第1回 「休むなら辞めろ」と言われた日から~長く働くにたどり着くまで
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現在、精神障がい者雇用として勤務するKさん。前職では、うつ病による休職と復職を経験しています。その後、無期雇用への切り替えを経て勤務を続けていましたが、体制変更に伴う退職勧奨を受け、インソースへ転職することになります。今回は、インソーススタッフがKさん本人に内容許可のもと、インタビューを実施。最初の発症から現在に至るまでの波乱万丈な道のりとともに、「見えない不安の捨て方」や「周囲の支援に頼ることの大切さ」などについて伺いました。キャリアの岐路や働き方に悩む方へのヒントが詰まった第1回をお届けします(全3回)。
過酷な労働環境での発症と、経営トップが求めた「依願退職」
―まず、うつ病を発症したときはどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
営業職をしていました。
―当時、職場の雰囲気はどのような環境でしたか。また、働き方を振り返って、今どのように感じていますか。
営業所内は、明るい雰囲気で仲も良かったです。ただ、トップが「とにかく数字を作ってこい」という感じでした。組織力で動くというより、個人商店の集まりみたいな感じでしたね。働き方は今思うと、かなり無理をしていました。サービス残業もありましたし、代休なしの休日出勤も普通にありました。徹夜とか、深夜に呼び出されることもありましたし......。今だから言えますが、勤怠管理がまったく機能していない会社でした。
―ご自身のからだに異変や「つらい」「しんどい」などの症状が現れ始めたのはいつ頃だったのでしょうか。
多少、営業としての結果が出始めた翌年ですね。「なにか呼吸しづらいな」程度でしたので、単なる肉体疲労だと考えていました。それがちょうど東日本大震災の後の過剰な自粛ムードの頃です。個人的にはこころもからだもきつかった記憶があります。その後、勤務中に倒れることになります。
―周囲へ相談できる環境はありましたか。
当時はまったくありませんでした。病院もネットの口コミで探して、なんとか見つけた心療内科へ問い合わせたくらいです。その結果、うつ病と診断されました。
―休職や退職についての経緯をもう少し詳細にお聞かせください。
はい。まず休職は医師の指示によるものです。自分ではなにも判断できませんでした。指示に従い、休職願を提出したのですが、会社を休みたいなら辞めろと、依願退職を提出するように回答がありました。その時は、「ああ、そういう考えの会社なんだな」と思いましたし、もう気力もありませんし、こちらも言われるがまま退職届を提出しました。
―当時、一番苦しかったことは何だったと思いますか。
難しいですね......。いろいろありすぎて、どれも一番苦しかったんだと思います。
精神障がいへの抵抗感、就労支援施設での「ここなら通える」という直感
―就労支援施設を知るきっかけと、どのような施設なのかお教えいただけますか。
通院していた心療内科の先生から紹介されました。3施設くらい勧められたと思います。簡単に説明すると、メンタル疾患を持つかたがたが、自分に合った働き方で社会復帰するための活動をおこなう、公的なサポート施設です。
―最初の印象はどうでしたか。また、その施設を利用することをどのように感じていましたか。
「とりあえず見学だけ行ってみようかな」くらいでした。どんな人がいて、何をしているのかもわからない場所なので、不安もありますし。あと、今思えば偏見なんですけど、当時は精神障がいそのものにあまり良い印象を持っていなかったので、自分が施設へ行くことへの抵抗感もありました。
―実際に見学へ行ってみて、印象は変わりましたか。
最初の2つは、正直「思っていた通り」でした。自分の来る場所ではないな、と。でも、最後に見学した施設は違ったんです。良い意味で「普通」だったんですよね。特別扱いされる感じでもなくて、変に距離を置かれるわけでもなくて。「あ、ここなら通えるかもしれないな」と思いました。
「無理をしなくていい」という場所で、作り直した生活リズム
―通所を始めた頃は、どのように過ごしていたかを教えていただけますか。
