修正は発生するかもしれないけど、まずは〇〇を目指してとにかくやってみよう」

この処方箋は、メンバーの主体性を育てる意味でも効果があります。
チームの指針が明確であれば、ゴール達成のための発言や提案が増え、建設的な会議ができる等の良い影響があります。組織のベクトルが揃い、より強力な力を発揮できるようになります。

まとめ

職場でのストレス要因は、仕事・人間関係などによる葛藤、緊張、不安、恐怖などから生じます。ストレスのせいで最もよいパフォーマンスを上げられないとすれば、上司が取り除いてあげることが望まれます。「心理的安全性を高める」というと難しく聞こえますが、部下1人ひとりの不安にマネージャーが寄り添い、少しずつ解消していくことにつきます。話しやすく、相談しやすい信頼関係を築くには、「尊」「理」「情」のコミュニケーションが有効です。

「尊」:相手を尊重したコミュニケーション
「理」:根拠に基づいた指示・指導
「情」:こまめなフィードバックや感謝の気持ち

「かわいそうだから配慮してあげる」「課題があるから平等にしてあげる」ではなく、相手を尊重し、指導・指示の根拠を明確にして、情を持って接することで信頼関係が育ちます。こういった積み重ねが、やがてチーム全体に広がり、安心してチャレンジできる環境を作っていきます。

働きやすい環境のチーム対し、貢献しようという意識が芽生え、結果として1人ひとりのパフォーマンスをあげ、チームとしての成果につながっていくのではないでしょうか。

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