インソース 人事部門支援サービス

平等と公平は違う~ダイバーシティ推進の時代にこそ問われる公平な評価制度と、「信用残高」の考え方

「全員を平等に扱っているのに、なぜか不満が出る」「頑張っている社員ほど報われないと感じている」

そんな状況に心当たりはありませんか。実は、「平等」と「公平」を混同していることが、評価制度への不信感を生む大きな原因になっています。

本ページでは、この二つの違いを明らかにするとともに、多様な人材を活かすための公平な評価のあり方を解説します。さらに、評価を通じて、自分がどの程度「信用貯金」を持っているかという考え方を紹介し、誠実に業務に取り組むことの重要性の伝え方をまとめました。

平等ではなく公平へ~納得度の高い評価の基本原則

「平等」とは、すべてを同じに扱うこと

平等とは、すべての人に同じ条件や機会を与えることを指します。例えば、全社員に一律で同じ研修を受けさせる、全員に同じ目標を課すといった取り組みは「平等」です。一見正しいように思えますが、個人の経験や状況、能力の差を無視すると、かえって不公平さを感じる社員も出てきます。

「公平」とは、状況や努力を踏まえて扱うこと

一方で「公平」とは、一人ひとりの立場や努力を踏まえたうえで、適切に扱うことを意味します。たとえば、入社1年目の社員とベテラン社員に同じ成果を求めるのではなく、それぞれの経験や環境を考慮して評価する。これが公平な対応です。つまり、公平とは「個の違いを前提に、最適な支援や評価を行うこと」なのです。

平等にこだわりすぎると、かえって不満が生まれる

「平等」は耳障りがよさそうな言葉ですが、成果を出している社員と、同じ業務をこなすだけの社員を同じ基準で評価すれば、前者の意欲は確実に下がります。

また、育児や介護など制約を抱える社員に対しても、「他者と同じ条件で」と理想を求めすぎることで働きづらさが増し、この組織ではこれ以上働けないと離職を考えるようになります。

このように、平等さを貫こうとするほど、現実とのズレが大きくなるのです。

限られた人材で売上を作る、成果を出すために組織の生産性を高めるうえでは、平等よりも公平な視点を重視する必要があります。

公平な評価とは何か~多様性を前提とした視点

結果だけでなく、「プロセス」と「環境」を見る

公平な評価とは単に成果を比較することではありません。その成果がどのような条件で生まれたのか、どんな工夫を重ねたのかを見極めることが重要です。時間的な制約、チーム構成、得られる情報量や使える手段の選択肢など、背景を考慮したうえで評価を行えば、従業員は「自分の努力が正しく見られている」と感じます。この納得感が、長期的なモチベーションの維持に欠かせません。

ダイバーシティの観点から見る「公平」

現代の職場は、性別・年齢・国籍・働き方など、多様な要素が共存しています。このような環境では、「同じルール」よりも「最適なルール」を設けることが重要です。例えば、リモート勤務の社員には成果報告の明文化を重視し、対面勤務の社員にはコミュニケーション面の貢献を重視します。こうした柔軟な評価設計こそが、ダイバーシティ時代の公平な組織運営につながります。

信頼を生む「信用残高」という考え方

公平な評価の前提は、日々の信頼できる行動の積み重ね

評価を公平なものにするにあたっては、評価者と被評価者間に日常的な信頼が積み重ねられていることが前提となります。

被評価者であるメンバーは、評価者である上司からの細やかな承認やアドバイス、励ましの声掛け、個々人の課題へのサポートが普段から適切な質と量で受けられていると、前向きに自身の成長やチーム貢献のための努力ができます。

他方、評価者側も、評価対象者との日常的なやりとりの機会が増えれば増えるほど、たった一度の部下の「好ましくない行動」を全ての時期がそうだったように捉えることはそうありません。そっと別室に呼び出して、「らしくないよ、何かあったの?」と話を聞くことができます。

