異文化理解教育とハラル認証対応の実践法~お客さまの頼れる店になる
近年、国内の小売店の客層が少し変化してきたと感じることはありませんか。観光客に限らず、地域に暮らす外国籍住民も増え、現場では言語や文化の違いによる接客上の課題が頻発しています。本記事では特に「ハラル(ハラール)」という言葉や概念にフォーカスし、知らないことで意図せずお客さまを不快にさせたり、信頼を失ってしまうケースについて言及します。スーパーや飲食店で働く店長が取り組むべき異文化理解教育の要点を解説し、現場で役立つ対応策を提示します。
店長が直面する異文化対応の現実
外国籍のお客さまの増加~多言語対応と同じくらい大切な「文化理解」
観光庁のデータによると、訪日外国人は年々増加傾向にあり、都市部だけでなく地方都市のスーパーや飲食店でも外国籍のお客さまを目にする場面が増えました。安くて安全、品質も良く、なのに美味しい。日本の食材や料理のすばらしさに魅了される方が多く、誇らしいことです。このニーズの高まりに対応すべく、早く英語で接客できるようにならないと!と焦っている店舗も多いとうかがいますが、言語以外にも強化すべき点がある、と私どもは考えます。それが異文化理解のための教育です。
異文化知識が不十分だと、宗教上の配慮を欠いた接客や食材に関する誤った説明をしてしまい、結果としてクレームを発生させたり、再来店の機会を失うこともあります。「あの店は不親切だ」などとSNSに投稿され、ネガティブなイメージを第三者に与えてしまう危険性があるのです。
ハラルを知らないことで起きる具体的なトラブル~実はマジョリティになりつつある文化
ハラルフードを例に挙げて考えてみましょう。イスラム教徒(ムスリム)のお客さまには、豚肉を含む料理やアルコール入りの調味料を勧めることは好ましくありません。「少量だからきっと大丈夫」などと筋違いの説明をしてしまうことも、深刻な信頼喪失につながります。敬虔な信仰心のあるお客さまにとって、これは宗教的な禁忌を侵す行為であり、軽い失敗では済まされません。
こうしたトラブルは、従業員がハラルの基本概念を知っていれば防げることも多いといえます。米国シンクタンクのピュー・リサーチ・センターによると、全世界人口という視点では、今や4人に1人がイスラム教徒であることが分かっています。インドネシアやバングラデシュ、マレーシア出身のメンバーが、皆さんの周りにもいませんか?
彼ら彼女らの中には、食べ物の調達に苦労している方もいる可能性があるということをふまえ、これからもっと増えるであろうムスリムやハラルフード市場のことを知っておくのは有用です。
参照:Newsweek
「世界一人口が増えているのはイスラム教徒――若さと出生率の高さで世界を席巻する勢い」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/06/555918.php
(最終アクセス:2025/9/29)
基本的な異文化理解の共有
まずは全従業員に、接客の前提として「文化や宗教によって大切にするポイントが異なる」ことを理解させることが重要です。
ハラル対応の知識習得~豚肉やアルコールを避ければいい、だけじゃない
ハラルの基本を学ぶ勉強会などを実施しましょう。例えば以下のような点をおさえるだけでも現場対応の精度は大きく向上します。
- 豚肉やアルコールを含む食品は避ける必要がある
- 食器や調理器具の共用にも配慮が求められる
- 加工食品の原材料表示を確認することが重要である
ハラル認証を理解する意義~あのマーク付きの商品が示していること
ハラル対応を強化するうえで、ハラル認証の仕組みを理解することも欠かせません。ハラル認証とは、食品や飲食店がイスラム法に則った製造・調理・提供を行っていることを、第三者機関が証明する制度です。認証を受けた商品や店舗は、イスラム教徒のお客さまにとって安心の目印となります。
飲食店の場合、調味料や食材の仕入れから調理環境まで一貫して審査されるため、信頼性が高まります。必ずしも全ての店舗が認証を取得する必要はありませんが、認証を理解し、認証食品を積極的に取り扱う姿勢は、顧客満足度の向上につながります。
お客さまの要望を尊重する姿勢を育成
異文化対応において最も重要なのは、お客さまの要望に応える意識です。店長は「分からないことを曖昧に答えず、確認を徹底する」ことを従業員に徹底させる必要があります。具体的には、次のような行動を日常業務に組み込むことが求められます。
- 原材料や調理方法を確認してから回答する
- 分からない場合は店長や責任者にすぐ相談する
現場で使える実践的な工夫
マニュアルと情報共有の仕組みづくり
異文化理解教育は一度の研修で終わるものではありません。現場で使える対応マニュアルに落とし込むなど、スタッフ間で情報を共有できる仕組みを作ります。例えば、「商品ごとのハラル対応可否リスト」を作成する、お客さまからよくある質問をFAQとして蓄積するなどのツール化が効果的です。
多言語対応の工夫
英語や簡単なアラビア語、中国語などでも「豚肉不使用」「アルコール不使用」といった表現を記したカードや掲示、メニューを用意するだけでも、ムスリムのお客さまの安心感は大きく高まります。また、お客さまだけでなく店舗で働くメンバーも多様化しています。対応マニュアルを動画コンテンツ化し、日本語を母国語や第一言語としない方向けに理解しやすい形にしておくとよいでしょう。
成功事例の共有~一人の頑張りに頼らない。全員で取り組む土壌を育む働きかけ
店舗内で実際に成功した対応事例をスタッフ間で共有することも大事です。例えば「原材料を丁寧に確認して説明したことで、お客さまから感謝された」「食材だけでなく調理器具にも配慮が必要だと知っていたので、すぐに専用の包丁とフライパンを使って仕上げることができた」といった経験は、他のスタッフの学びにつながります。店長が積極的に成功事例を取り上げ、チーム全体の意識を高めることができます。
店舗全体で異文化理解を進めるメリット~店舗経営への先行投資
異文化対応を強化することは、単なるクレーム回避にとどまりません。お客さまから「安心して利用できる店」として評価されることで、リピーターや口コミによる新規顧客獲得につながります。また、外国籍の従業員にとっても安心して働ける職場環境となり、人材定着にも寄与します。つまり、店舗責任者が異文化理解教育に取り組むことは、店舗経営の持続性を高める投資といえます。
ここでは宗教上の食事の制約としてハラルフードについてご紹介しましたが、食品アレルギーがある、ベジタリアン・ヴィーガン・ペスカタリアンといった志向など、世の中には食にまつわる多種多様な考え方や悩みをもつ方がいます。「なんでこんな細かい質問をしてくるんだろう? 面倒くさい客だな」と思っているかもしれない、スタッフの意識を変える異文化理解教育におすすめです。
動画で文化や生活情報を知る、配慮や注意点を学ぶ
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