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組織を毒化するガスライティング➁~個人と組織の対策

さて、前のコラム「組織を毒化するガスライティング➀」ではガスライティングを起こしやすい人についてその特徴を挙げました。ここからは被害に遭いやすい方についてまとめます。

※被害者を責めるためではなく、あくまで組織として早期に気づき、守るための知見として整理するものです。ガスライティングの発生は被害者の責任によるものではありません。

実は優秀な人が陥る人権侵害~高い能力と誠実さ

意外に思われるかもしれませんが、ガスライティングの対象になりやすい人は必ずしも弱い立場の人とは限りません。むしろ次のような「優秀なビジネスパーソン」の特徴を持つ人が標的になることがあります。なぜなら、ガスライティングの加害者にとって脅威となる存在であるからです。

組織の問題を指摘する人

課題を冷静に分析し、改善を提案する人は組織にとって重要な存在です。しかし、その発言が既存の権威を揺るがす場合、反発を受けることがあります。

誠実さを重視する人

ルールを守り、公平性を重視する人は、不合理な状況を見過ごしません。そのため、不正や矛盾を指摘する役割になりやすく、摩擦が生じることがあります。

自己反省ができる人

真面目な人ほど、「自分に問題があるのではないか」と考えます。この誠実な姿勢は本来は長所で、他者からの信頼を得やすい反面、ガスライティングの環境では、心理的な負担を大きくすることがあります。

その他の状況、特徴

  • 組織経験が浅い
    新人や異動直後の社員は、組織の暗黙ルールがわからなかったり、適切な仕事の進め方を知らない、自分の判断に自信がないものです。このとき認識の違いが起きると、「自分が間違っているだけかもしれない」と考えやすくなります。そのため指示や説明に違和感があっても、自分の理解不足と片付けてしまうことがあります。
  • 権威を強く尊重する
    上下関係を重視する環境では「上司の判断を尊重し、指示には従うべき。反論は失礼」という価値観が強いと、上司の認識と違うときに「自分のほうが間違っている」と思いがちです。その結果、認知のズレが修正されにくくなります。
  • 自己評価が低下している
    個人の性格というより、心理状態も大きく影響します。強いプレッシャーを受けていたり、連続して何かに失敗している、評価が下がっているといった状態では、人は自分の判断に自信を持ちにくくなります。ガスライティングは心理的に弱っているタイミングで影響が強くなることがあります。

ここまで見ると分かるように、ガスライティングの影響を受けやすい人は、多くの場合、協調性が極めて高く、責任感も強い、学習意欲もあり、組織に適応しようと努力している、組織を維持・発展させる特性を持っている人であるといえます。

個々人ができる自己防衛:被害に遭っているかもしれない、と思ったら

ガスライティングは明確な攻撃ではないため、それを受けた当事者自身も被害に気づきにくいという特徴があります。そのため、いくつかの視点から自身の状況を整理しておくとよいでしょう。

記録を残すことで事実を客観視する

まずおすすめするのが、コミュニケーションの記録を残すことです。メール、チャット、会議メモなどを整理することで、後から事実関係を確認できます。記録は心理的な安心感にもつながり、自分の認識を客観的に見直す助けになります。

第三者の視点を取り入れる

もう一つ重要なのが、第三者の視点を取り入れることです。同僚や別部署のメンバーに状況を共有することで、自分だけの問題ではないことに気づくことがあります。組織として相談できる環境があることは、ガスライティングの抑止にもつながります。業務のやりとりは1対1ではなく、Ccに関係者を加えてメールで行うことを癖づけます。

組織としての対策~違和感を共有できる環境づくり

ガスライティングは個人の性格だけの問題ではなく、組織構造やマネジメント文化とも深く関係していることから、人事総務部門や内部統制に関わる部署を中心に、対策も組織レベルで講じることが望まれます。

