インソース マーケティング&デザイン室

「DEI&B」とは?~ダイバーシティ推進実現の鍵を握る、多様性の時代の組織作りに必須の視点

近年、多くの企業で「ダイバーシティ(多様性)」への取り組みが加速しています。多様な人材が活躍できる組織を目指すことは、もはや企業の持続的成長に不可欠な要素と言えるでしょう。

しかし、「制度は整えたものの、現場レベルでは浸透していない」「多様な人材が集まったことで、かえってコミュニケーションが難しくなった」といった課題に直面しているご担当者さまも多いのではないでしょうか。

本コラムでは、ダイバーシティ推進の現実的な課題と、それを乗り越えるための視点として、「DEI&B」について解説します。特に、理想だけでは語れない「インクルージョン(包摂・受容)」の難しさや、その実現に不可欠な「エクイティ(公平性)」「ビロンギング(帰属意識)」の概念をご紹介します。

D:ダイバーシティ推進に潜む、理想と現実のギャップ

社会全体で高まるダイバーシティへの期待

「ダイバーシティ(Diversity)」と聞くと、国籍や性別、年齢などが異なる多様な人材が、いきいきと働く理想的なイメージを思い浮かべる方が多いかもしれません。実際に、女性活躍推進や、育児・介護との両立支援、外国人雇用の促進など、多くの企業が多様な人材を受け入れるための制度構築を進めています。

日本政府も、2030年までにプライム市場上場企業の女性役員比率を30%以上にする目標を掲げたり、男性の育休取得率の目標値を2025年に50%、2030年に85%と設定したりと、社会全体でダイバーシティ推進の機運が高まっています。

課題は、多様な人材をいかにして「活かす」か

しかし、こうした制度の整備はあくまでスタート地点に過ぎません。なぜなら、多様な背景を持つ人々をただ「集める」だけでは、組織の力には繋がらないからです。むしろ、その先にある、多様な人材をいかにして「活かす」かというフェーズにこそ、真の課題が潜んでいます。

I:インクルージョンの実現を阻む、複雑で根深い課題

理想通りには進まない現場のリアル

ダイバーシティの次の段階ともいえる「インクルージョン(Inclusion)」は、多様な人材がそれぞれの違いを活かし、組織に貢献できる状態を指します。しかし、このインクルージョンの実現は、理念だけでは解決できない、人間臭く一筋縄ではいかない現実の課題と向き合うことでもあります。

例えば、チーム内に時短勤務やフレックスタイム制度を利用するメンバーがいる場合、チーム全体の業務量の調整や情報共有の仕組みが追いつかず、他のメンバーの負担感に繋がってしまうといった課題が生じるかもしれません。また、価値観の異なるメンバー間で意見が衝突したり、コミュニケーションがうまくいかず、チームの生産性が低下したりしてしまうこともあるでしょう。

こうした状況で板挟みになるのが、現場のリーダーです。一人ひとりの事情に配慮しながら、チーム全体の公平性を保ち、成果も出さなければならない。この複雑で困難な舵取りこそ、インクルージョン推進の核心であり、多くの企業が「どうすれば良いのか分からない」と悩んでいる領域なのです。

現場のリーダーに求められる「インクルーシブ・リーダーシップ」

この根深い現場の課題を解決する鍵は、リーダーが発揮する「インクルーシブ・リーダーシップ」にあります。個人を尊重し、個性の違いを活かしながらチームの成果を上げるこのリーダーシップは、単なる心構えではなく、具体的な行動の積み重ねです。

例えば、既存の考えに固執せず新しい意見を柔軟に受け入れたり(開放性)、メンバーが困った時にすぐに相談に乗れる関係性を築いたり(近接性)、そして実際にメンバーの力になれる(有用性)といった、日々の振る舞いがリーダーには求められます。

DEI&B実現の鍵を握る「エクイティ」と「ビロンギング」

真のダイバーシティ、すなわち多様な人材がただ存在するだけでなく、その能力を最大限に発揮し組織の力となっている状態は、強固な土台の上に成り立ちます。先に挙げたインクルージョン以外にも、「エクイティ」「ビロンギング」といった観点が必要です。これらの土台がなければ、せっかく集まった多様な人材は機能不全に陥りかねません。

E :エクイティ(公平性) とは~平等との違い

「エクイティ(Equity)」は「公平性」と訳されますが、これは全員に同じものを与える「平等(Equality)」とは異なります。

職場においては、社員一人ひとりが抱える事情や制約(育児、介護、自身の健康問題など)を考慮し、誰もがパフォーマンスを発揮できるよう、リーダーが最適な落としどころを見つけ、ルールや環境を整えることが求められます。それは、情報へのアクセスの公平性を担保したり、役職に関わらず誰もが意見を表明できる雰囲気を作ったりといった、具体的な工夫の積み重ねによって実現されるのです。

