学習体験設計(LXP)とは何か~学びを「点」から「線」へ変えるラーニングジャーニーの作り方

「研修を実施しても、現場で行動が変わらない」「受講後しばらくすると、学んだ内容が忘れられてしまう」。人材育成をご担当されている方から、このようなお悩みを多くお聞きします。その原因の多くは、研修の内容そのものよりも、研修が単発の「点」で終わってしまう設計にあります。
本コラムでは、近年注目されている「学習体験設計」やLXP(Learning Experience Platform)の考え方を踏まえ、学習を「線」でつなぐラーニングジャーニーの作り方、学習フェーズに応じた学び方の使い分け、そして学習システムを選ぶ際の視点について、明日から実践できる具体的な手順とともにご紹介します。
研修が「点」で終わると学びが定着しない理由
従来型の企業内教育のやり方には、次のような課題がありました。
学びが積み上がらない
トップの発案などをきっかけに実施されるテーマ別研修や、数年に一度のペースで行われる階層別研修など、散発的に行われる研修では前回の学びと今回の学びがつながらず、知識が断片的なものになりがちです。
「やらされ感」が生まれやすい
受講者の仕事における課題感と研修とがうまく結びつけられないまま参加すると、どうしても受け身の姿勢になり、学習効果が下がりかねません。
タイムリーで個別の学習機会が得にくい
業務で疑問が生じたときや、自分の苦手分野を補いたいときに、すぐに学べる環境が整っていないと、せっかくの学びの機運が冷めてしまいます。
こうした問題は、いずれも研修を「点」で設計しようとするところに、要因があるように思います。
学習を「線」で設計する~ラーニングジャーニーという考え方
学習体験設計とは、研修当日だけでなく、その前後を含めた一連の流れを「学習体験」として捉え、意図的に組み立てる考え方です。具体的には、次の3つのフェーズで設計します。
1.研修前:効果を高めるための事前準備
- 事前アンケートで受講者の現状や課題意識を把握する
- 事前学習で基礎知識をそろえ、当日の時間を演習や対話に充てられるようにする
- 事前課題の負荷は、業務に支障が出ない程度に抑える
2.研修当日:アクティブラーニングに重点を置く
- 知識の説明は最小限にとどめ、グループワークやケーススタディの比重を高める
- 受講者自身の業務を題材にし、学びを「自分ごと」にしてもらう
3.研修後:学びの定着と実務展開を支援する
- 研修後に振り返りのテストやドリルを配信し、知識の定着を確認する
- 「現場でどう活かすか」を問う記述式の設問で、実務への橋渡しを促す
- 一定期間後に再度フォローを行い、行動変容の状況を把握する
学習体験を設計する際は、まず「この研修の結果、受講者に現場でどのような行動をとってほしいか」を一文で書き出すことから始めてみてください。ゴールが明確になれば、研修前後に何を仕掛けるべきかが自然と見えてきます。
学習フェーズで「効率的なインプット」と「能動的な学び」を使い分ける
学習を「線」で設計するうえで大切なのが、学習スタイルの選択です。たとえば「インプット型」と「アクティブラーニング型」を比べても、どちらのほうが優れているというわけではありません。学習者の習熟度やフェーズに合わせて使い分けることが重要です。
初学者は「効率的なインプット」を中心に
基礎知識やルールの習得が必要な段階では、動画教材やeラーニングのように、必要な知識を網羅的かつ一方的に提供してくれる教育手段が効果的です。また、業務に必要な知識レベルのように、学習に基準が設定できる場合には、テストによって習熟度を確認することも有効です。
実務者は「職務と接続した学び」へ
基礎が身についた次の段階では、インプットした知識を実務でどう使うかを考える学習が必要です。実際の業務シーンを想定した記述式の設問やケーススタディに取り組み、判断力を鍛えていきます。
ベテランは「探索・内省型の学び」を
経験を積んだ方には、自らテーマを選んで探究する学びや、これまでの経験を振り返る内省の機会が有効です。また、主体的な学習を促すためには、学ぶテーマ・学び方・難易度に「選択の余地」を与えること、そして進捗を可視化して達成感を感じられるようにすることも効果的です。
学習システムは「管理型」ではなく「支援型」で選ぶ