評価をする側もされる側も、同じ組織で働くビジネスパートナーです。日々のお互いの行動が信頼・信用の度合いを増やしたり、時には減らしたりします。「信用の残高」が高い相手同士では、評価結果に対しても「相応の理由がある」と受け止めやすくなるのです。

評価者の信用残高を増やすための3つの行動~観察・共有・支援

  1. 観察する:日々の仕事ぶりや小さな成長を丁寧に見守る
  2. 共有する:本人の努力や成果をチーム内で共有し、周囲の理解を得る
  3. 支援する:困っているときに具体的なサポートを惜しまない

これらの行動を続けることで、上司と部下の間に「見てもらえている」「理解されている」という信頼が生まれます。

被評価者の信用残高を増やすための3つの行動~誠実・アピール・感謝

  1. 誠実に努力する:自分の役割や果たすべきことを認識し、意欲的に目標達成に取り組む
  2. 適切にアピールする:報告・連絡・相談を使い分け、現状を伝える
  3. 周囲への感謝を忘れない:今の自分の業務や働き方は、前後工程によって成り立っている

育児や介護、けがや病気などでそれまでと同じような成果が出せなくなったとき、自分に起きた困難を大げさにアピールする必要はありません。権利を主張することで組織の成果が大きくなるわけではないからです。

それよりも、制約があるなかでどんな実績を残せたか、あるいは自身の評価が下がることを恐れずにルールに則りトラブル報告ができたか、協力してくれるステークホルダーとの調和を大事にできているかなどが、長い社会人生活を有意義なものにする秘訣です。

信頼こそが、公平で腑に落ちる評価とダイバーシティ推進の基盤です。

いつかは誰かの助けを借りる~お互いさまの恩送り文化を根づかせよう

公平な職場づくりのもう一つの柱は、助け合いを前提とした組織文化の形成です。

誰しも、体調不良や家庭の事情で十分に力を発揮できない時期があります。そうした時に互いに助け合える関係があるかどうかは、やはり先述の信用残高で示すことができるのではないでしょうか。助けが必要な時に、「どうせまた嘘だ」「自分が楽をするために仕事を選んでいる」とネガティブに受け取られるのは、本人の過去の振る舞いが原因です。

「今は支える側だが、いつかは助けられる側になる」という意識を浸透させることで、評価の公平性も育まれていきます。評価とは単なる人材育成のツールのひとつではなく、信頼の循環を生み出す仕組みでもあるのです。

現代管理職のためのDEI&B推進研修

Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂・受容)に加えて、近年特に注目されているBelonging(帰属意識)にも焦点を当てた研修です。

DEIの形式的な導入にとどまらず、一人ひとりが「ここにいていい」と実感できる職場づくりを目指します。公平性を確保したマネジメントの工夫やインクルーシブな文化のつくり方などを体系的に学びます。

【研修のゴール】

  • DEI&Bの本質的な意味を理解する
  • 無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)や形式的な対応の限界に気づく
  • 自組織・自チームの現状を振り返り、明日から実践できる具体的な行動を言語化する

>講師派遣型研修の詳細はこちら

>公開講座の詳細はこちら

セットでおすすめのサービス

人事制度設計支援サービス

家族の介護のためにリモートワークで働きたい、時短勤務にも関わらず新規開拓で大きな案件を獲得できたがインセンティブを獲得できなかった―うまく機能しなくなってきた人事制度・評価制度の見直しを、専任コンサルタントが伴走しながらご支援します。

>サービスの詳細はこちら

Leaf 人事評価システム~今の評価制度そのままWEB化

評価項目は誰もが知ることができる、公にされていることが大切です。過去からこれまでの成長の記録を個人がいつでも振り返り、上司もその成長をさらに促進できるようにするために、評価をクラウド上で運用します。

>サービスの詳細はこちら

関連記事

関連研修シリーズ