インソース デジタルソリューション事業部

会社で起きた事故を、二度と繰り返さないために~AIが再発防止の教材をつくる「AI-OJT」開発者インタビュー

会社で起きた事故を、二度と繰り返さないために~AIが再発防止の教材をつくる「AI-OJT」開発者インタビュー

現場で積み上がる事故報告書やヒヤリハット。それは、事故という代償を払って得た貴重な学びの記録です。けれど多くの現場では、活かしきれないまま眠っています。

教育会社インソースが開発した「AI-OJT」は、3つのAIエージェント(役割を持って自動で働くAI)が、報告書を約5分で「誰にでも解ける再発防止の教材」に変え、日々のヒヤリハットから事故を未然に防ぐ取り組みまで支えます。

その仕組みと狙いを、開発担当者とCS(カスタマーサクセス)担当への取材からご紹介します。

「書き方がバラバラの報告書」を3つのAIで整える

――報告書をアップロードしてから教材が完成するまで、3つのAIエージェントは内部でどのように役割を分担しているのでしょうか。

(開発者)事故報告書は、書く人によって形式も詳しさもまるで違い、決まった書式がない会社も少なくありません。そこでAI-OJTは、三つのAIで役割を分けます。

  • 「読むAI」は、報告書を誰が読んでも同じ理解にたどり着ける状態へ整え、図があればその意味も言葉で補い、人の目でも追える形に起こします。
  • 「学びを見つけるAI」が、事故の起点や、どの部署の誰が何を学ぶべきか、再発を防ぐ道筋までを読み解きます。
  • 「教材に仕上げるAI」は、専門用語や難解な言い回しの残る素材を、誰にでも解ける教材へと落とし込みます。

読み、学びを取り出し、教材に仕上げるという三段の分業があるからこそ、書き手任せでばらつきがちだった報告書が、誰の学びにもなる均質な教材へと姿を変えるのです。

積み上がるだけで活かされない報告書を変える

――事故報告書やヒヤリハットが、現場で十分に活かされていません。その背景には、どのようなお客様の困りごとがあったのでしょうか。

(CS担当)事故やヒヤリハットの情報は機密性が高く、扱える人も限られ、どう共有すれば現場に届くのかも見えにくい。運用は各社さまざまですが、共通して耳にしたのは、せっかく報告書や分析が積み上がっているのに活用しきれない、という悩みでした。

苦労して集めた学びも、そのまま伝えるだけでは「よそで起きたことを上から言われているだけ」と受け流されてしまいます。共有した気になって終わり、肝心の行動は変わりません。この根深い「もったいなさ」をほどく一手として生まれたのが、AI-OJTでした。

――その課題を、なぜ生成AIによるケーススタディという形で解こうと考えたのでしょうか。

(開発者)理由は二つあります。

一つは、インソースがリスク・コンプライアンス(法令順守)や事故予防の研修を数多く手がけ、毎年、多くの現場の課題に直接触れてきたことです。その蓄積にエンジニアの知見を重ねれば、AIで十分に応えられます。それこそ自分たちにできることだと考えました。

もう一つは、文章を読み解いて分かりやすい教材に組み直す、その作業自体が生成AIの得意分野だったからです。

「それっぽいけど間違っている」AIの誤答をなくす

――一般的な生成AIは無難な答えに流れがちです。その会社ならではのケーススタディを作れるAI-OJTの、ほかにない強みはどこにあるのでしょうか。

(開発者)生成AIは「もっともらしい嘘をつく」と敬遠されがちです。しかし、その原因の多くはAIではなく、渡すデータの側にあります。事故報告書は書式も詳しさもばらばらで、事実と無関係な情報が入り混じります。

そのまま読ませれば答えがぶれて当然です。AI-OJTは報告書を整えてから読み込ませます。だから出力は安定し、人が見落とす論点まで拾い上げます。「嘘をつかせない」ための地道な下ごしらえこそが、他にない強みです。

裏を返せば、データを整えるこの一手間が、「それらしい誤答」と「現場で使える教材」を分ける決定打になっています。

事故から共有まで1か月かかっていたのを翌日配信に

――手間のかかる教材づくりが、約5分でできると伺いました。時間短縮のほかに、現場にはどのような変化が生まれるのでしょうか。

(CS担当)効果は時間短縮だけではありません。まず挙げられるのは、現場へ届くまでのスピードです。AI-OJTは教材を作って終わりでなく、現場の一人ひとりへ配信する基盤(プラットフォーム)として作り込まれているからです。

通常であれば、事故を分析し、何を伝えるかを話し合い、会議を重ね、問題をつくって精査します。現場に共有が回るまでに1か月かかることも珍しくありません。ところがAI-OJTなら、今日上がってきた報告書を、翌日には配信できます。

さらにケーススタディ化は、実際の出来事を誰に見せても差し支えない形へ置き換えることでもあります。だから朝礼でその問題を解いてもらい、あとで種明かしをする使い方もできます。「実はこれ、昨日あったことなんです」。生々しい教訓を、角を立てずに現場へ根づかせられるのです。