B:ビロンギング(帰属意識)とは~チームの一員であるという実感

「ビロンギング(Belonging)」は、組織やチームの中で「自分はここにいて良いのだ」「自分はこのチームの一員として貢献できている」と感じられる状態を指します。これは、「心理的安全性」や、「自分の存在意義が感じられること」と深く関わっています。

リーダーは、メンバー一人ひとりの強みや価値観を理解し、「あなたがいるからこのチームは助かっている」というメッセージを伝えながら、適切な仕事を割り振る必要があります。それにより、メンバーは自分の役割に自信とやりがいを感じ(自己効力感)、組織への帰属意識を高めることができます。この帰属意識こそが、多様な個々人を「チーム」として結束させる強力な接着剤となるのです。

まとめ:DEI&Bの視点は今やすべての企業に必要

少子高齢化による労働力人口の減少が進む中、シニア人材や外国人材など、多様な人材の活躍は企業の成長に欠かせません。特に、文化や言語、価値観の異なる社員と共に働く場面では、これまで「当たり前」とされてきたことが通用しないケースも増えてくるでしょう。

上に立つリーダーが、一人ひとりの背景を理解し、適切な「配慮」をすることができなければ、チームのパフォーマンスを最大化することは困難です。もはや、DEI&Bの視点を取り入れた組織運営は、一部の先進的な企業だけの取り組みではなく、すべての企業にとって「しない」という選択肢がない喫緊の課題となっています。

リーダーがDEI&Bのポイントを学び、多様な人材を活かすための働きかけを実践すること。それが、これからの時代を勝ち抜く組織づくりの第一歩と言えるでしょう。

現代管理職のためのDEI&B推進研修

本研修は、Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂・受容)に加えて、近年特に注目されているBelonging(帰属意識)に焦点を当てた、管理職向けのDEI&B推進プログラムです。

多様性を活かすマネジメントの視点や、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)への気づき、公平性の確保、インクルーシブな関わり方などを体系的に学びます。形式的な導入にとどまらず、一人ひとりが「ここにいていい」と実感できる職場づくりを目指します。

本研修のゴール

  1. DEI&B(多様性・公平性・包摂・帰属意識)の本質的な意味を理解する
  2. 無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)や形式的な対応の限界に気づく
  3. 自組織・自チームの現状を振り返り、明日から実践できる具体的な行動を言語化する

よくあるお悩み・ニーズ

  • 制度は整ってきたが、現場での受け入れられている感覚が感じられない
  • 公平に接しているつもりでも、不満や違和感を生む場面がある
  • 「配慮しすぎ」「遠慮しすぎ」で、かえって関係づくりが難しく感じる

>公開講座の詳細はこちら

>講師派遣型研修の詳細はこちら

セットでおすすめの研修・サービス

インクルーシブ・リーダーシップ研修~多様性を包括するマネジメント

組織の多様性が進む中、従来の統率型のリーダーシップとは異なる「インクルーシブ・リーダーシップ(包摂型リーダシップ)」が注目を集めています。

個人を尊重し、個性の違いを活かしながらチームの成果を上げるこのリーダーシップは、変化の激しい今の時代にフィットしたもので、「心理的安全性」「1on1ミーティング」「キャリア自律支援」といった、近年のマネジメントワードとも通底したものといえます。

その一方で、従来型のリーダーシップとは大きく異なる面もあるため、理解が不十分なまま取り入れようとすると、リーダーはもちろんメンバーにも混乱を与えかねません。本研修を通してインクルーシブ・リーダーシップの本質を正しく理解していただき、自組織において成果につなげていただくことを目指します。

>公開講座の詳細はこちら

>講師派遣型研修の詳細はこちら

>動画教材の詳細はこちら

(管理職向け)ダイバーシティ時代のモノの伝え方研修~不用意な発言を防ぎ、ハラスメント防止の意識を高める(1日間)

本研修は、人権意識の高まるダイバーシティ時代において、ハラスメントを防ぐために必要な知識を管理職の方に学んでいただきます。ハラスメントに関する基礎知識を習得したうえで、自らの普段の行動や発言を振り返ります。

管理職の方は責任ある立場であり、自分の発言の影響度が高いことを理解していただきつつ、不用意な発言をしないために具体的にどのようなことを意識すべきか学んでいただきます。

>講師派遣型研修の詳細はこちら

女性がリーダーを目指せる風土を一からつくっていくプラン

1年間で女性がリーダーへのキャリアを考えられる組織風土をつくります。女性社員とその上司向けに、合同研修・個別研修を実施し、相互理解とスキル獲得を通して、二人三脚の女性活躍推進を実現します。一方通行でなく、双方向からアプローチする女性活躍プランです。

>コア・ソリューションプランの詳細はこちら

関連記事

関連研修シリーズ