なぜ辞める？当事者の声から紐解く基礎自治体職員の離職防止と組織づくりのポイント～評価・環境・やりがい改革

基礎自治体で若手・中堅職員の離職が増加しています。総務省のデータによると、地方公務員採用試験の受験者数は過去10年で約28％減少し、30歳未満の自己都合退職者も２倍以上増加しています。かつては「安定した職業」の象徴であった公務員ですが、昨今の転職需要の高まりの波は行政現場にも例外なく及んでいます。

過去10年間の競争試験における受験者数、合格者及び競争率の推移

出典：総務省「地方公務員における働き方改革に係る状況～令和5年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果の概要～」（最終アクセス：2025/11/12）

退職者が語る「やめたい理由」

自治体退職者の声には、「昇進的な抜擢がなく、頑張るほど難易度の高い業務ばかり任されたり、業務の負担が集中する」「頑張っても評価の差がつかない」といった不満が多くあります。紙文化や旧式システムにより業務効率が上がらないこと、頻繁な異動で専門性が身に付かないこと、やる気のない同僚や硬直的な風土なども離職の要因として挙げられます。

また、業務特性上、成果が定量的に測りにくい傾向があるため、成果と報酬が連動しにくく年功序列の色が強い評価制度が、モチベーションの低下を招いていると言えます。

給料報酬より、人間関係や職場環境の改善、やりがい創出が鍵

地方公務員の給与制度は法令等で定められており、職務と責任に応じて設定されるため、個別に大幅な変更を加えることは簡単ではありません。そのため、給料の引き上げよりも、人間関係や職場環境の改善、やりがいを創出することが離職抑制には重要です。

例えば、職場内のコミュニケーションの改善、デジタルツールを活用した効率的な業務や業務プロセスの見直しを進め職場環境を改善すること、さらに達成感や他人からの承認を実感できるマネジメントやフィードバックの仕組みづくり、自律的に学べる教育機会の提供などのアプローチが有効です。

ハーズバーグの二要因理論から見る職場の課題

心理学者ハーズバーグが提唱した「二要因理論」では、人の働く意欲を「動機づけ要因」と「衛生要因」に分けて説明しています。「動機づけ要因」は達成感や承認など満足を高める要因、「衛生要因」は給与や職場環境など不満を防ぐ要因です。衛生要因を整えるだけでは満足は得られず、「動機づけ要因」が特に重要となります。つまり、職員が「辞めたい」と感じるのは、衛生要因の不足だけでなく、動機付け要因の欠如が影響していることが考えられます。

衛生要因を整える

評価と報酬の納得感の創出：
成果と行動の両面で評価し、定期的なフィードバック面談を実施する。
業務のデジタル化：
紙やハンコに頼らない業務フローへ移行しフレックスや在宅勤務など柔軟な働き方を導入する。
心理的安全性の確保：
上司が傾聴・承認を意識したマネジメントや、ハラスメントを防止する風土をつくる。

動機付け要因を高める

仕事の意義を共有する：
住民の声や成功事例を共有し、自分の仕事が地域や組織にどう役立つかを伝える。
キャリア支援：
希望や適性を踏まえた配置・ジョブローテーション、専門分野を深める研修機会の提供、若手の意見を反映できる場づくりなど、職員が自分のキャリアを主体的に描ける環境を準備する。
挑戦と学びの機会：
若手の提案を評価し、プロジェクト型の仕事や自律的な学びの場を用意する。

ハーズバーグの２要因理論