学習を「線」でつなぐには、システムの活用が欠かせません。ここで押さえておきたいのが、システムを選ぶ際の視点です。従来のLMS(学習管理システム)は、受講状況や修了率を把握する「管理型」の役割が中心でした。一方で、近年注目されているLXPは、学習者一人ひとりに合わせた学びを提供する「支援型」の考え方に立っています。「学習管理」から「学習体験支援」への転換といえます。システム導入をご検討される際は、次の観点で比較してみてください。
学習者への個別フィードバックがあるか
正誤判定だけでなく、回答内容に応じた助言が返ってくる仕組みがあると、学習者は理解が深まるまで繰り返し取り組めます。
学習者が自ら進めたくなる「しかけ」があるか
学習ロードマップや進捗の可視化、ランキングなど、催促しなくても学び続けられる工夫が組み込まれているかを確認しましょう。
管理データを「催促」ではなく「フォロー」に活かせるか
停滞している受講者を早期に把握し、個別に支援できる機能があると、担当者の負担を抑えながら学びを支えられます。
「受講率を管理するためのシステム」から「学びを支えるためのシステム」へ。この視点の切り替えが、研修効果を高める大きなカギとなります。
まずは1つの研修で学習体験を設計してみる
すべての研修を一度に見直す必要はありません。まずは自組織で実施予定の研修を1つ選び、次の5つのステップで再設計してみることをおすすめします。
- 研修のゴール(期待する行動変容)を設定する
- 研修前・当日・研修後のラーニングジャーニーを描く
- 受講者の習熟度を踏まえて最適な学習スタイルを考える
- 研修プログラムを考える
- 研修前後に投げかける設問と、その回答(フィードバック)の返し方を決める
小さく始めて効果を確かめながら、少しずつ他の研修へ広げていくことで、無理なく「学び続ける組織」に近づいていけます。
学習体験設計研修~LXPの発想でラーニングジャーニーを設計する(半日間)
インソースでは、本コラムでご紹介した考え方を実践的に学べる研修と、研修後の学びの定着を支えるサービスをご用意しております。
人事部門で人材育成をご担当の方や研修企画のご担当者さまに向けて、研修を「点」で終わらせず、受講前から受講後までをつなぐ学習体験として設計する方法をお伝えする研修です。習熟度や学習テーマに応じたラーニングジャーニーの作り分け、効果的な設問とフィードバックの設計、主体的な学習を促すしかけについて解説し、最後には自組織の研修を題材に学習体験を再設計する演習に取り組んでいただきます。
よくあるお悩み・ニーズ
- 単発の研修を実施するだけでは効果が乏しいと感じている
- 最近耳にすることが多い「LXP」について知りたい
- 研修効果を高めるための教育施策や学習環境を整備したい
本研修の目標
- 研修の前後に実施する学習やテストなどのしかけについて、有効性を理解する
- LXPを導入することで得られる効果が分かる
- 学習体験を自組織の人材教育に取り入れるための実践的な手順を把握する
セットでおすすめの研修・サービス
伴走型学習支援ツール「AI BOAT(アイボート)」
お手持ちの研修テキストや社内マニュアルのPDFを読み込ませるだけで、AIが学習ロードマップと選択式・記述式の実践ドリルを自動で作成します。
記述回答にはAIがその場で個別にアドバイスを返し、経験値やランキングの仕組みで受講者の自発的な学習を後押しします。管理者さまはダッシュボードで停滞者をすぐに把握でき、育成の成果を数値で確認いただけます。まさに「支援型」で研修後の学びを「線」へとつなぐツールです。現在、30日間の無料トライアルも受け付けております。
【AIと働く】研修担当者レベルアップ研修~整合性・納得感をAIで担保する
研修担当者の役割を認識し、組織のニーズを満たす研修体系構築・プログラム作成・効果測定の手法を学べる1日研修です。スキルマップとプログラムの草案作成を体験するワークでは、研修企画力と生成AI活用力をあわせて鍛えることができるプログラムです。
部下の育て方研修~面談とフィードバックで経験学習サイクルを回す
かつての「教え込むスタイル」から、「部下の力を引き出すスタイル」へと育成指導のスタイルが変わってきている中で、「経験学習モデル」の考え方に則って、面談を通じて効果的な部下育成を進める方法について学んでいただくプログラムです。






