分析は嗅覚。問いなきデータ分析が「で、何が言いたいの?」を生む~成果が出る分析の進め方

グラフも表もそろっている。数字も細かく切り分けている。それなのに、報告の場で返ってくるのは「で、何が言いたいの?」という一言。
こうした「評価されない分析」は、決して珍しいものではありません。原因は、分析スキルやツール操作の不足ではなく、分析に入る前の「問い」が置かれていないことにあります。
データ分析とは、数字を網羅的に並べる作業ではありません。どこに違和感があり、何を確かめ、何を決めたいのか。その気配を嗅ぎ取る、いわば嗅覚の仕事です。
本記事では、「問いなき分析」がなぜ結論を失い、立派な資料を「使われない分析」に変えてしまうのかを整理しながら、意思決定につながる分析の考え方と進め方を解説します。
資料は立派でも結論ゼロ~「決めたいこと」がない分析の末路
売上推移をグラフにし、前年同月比を出し、エリア別や商品別に切り分ける。多くの現場で行われているデータ分析は、ここで止まっていることがほとんどです。作業量は多く、見た目もそれなりに整っている。しかし、報告の場では決まってこう言われます。「で、結局何が言いたいの?」「次に何をすればいいの?」
これは分析スキルが足りないからではありません。ExcelやBIツールが使えないからでもない。最初に「この分析で何を決めたいのか」という問いを明確にしないまま、数字を触り始めていることが原因です。
成果が出る人はここが違う~最初に決めているのは「何を決めたいか」
データ分析で最初にやるべきことは、「何を明らかにしたいか」ではなく、「何を決めたいか」を決めることです。たとえば、売上が前年を下回っている場合を考えてみます。決めたいことが定まっていないケースでは、売上推移を月別に並べ、エリア別、商品別に細かく切り分けていきます。「Aエリアが落ちている」「B商品が前年より低い」といった事実は分かりますが、結局のところ、「要因はいくつか考えられます」という整理で終わってしまいます。この分析結果を見ても、「では何を打つのか」は決まりません。
一方で、最初に決めたいことを明確にしているケースでは、「今回の分析で決めたいのは、既存客への施策を強化するか、新規獲得に力を入れるか、どちらかだ」と考えています。この前提を置いたうえで、新規客数の推移、既存客の購買頻度や離脱率を見ると、見るべきデータは自然と絞られます。
もし新規客数が大きく落ちていれば、集客施策の見直しが打ち手になります。既存客の離脱が原因であれば、フォロー施策や商品設計の改善が必要だと判断できます。同じ売上データを使っていても、最初に「何を決めたいか」を決めているか、分析結果の「使われ方」はここまで変わります。
仮説構築で外さない3つの視点~原因と打ち手を絞り込むコツ
決めたいことが定まったら、次に行うのは原因の当たりを付ける仮説を置くことです。仮説とは、完璧な答えを出すことではありません。「もしこれが原因なら、こういう変化が起きているはずだ」という見立てを立てることです。
まず意識したいのは、どこに変化が起きているのかという視点です。顧客、商品、売り方。何かが変わっていなければ、数字だけが大きく動くことはありません。次に、仮説は必ず次の形で言語化します。「もし◯◯が原因なら、△△に変化が出ているはずだ」この一文があるだけで、分析は「とりあえず眺める作業」から「確かめる作業」に変わります。
そして最後に、その原因がAだった場合とBだった場合で、次に取る行動が変わるかを考えます。原因がAならこの施策、Bなら別の施策。ここまで描けていれば、その仮説は現場で使えるレベルになっています。
分析時間が半分になる進め方~仮説から入るとムダな集計が消える
分析は、仮説を確かめるために行います。この順番が逆になると、分析は一気に非効率になります。仮説を置かずに分析を始めると、「とりあえず全部見ておこう」となり、作業はどんどん広がっていきます。資料は分厚くなりますが、結論は曖昧なままです。
一方、仮説を置いてから分析を始める人は、最初から検証に必要なデータしか見ません。グラフの数も、切り口も、すべて仮説ありきです。その結果、分析は短時間で終わり、報告では結論から話すことができます。仮説は、そのまま次の施策案につながるため、意思決定と現場改善のスピードも一気に上がります。
