財務諸表の「6つの視点」で会社の現在地をつかむ~数字が読めれば経営の危険信号に早く気づける

企業の経営状態は、財務諸表に如実に表れます。売上や利益だけで判断すると、会社の実態を見誤ることがあります。財務諸表を正しく読み取る力があれば、企業の強みや弱み、将来の方向性を早い段階でつかめます。
本コラムでは、財務諸表を見る際に押さえておきたい6つの視点を整理し、数字から会社の現在地を把握するための具体的な方法をまとめます。数字に苦手意識がある方でも取り組みやすいよう、ポイントを順序立てて解説します。
1.数字の全体像をつかむ~「額」と「率」の両方を見る
財務諸表を見るときは、まず全体像を把握することが重要です。売上や利益といった金額だけでなく、利益率や人件費比率などの「率」を見ることで、会社の構造が見えてきます。
金額だけでは判断を誤る理由
売上が増えていても、利益率が下がっていれば収益性は悪化しています。逆に売上が横ばいでも、利益率が改善していれば効率的な経営が進んでいる可能性があります。金額と率をセットで見ることで、数字の背景が理解しやすくなります。
主要な数字を押さえる
売上、利益、主要経費、総資産、純資産などは、企業の状態を判断するうえで欠かせません。これらの数字を毎期追いかけることで、変化に気づきやすくなります。
2.数字を構造分解する~「どこで稼ぎ、どこで失っているか」を見抜く
数字を細かく分解して見ることで、企業の強みや課題が明確になります。ここでは、構造分解の視点を整理します。
部門別・商品別に分けて考える
企業全体の数字だけでは、どこに課題があるのか判断できません。部門別や商品別、顧客別などに分解することで、採算の良し悪しが見えてきます。売上が伸びているように見えても、特定の部門が赤字を生んでいるケースは珍しくありません。
在庫の「年輪」を見る
在庫を仕入日や製造日ごとに並べると、滞留している在庫が一目でわかります。古い在庫が積み上がっている場合は、販売計画や仕入れの見直しが必要です。
3.重要な経営指標を押さえる~BSから企業の実態を読み取る
財務諸表を見るとき、多くの人は損益計算書(PL)から確認します。しかし、企業の実態をつかむには貸借対照表(BS)を見ることが欠かせません。
BSが企業の「蓄積」を表す理由
PLは1年間の成績表であり、一過性の要因に左右されることがあります。一方、BSは企業がスタートしてから積み上げてきた資産・負債・純資産の状態を示しており、企業の体力を判断する材料になります。
まず押さえるべき3つの指標
BSを見る際に重要な指標は次の3つです。
- 自己資本比率(純資産÷総資産)
- 有利子負債償還年数(有利子負債÷返済原資)
- 立替運転資金(売上債権+在庫-買掛債務)
これらを確認することで、安全性、返済能力、資金繰りの状態が把握できます。
4.大きな数字から見る~「影響度の高い部分」を優先する
経営改善を進める際は、影響度の高い数字から着手することが重要です。
細かい経費より大きな経費を見る
細かい経費を削減しても、全体への影響は限定的です。人件費や家賃など、影響度の大きい経費から見直すことで、改善効果が出やすくなります。
売上比率の高い部門から手を付ける
売上予算の達成率が同じでも、売上規模が大きい部門の改善が全体に与える影響は大きくなります。優先順位をつけて取り組むことが重要です。
5.数字を時系列で追う~「点」ではなく「線」で見る
数字を時系列で追いかけることで、企業の変化に気づきやすくなります。
過去の推移を見る意味
単年度の数字だけでは、企業の状態を正しく判断できません。過去5~10年の推移を見ることで、成長しているのか、停滞しているのか、下降しているのかがわかります。
異常値に気づける
時系列で数字を追い続けると、普段と違う動きがあったときにすぐ気づけます。早期に対策を講じることで、リスクを最小限に抑えられます。
6.同業他社と比較する~「自社の立ち位置」を把握する