国の制度(※1)として、就労移行支援の利用期間は原則2年(標準利用期間)と決まっています。ですので、その限られた期間の中で、とにかく毎日通って、まずは生活リズムを作り直すことを考えました。ただ、驚いたのは施設のスタンスです。「調子が悪ければ休んでいいし、必要ないプログラムの受講はしなくていい。その場合にも特に連絡もしなくていい」と言われたんです。基本のスタンスが、それまで自分が持っていた「常識」ではないことに、最初はちょっと驚きました。
―最初に苦労したことはありますか。
体力のなさです(苦笑)。あと、障がいって本当に人それぞれなんだ、ということが当時はまだよくわかっていなかったので、周囲とどう接したらいいかもわかりませんでした。
―他に通所される人やスタッフとの関りの中で、ご自身に変化を感じることはありましたか。
いえ、目に見える変化は自分ではわからないですね。担当としてついていただいた施設スタッフからは、「当時は一匹狼みたいだった」って言われました。今はかなり穏やかになったらしいです(笑)。
―毎日通所することには、どのような意味があったと思いますか。
「生活リズムを維持すること」に尽きます。働き続けるには、まず毎日動ける状態を作らないといけないので。
※1 厚生労働省:「障がい者の就労支援について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000797543.pdf(最終アクセス日:2026/5/26)
再就職から3カ月での休職と自分を支えた「定着支援」
―その後、大手メーカーへの就職も決まったのですね。
はい。ただ、まったく知らない業界だったので、「本当にやっていけるのかな」という不安のほうが強かったです。
―社会復帰そのものへの不安もありましたか。
通所から就職するまで、1年半くらいかかりましたし、「働けるか」もそうですが、「この業界をちゃんと理解できるのか」という不安のほうが大きかった気がします。
―その後、一度休職も経験されたそうですね。何か原因があったのでしょうか。
入社して3カ月くらいで、適応障がいで休職しました。やっぱりどれだけ準備をしていても、環境が変わると、それだけ心身への負荷も大きかったんだと思います。相談できるところにはすべて相談した後、休職しました。ただ、今では自分自身にも問題はあったな、と反省しています。
―それはどのようなことで反省されたのでしょうか。
例えば業務でわからないことを放置したり、ミスしたことで自己嫌悪に陥ったり。施設で訓練したことがまったくできずに落ち込んだり。そのような小さな原因が重なって欠勤したり早退したりとなるのですが、どれもきちんと解決できることなんですよね。マイナスな出来事を自分で作っていました。
―復職までは、どのように過ごされていたのでしょうか。
最初の2~3週間は医師の指示に従い、何も考えずに昼寝をしたり散歩をしたりなど、自由気ままに生活していました。その後は再度施設へ通所し、生活リズムを戻していく練習をしていきました。復職直前には、実際の通勤ルートを使って通勤練習もしていました。その成果もあって、約3カ月くらいで復職できました。
―休職時、再び支援施設へ相談しようと思えたのはなぜですか。
就労移行支援には「就労定着支援」という、就職後も最長3年間サポートをしていただけるシステム(※2)があります。利用していた施設もその期間内だったので、手厚いサポートを受けられました。このときは「一人で全部やらなくていい」とも考えることができ、非常に心強かったです。
※2 厚生労働省「就労定着支援の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/001240305.pdf(最終アクセス日:2026/5/26)
順調な日々のなかで、再び訪れた「環境の変化」
―復職された後は、安定して働けていたのでしょうか。
時短勤務なども使いながらですが、うまく働けました。5年後には無期雇用にも切り替わりましたし、通勤負担を減らすために会社の徒歩圏内に引っ越したりもしていました。もうひとつ、フルタイム勤務も目標としていましたので、体調を見ながら少しずつ勤務時間を戻していきました。
―その矢先、会社を取り巻く環境が変わったのですね。ご自身に変化はありましたか。
はい。勤務先で、会社の体制が変わる話が出てきました。社内もかなり不安定になっていました。体調を崩してしまう人もいましたし、辞める人も増えていきました。私自身はできることをやるしかない、と思っていました。体制は変えられませんが、自分は変化にはついていこう、と考えていました。
―その後、退職勧奨を受けたそうですね。