「何か違う」としか言えなかった感覚を越えて

――質の高いケーススタディを安定してつくり出すうえで、開発でもっとも苦労したのはどこでしたか。

(開発者)最大の難所は、「良い研修とは何か」をAIに教え込むことでした。その基準は、長年教材を作ってきたインソースの内側にしかありません。試作したケーススタディには、社内の誰もが「何か違う」とは言うものの、どこを直せばよいかは言葉にできずにいました。

その「何か」を握っていたのは、現場で教材を磨いてきた作り手たちの暗黙知です。社内のベテランに話を聞き、どんな目線で組み立てれば受講者の力になるかを引き出し、その視点をいわば「編集長」役のAIとして最終工程に写し取れたことが、品質を安定させる突破口になりました。

「AIは不安定で使えない」という不安を乗り越える

――ハルシネーション(もっともらしい誤り)や、モデルの使い分け。生成AIをサービスに組み込む難しさを、どう乗り越えたのでしょうか。

(開発者)とにかく使い倒すしかありません。日常の調べ物さえあえて生成AIに投げ、自分が使いこなせたら、次は誰が使っても同じ答えにたどり着くよう型を整え、最後に100人が同時に使っても揺らがない形で組み込みます。

この三段構えで、試作の手応えを実務に耐える道具へと引き上げます。

もう一つ欠かせないのが、モデルの見極めです。開発元の一次情報を追い、各社の投資の動きから、中長期に安定して使えるモデルを読みます。この地道な積み重ねが、出力の精度と安定性を支えています。

「AIに渡して本当に大丈夫?」に答える

――事故報告書という機微な情報を預かるサービスです。導入を検討する企業が安心できる、データの守り方を教えてください。

(CS担当)機微な情報を預かる以上、安心は後回しにできません。お客様が必ず確認するのは、データがどこに保管されるのか、入力情報がAIの学習に使われないか、という二点です。

答えは明快です。AI-OJTは、データを国内のクラウド環境に保管します。用いるのは安定した最新のモデルで、入力された情報をAIの再学習に使うことはありません。機微な情報を預かる前提で設計してきたからこそ、安心して託せるサービスに仕上がっています。

一つのミスが大事故に直結する現場に効く

――特に、どのような企業や現場に向いているのでしょうか。

(CS担当)とりわけ力を発揮するのは、一つのミスが重大事故に直結しかねない、リスクの高い現場です。建設や大規模工事、製造がその典型です。

大型クレーンが止まれば、工期の遅れだけで何億円もの損害になりかねません。人為的なミス(ヒューマンエラー)を抑え込むことに日々向き合う現場ほど、価値は際立ちます。

とはいえ活躍の場は、その業種に限りません。保育園でのヒヤリハット共有や、介護施設での小さな備えなど、「教材で学ぶ」ことが効く場面は驚くほど幅広いのです。

小さな危険の芽を、事故が起きる前に摘む

――今後、AI-OJTをどのようなサービスへ育てていきたいですか。

(CS担当)まず見据えるのは、「ヒヤリチャット」の広がりです。ヒヤリハットを誰もが手軽に報告できるこの仕組みは、取り組みの起点を変えます。

本当に効くのは、事が起きる前に手を打つことです。小さな危険の芽を吸い上げ、学び、行動を改める循環が回り続けるほど、事故は着実に減らせるはずだ、と照準を定めています。

(開発者)一方、視線はもっと遠くを見ています。かつては、困っている人がいても、助けるには時間もお金もかかりました。読みにくい報告書に向き合うのは大きな負担です。その重い作業をAIが引き受ければ、結果として救える人が増えます。そこまで見据えています。

現場で一番困っている人を、どれだけ助けられるか。そういうサービスを、作っていきたいですね

発信しても届いている手応えがない、あなたへ

――これから生成AIの導入を考えている読者へ、メッセージをお願いします。

(CS担当)発信しても届いている実感が持てない、という声をよく聞きます。そんな方こそ、一度試してほしいと思います。

報告書もヒヤリハットも、誰かが代償を払って得た情報の塊です。ただの記録として眠らせず、次に働く人を守る教育の資源へ変えたいという思いが込められています。

(開発者)いまを大きな転換点だと捉えています。生成AIは強力な道具ですが、使いこなせる人とそうでない人とで、生産性に大きな差が生まれます。だからこそ、早く使い方を身につけ、社内の誰もが扱えるようにしておくことが、これからの企業の競争力を左右すると考えています。

その第一歩として、まずは気軽に触れてみていただければと思います。トライアルでの利用を通して、実際に使ってみて感じたことや、使いづらいと思った点があれば、ぜひそのままお聞かせください。いただいた声一つひとつが製品改善につながり、AI-OJTをより良いものへと育てていきたいと考えています。

事故報告書やヒヤリハットを、5分で「気づける教材」に。

AI-OJTは、現場の学びを止めないための実践的なプラットフォームです。詳しい機能はサービスページで、実際の使い心地はデモでご確認いただけます。まずはお気軽にご相談ください。

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