自社の数字が妥当かどうか判断するには、同業他社との比較が欠かせません。
業界平均との比較で課題が見える
同じ業界でも業態が違えば収益構造は大きく異なります。自社と同じ業態の企業と比較することで、改善すべきポイントが明確になります。
目標値を設定する
改善が必要な場合は、業界平均やトップ企業の水準を目標に設定し、具体的な取り組みに落とし込むことが重要です。
まとめ~数字を読み解く力が企業の変化に気づく力になる
財務諸表は、企業の状態を最も正確に示す資料です。数字の全体像をつかみ、構造分解し、重要な指標を押さえることで、企業の現在地が見えてきます。時系列で数字を追い、同業他社と比較することで、変化に早く気づけます。今日から数字を見る習慣をつけることで、企業の動きをつかむ力が身につきます。
4つの分析手法から財務諸表を読みこなす
本研修では経理・財務に求められる簿記の知識ではなく、あらゆる職種のビジネスパーソンが使えるビジネス会計の知識習得に焦点を当てた研修です。
ワークでは実際の決算資料に触れ、ディスカッション・フィードバックを通して読み深め方を学びます。財務分析のスキルを習得することで、自社の経営成績の確認や仕入先・外注先・取引先の与信管理、競合分析など、様々なシーンで活用できるようになります。
本研修のゴール
- 財務三表(PL・BS・CF)の役割と主要項目を理解できる
- 4つの財務分析手法と15個の指標の計算式と使い方を習得する
- 上場企業の決算資料を読み、分析に必要な数字を見分けられるようになる
- 財務分析手法を用いて決算書を比較し、自分なりの分析結果を述べられる
よくあるお悩み・ニーズ
- 利益やコストへの意識を高めたいが、何からすれば良いか分からない
- 損益計算書や貸借対照表から経営状況を読み取る方法を学びたい
- 経理関係の業務をしているわけではないが、決算期などに自社の状況が分かるようになりたい
- 苦手な分野なので、改めて基礎から勉強したい
セットでおすすめの研修・サービス
会社の数字の見方研修
ビジネスパーソンとして知っておくべき、売上・コスト・利益の基礎知識を習得し、損益や会社のお金の流れ等の数値感覚を身につけることができます。
演習問題を項目別に実施し、受講者の理解度を確かめながら進めていきます。
会社のしくみを知る研修~お金の流れから企業活動を理解する
本研修は、新人~若手の方を対象としています。会社の存続・成長における利益の重要性を理解したうえで、自身の行動の妥当性をはかる「数字の判断軸」を習得し、利益創出を意識した行動が取れるようになることを目指します。
具体的には、経営の基本となる「売上・コスト・利益」の関係性について、また、人時生産性やROI(投下資本利益率)といった経営上の指標について学びます。そのうえで、「自身の人件費を算出する」、「残業の有無によって人時生産性がどれだけ違ってくるかを確認する」などのワークを通じて、企業数字と実際の仕事のつながりを体感することで、働く意欲の向上につなげます。
さらに、企業活動の基本である仕入れから販売、入金までの一連の流れを学びます。その中で考えられるリスクを知ることで、会社の数字を意識して働くことを身につけていただきます。
はじめて学ぶ財務三表研修~ビジネスゲーム体感編
本研修では、財務三表の用語や基本的な構造について学び、会社経営を模擬体験することでビジネス活動と財務三表のつながりを理解する研修です。知識のインプットだけではなく、数字への意識改革や行動変容を目的としています。
前半の講義パートでは図解とケーススタディを交えて分かりやすく解説し、後半のビジネスゲームパートでは仕入・販売などを行った結果を財務三表に落とし込み、期末の数字を競います。ゲーム内でPDCAサイクルを回すことで先を読む力や判断力、チームワークも養われ、仕事において必要な行動を自ら考え、実行する「生きた数字力」を身につけることができます。