はい。体制変更の決定で、今までと同じ配慮や働き方ができるかわからない、という話でした。しかも残るか辞めるかの二択しかありません。回答期限も1カ月くらいしかなくて、相当焦りました。
―その時は、どのようなことを考えていましたか。
正直、もう転職活動なんてしたくなかったですが、このまま一人で考えていてもよくないな、とは思いました。なので、すぐに主治医と支援施設へ連絡しました。当時、本来の支援施設の利用期間(定着支援期間)は終了していましたが、ひとまずは雑談レベルでもいいので、現状を報告しておこうと思ったんです。
「見えない不安は、捨てていい」
―同じように悩んでいる方へ伝えたいことはありますか。
持論ですが、「不安は見えないものなので捨てていい」です。不安だと思っていたものが、あとから振り返ると単なる緊張だった、ということもあります。あと、プレッシャーがあれば誰かとグチってください。一人で抱え込まないほうがいいです。もうひとつおすすめは、自分を頭の上から見ているような感覚で、「今、自分は何をしているんだろう」って見てみるのもいいと思います。
第2回では、Kさんが現在どのような心持ちで仕事や生活に向き合っているのかについて伺います。
メンタルヘルス研修
人員削減や業務負担の増加により、職場では大きなストレスを抱える人が増えています。若手だけでなく管理職の不調も増加しており、メンタルヘルス対策は組織にとって重要な課題です。心身の健康を守るためには、本人によるセルフケア、上司によるラインケア、専門スタッフによる支援、そして働きやすい職場づくりが欠かせません。また、ストレスの感じ方は人それぞれ異なるため、相互理解も大切です。インソースでは、集合研修・eラーニング・コンサルティング・ストレスチェック支援などを通じて、組織のメンタルヘルス向上を総合的にサポートしています。
セットでおすすめの研修・サービス
障がい者活躍推進研修~特性と合理的配慮を学び、スムーズに受け入れる(1日間)
本研修は、障がいのある方の特徴や雇用に関する法制度を背景から理解し、望ましい対応方法を自分事として考えられるようになることを目的とします。職場で起こりうる設定でのケーススタディ、任せたい業務の切り出しや想定問答作成などのワークを通じて、現場での実践力や問題解決力を高めます。受け入れや適切な合理的配慮に関する知識を身につけることで、障がい者の定着・戦力化が進み、人手不足の解消だけでなく、生産性向上を実現することが可能になります。
メンタルヘルス研修~ラインケア
本研修は、メンタルヘルスに対する知識を身につけ、自分だけではなく部下への対応を理解し、心身良好な職場を築いていくことが目的です。メンタルヘルスに関する法令や制度、最新トピックスを把握し、自身の健康のための適切な対処の仕方(セルフケア)を理解します。また、メンタル不全の兆候の捉え方と適切な対応の仕方などのラインケアを理解するとともに、前向きな声掛け、メンバーの承認意欲や自己効力感を高めるなど、心理的安全性ある職場を作るポイントを習得します。
レジリエンス研修~しなやかにストレスと向き合い、回復力を身につける
レジリエンス(resilience)とは「精神的回復力」のことを指します。レジリエンスを身につけることで、ストレスと上手に付き合い、困難を乗り越え成長することができるようになります。日々様々なストレスやプレッシャーにさらされるビジネスパーソンにとって、レジリエンスを身につけることは大切です。本研修では、レジリエンスを向上させるためにワークを通じて、自分と向き合いながら感情コントロールの仕方や自尊感情・自己効力感の高め方を学んでいただきます。
【AIと働く】セルフメンタリング研修~言いにくい悩みを発散し、最適解を模索する(半日間)
セルフメンタリングにおける「視点の切り替え」に焦点を当てた研修です。悩みが深刻になってしまう原因を理解したうえで、グループワークを通じて、視点を広げて解決に向けた選択肢を増やしていく方法をおさえます。加えて、考え方の整理や悩みを多角的に捉えるための補助ツールとして、生成AIを活用できる点も学びます。仕事をするうえで、心身ともによい状態でパフォーマンスを発揮するための、自分なりのセルフマネジメント術を身につけていきます。
本研修では、一部ワークでPCおよび生成AIを使用します
※ChatGPT、Copilot、Geminiなどの対話型生成AIであれば、どちらでも受講できます






