「焦り」が不注意と怠慢を生む~タイムマネジメントの視点でコンプラリスクを低減
![]()
「タスクが山積みで、頭が真っ白になってしまう」「気づいたら大事な報告を忘れていた」「確認すればよかったのに、ついこれくらいでいいかと流してしまった」
こうした経験は、多くのビジネスパーソンにとって身近なものではないでしょうか。業務の繁忙期、納期直前、クレーム対応、トラブル発生。焦りの感情が生まれるのは、誰にとっても避けがたいことです。しかし、その焦りが積み重なると、注意力が低下し、ミスや事故の芽を生み出します。
焦りがミスを誘発するメカニズム
焦っているとき、人は時間が足りないと感じ、無意識のうちに判断を簡略化しようとします。心理学ではこれを認知的負荷の増大と呼びます。タスクが多すぎる、締め切りが迫っている、上司からのプレッシャーが強い。こうした環境下では、脳が処理できる情報量が限界に達し、いつもなら気づく小さな異変に気づけなくなるのです。
さらに、焦りの中では今の状況を早く抜け出したいという欲求が強まり、正確さよりもスピードを優先してしまいます。結果、これくらいなら大丈夫だろうといった油断が生まれ、不注意や怠慢へとつながります。
つまり、焦りは注意を奪い行動を雑にするという2重のリスクをもたらすのです。
業務過多による諦めの感情
業務量が多い職場や仕組みの整備が途上の職場では、ミスの原因を意識の低さや確認不足といった個人の問題として片づけがちです。しかし、現場の声に耳を傾けると、「何から手をつけたらいいか分からない」「頑張っても終わらない」といった諦めの感情が背景にあるケースが少なくありません。
これは、慢性的な業務過多と、優先順位の不明確さが招く構造的な問題です。人は、コントロールできない状態が続くと、どうせ無理だと無力感を抱き、モチベーションが著しく低下します。その結果、「確認を怠る」「指摘を避ける」「報告を後回しにする」など、リスクを拡大させる行動が連鎖的に起こります。
焦りを防ぐ第一歩は見通しを持つこと
焦りを完全になくすことはできません。重要なのは、焦りに支配されない環境をつくることです。そのために最も有効なのが、先の見通しを持つタイムマネジメントです。
タイムマネジメントというと、スケジュール管理やToDoリストといったテクニカルな手法を思い浮かべがちですが、真の目的はそこではありません。本来のタイムマネジメントとは、「自分が今、何にどれだけの時間を使っているのか」「この先、どのような時間の使い方をするべきか」を意識的に設計することです。たとえば以下のような習慣が効果的です。
- 1日のはじめに今日のゴールを1つ決める
全てのタスクを完璧にこなそうとするのではなく、「今日はこれを終えたらOK」という軸を持つと、焦りが軽減されます - 15分単位でタスクを見積もる
時間の粒度を細かく設定すると、作業の見通しが立ち、漠然とした不安を減らせます - あえて余白時間を残す
突発的な対応が入るのは当然です。バッファを設けておくことで、想定外への耐性が高まります
指導者に求められる理解
人事担当者や現場リーダーは、部下の不注意や怠慢を気の緩みと捉えがちです。しかし、その裏には焦りや追いつめられた感覚が潜んでいることを理解する必要があります。
たとえば、定例会議でなぜミスをしたのかを問い詰めるだけでは、本人は防衛的になり、再発防止にはつながりません。相談しやすい心理的安全性を確保し、冷静に優先順位を示すことが、チーム全体の安定につながるのです。
タイムマネジメント研修~仕事を効率的に進めるための時間管理を学ぶ
本研修では、風通しのよい職場とはどのような環境であるべきかを正しく理解し、職場改善するために、管理職として必要な意識・取り組みについて学びます。
本研修のゴール
- 自分のワークスタイルの課題を認識し改善案を立てる
- 考える仕事こなす仕事完全に時間を拘束される仕事少しなら時間を自由に使える仕事それぞれの効率の良い時間の使い方を理解する
- 仕事の目的・QCDRを明確にすることで手戻りの少ない計画を立てることができる
- 仕事を緊急度と重要度で整理し、優先順位をつけることができる
よくあるお悩み・ニーズ
- 業務が多すぎて、どれから着手すべきか迷ってしまう
- 予定していた業務と、急に入ってきた業務のどちらを優先するか判断に迷うことが多い
- 計画を立てても計画通りに進まず、気づけば締切直前になってしまう
- 業務に追われて仕事が終わらない、残業時間を減らしたい
セットでおすすめの研修・サービス
人格の陶冶研修シリーズ
ビジネス現場で直面する相反する価値観や葛藤の中で、正解のない判断や行動に向き合う力を磨く研修です。
受講者は、自身の考え方や行動のクセを見つめ直し、倫理観・判断力・協調性など人としての基本姿勢を強化することを目的としています。
単なる知識習得ではなく、実務に即した演習やディスカッションを通じて、日常業務やチーム運営での意思決定力向上に結びつける内容です。
不正リスクアセスメント付き ワークショップ
従業員の不正リスクを機会・動機・正当化の3要素で分析し、組織内の認識統一と対策策定を目的としたプログラムです。
Webアセスメントで現状を可視化し、結果をもとにワークショップで現場の具体的行動や改善策を検討します。最終的に、不正が起きにくい職場環境の構築と従業員の意識向上を目指します。
チームマネジメント研修~仕組み作りと推進力を学ぶ
組織としての成果を上げるにあたって重要なチームマネジメントに焦点を当てた、リーダー層向け研修です。
成果を上げるための仕掛けづくりと体制構築を担うマネージャーとしての役割と、目標達成に向けてメンバーを率先垂範するリーダーとしての役割の両面から、チームマネジメントのあり方を実践的に伝えます。