なぜ分析が機能しないのか~決めたいことが曖昧なまま進める落とし穴
分析が機能しないケースには、共通点があります。それは結果がどう出ても、次に取る行動が変わらないことです。データを見たあとで「考えられる要因は三つあります」と説明を並べる。一見、論理的に見えますが、これは検証ではありません。最初に決めたいことが定まっていないため、どの数字が出ても「なるほど」で終わってしまうのです。
機能する仮説は違います、当たれば施策が決まり、外れれば別の手を打つ。結果を見た瞬間に、次の行動が決まります。問題は仮説の強弱ではありません。最初に決めたいことが曖昧なまま進めていることなのです。
分析前に必ず立てる一問~この結果で何を決めるのか
データ分析に入る前に、必ず自分に問いかけてほしいことがあります。「この分析結果を受けて、何を決めたいのか」です。この問いに答えられないまま始める分析は、どれだけ時間をかけても状況整理で終わってしまいます。一方で、先に決めたいことが明確であれば、必要なデータも、切り口も、分析の深さも自然と定まります。
仮説はそのための道具であり、分析を前に進めるエンジンです。
- 決めたいことを決める
- 原因の当たりをつける
- 仮説を確かめる
この思考を繰り返すことで、データ分析は初めて「成果を生む仕事」になります。
情報活用力養成研修~情報の収集・整理・分析編
分析が状況整理で終わってしまう背景には、人が無意識に分かりやすい数字や切り口に引っ張られてしまう、という認知のクセがあります。
だからこそ、分析を個人任せにせず、「何を判断したいのか」を職場全体で共有することが重要です。仮説を起点に考える姿勢が、分析を意思決定の道具に変えていきます。
本研修のゴール
- 今ある問題について、真の原因を追究する手法を身につけることができる
- 不確定な情報に対し、情報を集め、状況を数値で分析することができる
- 数値分析から、最適な解決策を選択することができる
よくあるお悩み・ニーズ
- 自分が出したアイデアや企画について、「数値的な根拠がない」と言われたことがある
- 基本的な数値の見方はわかるが、別のデータなどと関連させて仮説を立てることが苦手
- 数値やデータの分析方法を身につけて、新企画の立案や営業活動に役立てたい
セットでおすすめの研修
仮説構築力向上研修~仕事の精度とスピードを高める思考法を身につける
ビジネスにおいて最も重視されるべき価値観に、「スピード」と「効率」があげられます。競争環境の中で生き残るためには、できるだけ早くできるだけ無駄のない方法で「解」や「結果」に到達することが不可欠です。
本研修では、スピーディかつ効率的に結果を出すための方法として、先にあたりを付けてその正誤を確かめる、という仮説思考の基本を学びます。
- 仮説力を磨く思考習慣~常に原因と結果の関係で捉える/視点を変えて考えてみる
- 仮説構築の仕方~帰納法で考える/トレンド思考で未来を考える/フェルミ推定(限られた情報で妥当性の高い推定値を得る)
- 仮説検証の仕方~限定質問と拡大質問/ロジックツリーを活用する/PDCAサイクル
【DX推進者シリーズ】仮説構築力向上研修~多面的にデジタル化を考える
DXの推進には、ツール導入による効果の予測と検証が不可欠です。
本研修では、DX推進を加速するための仮説構築を学びます。ワークでは学んだ手法を実践し、今ある情報から将来かかるコストやツール導入後の効果を推定します。
また、立てた仮説をどのように検証し修正していくかについても解説します。粘り強く改革を進められるDX人材を目指すプログラムです。
【データリテラシー醸成シリーズ】データ分析力向上研修
一般のビジネスパーソンにとって、データを読む機会はあっても、データを分析する機会はさほど多くはないかもしれません。
しかし、直接、分析作業を行うわけでなくても、データ分析の心得があることで、自信をもってデータにもとづく議論やデータを根拠にした意思決定をすることができます。
本研修では、データ分析における基本的な知識や作法を身につけるとともに、演習を通して分析作業における実務的な留意点を体感していただきます。






