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伝わらない指示・説明には理由がある~グライスの協調の原理に学ぶ、部下が迷わず動ける伝え方

背景とやることをきちんと説明して指示を出し、部下も「わかりました」と返事したはずなのに、後になって現場の動きがズレていることに気づく......。

管理職の方なら、一度はこうした経験があるのではないでしょうか。原因の多くは、話し手が伝えようとしたことと、聞き手が理解したことが別物だった、という点にあります。言語学者ポール・グライスの「協調の原理」を手がかりに、部下やメンバーに確実に伝わる話し方のポイントについてみてみましょう。

「わかりました」という返事だけでは理解したことにならない

部下が「わかりました」と答えると、自分の話が無事に伝わったと安心してしまいがちです。しかし、その一言だけでは、相手が実際にどこまで理解しているかはわかりません。一般的に「話がわかりやすい」と言われる人は、自分が何を言うかだけでなく、相手に理解されているかどうかまで考えながら話を進めています。

わかりやすい話は頭に負担をかけない

わかりにくい話とは、頭の中で情報を処理していく過程で負担が大きい話のことです。情報処理の観点から話がわかりにくくなる要因を整理すると、おもに次の3つがあります。

  1. 内容の複雑さ:専門用語や条件・分岐の多い説明は、それだけで理解しづらくなる
  2. ムダな情報:本題に関係のない情報が入ると、重要な部分の選別に労力を使う
  3. 覚えておく期間:話が長くなるほど、聞き手は最初の内容を保持し続ける必要がある

会話を成立させる「協調の原理」の4つの公理

私たちが会話をするときには、無意識のうちに従っている事柄があります。イギリスの言語学者ポール・グライスは、これを「協調の原理」と名付けました。

協調の原理は4つの公理から成り立ちます。

①量の公理~情報は過不足なく

必要な情報を過不足なく伝えます。たとえば、「在庫確保をお願いします」だけでは、何をいつまでにどれだけ確保するのかが伝わりません。逆に会議の結論に検討経緯を全部つけると、結論が埋もれます。

②質の公理~根拠のないことは言わない

根拠のないことや、誤っているとわかっていることは言いません。たとえば、確認していないことを「間違いありません」と伝えると、後から訂正が必要になり信頼を失います。

③関連性の公理~話題と関連づける

聞き手は、話し手が話題に関連したことを話しているはずだと考えながら聞いています。前置きなく話題を変えると、会話がつながらなくなります。

④様態の公理~順序立てて明確に

不明瞭な表現やあいまいな表現を避け、順序立てて話します。たとえば、「それ」「あれ」を多用した説明では、どの対象について話しているかわかりません。

4つの公理を指示・報告のシーンで活用する

4つの公理を意識すると、日々の業務指示や部下に方針を説明するシーンで、話がぐっと伝わりやすくなります。

1.量の公理

  • 指示は「何を・いつまでに・どの水準で」をセットで伝える
    →「この資料、直しておいて」ではなく「提案書のP3の数字を最新版に差し替え、明日15時までに戻してください」
    →部署方針を伝えるときは検討の経緯を省き、決定事項から先に伝えて重要点が埋もれないようにする

2.質の公理

  • 未確定の方針を確定のように伝えない
    →「来期からこうなる(かもしれない)」といった状況を断定的な言葉で伝えると、後に訂正があれば部下を振り回し、信頼を失ってしまう。確定していない段階では「現時点の見込み」と明示して伝える。

3.関連性の公理

  • 指示の前に、その仕事が何につながるのかを一言添える。
    →「なぜこれをやるのか」を部署の目標や部下自身の担当と結びつけてから本題に入る。前置きなく作業指示だけをすると、目的が伝わらず部下の動きや判断がずれる。

4.様態の公理

  • 指示語を避け、対象をはっきりと伝える
    →複数の指示は「優先順位は1つ目が~、2つ目が~」と順序立てて伝え、部下が段取りを組み立てやすいようにする
    →「例のあれ、進めておいて」のような言い方はしない
    →さらに、伝えたあとの確認も習慣にします。指示を出したら2~3秒待って反応を見たり、「どう進めるか一度説明してみて」と部下自身のことばで説明させるとよいでしょう。

「わかりました」で安心する管理職が見落としている、話し方の落とし穴

「わかりました」は、部下が指示を受け取ったというただの返事です。管理職が見落としがちな落とし穴は「わかりました」を文字通り、「理解しました」と勘違いすることです。話し手が伝えたつもりのことと、聞き手が実際に受け取れたことがずれるのは、とても自然な現象です。

量・質・関連性・様態という4つの公理を意識して話し、伝えたあとの確認までをワンセットにすると話がぐっと伝わりやすくなります。次に指示を出すときは、4つの公理のうちひとつだけでも意識してみませんか?

分かった!と言わせる話し方研修~グライスの協調の原理に学ぶ

「伝えたつもり」で終わらせず、相手に「わかった!」と言ってもらえる力を身につけます。

本記事で紹介した言語学者ポール・グライスの協調の原理を手がかりに「話がわかる」を構造的に理解し、ロールプレイングで相手にとって負担が少なく理解しやすい話し方を習得します。部下指導や現場運営で「伝わらない」に悩む管理職の方におすすめの内容です。

よくあるお悩み・ニーズ

  • 説明が相手に正しく伝わらないことがある
  • 要点をまとめて話すよう求められることが多い
  • 多様な人とうまくコミュニケーションを取れるチームを作りたい

本研修の目標

  • 協調の原理を理解し、自分の話し方として意識することができる
  • 相手にとって理解しやすい情報量と伝え方を選択できる
  • 相手の立場や状況に合わせて話を進められる

対象者

  • プロジェクトリーダー・現場リーダーの方
  • 部下・後輩指導をする立場にある方

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