指示と評価の透明性を高める

まず取り組むべきは、業務指示と評価基準の見える化です。目標、役割、成果の定義が曖昧な組織では、解釈の違いが生まれやすく、コミュニケーションの摩擦や心理的な不信感を発生させる原因になります。

評価基準や役割を明文化することで、コミュニケーションの土台を客観的なものにできます。特定の個人の主観だけで評価を歪められないようにするためにも、毎期初に目標を設定し、その達成度合いを数値や文字列で確認して評価する。2次評価者の設定を評価制度に加えるなども有効です。

心理的安全性を支える対話文化をつくる

次に重要なのが、心理的安全性の高いコミュニケーション文化です。上司の言葉が絶対になる環境では、違和感を感じても指摘することが困難です。ガスライティングのような心理的操作が見えにくくなり、また多くのメンバーが「関わりたくない、上司に逆らうと自分の評価にも影響する」と沈黙してしまうと、被害者だけが孤立してしまいます。

被害を受けたという事実もさることながら、誰も助けてくれないことのほうが、当事者を深く傷つけます。問題行動を黙認してしまう環境はすぐに是正する必要があります。評価権が一人に集中している、人事権を上司が単独で持っている、異議申し立ての仕組みがない、相談窓口が機能していないといった権力格差が大きい組織になっていないかを今一度確認しましょう。

意見の違いを歓迎する風土の醸成、上司への適切なフィードバックが可能な仕組みを導入することは、組織の健全性を保つうえで極めて重要です。

管理職への心理理解の教育

もう一つの対策は、管理職側の「人の心理」への理解を高めることです。悪意がなくても、コミュニケーションの癖によって部下の認知を揺さぶってしまう場合があります。マネジメントにおいて心理的影響を理解することは、現代の組織運営において欠かせない要素です。そのためハラスメント防止のアプローチだけでなく、良好なコミュニケーションに関する教育を継続的に行うことが肝要です。

成果至上主義をどこまで求めるか

成果を強く求める組織では、結果が出ればプロセスは問わない、強いリーダーが評価されるような価値観が生まれやすくなります。この環境では、部下側の認知や感情よりも成果の正当性が優先されます。すると、部下「その説明は納得できません」上司「結果は出ている」という形で、認知の違いが整理されないまま残り続けます。

この状態が続くと、部下は自分の感じている違和感を正当な問題として認識できなくなる可能性があります。これにより、コンプライアンス違反を起こしやすくなることにも注意が必要です。

ガスライティングは組織の信頼を損なう

ガスライティングは単なる個人間のトラブルではなく、組織の信頼関係を損なう問題です。背景には、地位を守ろうとする心理、認知的不協和、組織構造の問題などの複数の要因があります。問題を個人の性格によるものと理解するのではなく、組織の仕組みとして捉えることが大切です。

健全な組織では、意見の違いや問題提起が歓迎されます。その環境が整ってこそ、組織は持続的に成長できるのです。

管理職向けエンゲージメント向上研修~心理的安全性、インクルージョン、ビロンギング

自組織の心理的安全性が十分に確保されているか、無礼な行動をうっかりしてしまっていないかなどをチェックリストに沿って確認し、内省できるプログラムです。

親しみやすく頼れるリーダーが求められる時代になってきていることや、多様性を職場で生かすために必要な「エクイティ」の考え方などにも言及します。

お悩み・ニーズ

  • 部下が本音を言わないので、心理的安全性を高め、安心して発言できる環境をつくりたい
  • 多様な価値観を持つメンバーをまとめきれず、チームがバラバラに感じる
  • 部下の離職やモチベーション低下が課題となっており、定着と成長を促したい

到達目標

  1. 部下が安心して発言・挑戦できる職場環境を、管理職自らが創出できる
  2. さまざまな価値観を受容し、メンバーを巻き込むインクルーシブ・リーダーシップを実践できる
  3. 一人ひとりの帰属意識を高め、自信を持って活躍できる環境づくりを推進できる

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