便利さの裏に潜む危険~デジタル時代に広がるサイバー攻撃の入り口

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が加速する今、デジタル化の恩恵とともに、サイバー攻撃のリスクもかつてない速度で拡大しています。昨今ではランサムウェアによる被害が広がっており、経営を揺るがす深刻なリスクとなっています。
本コラムでは、DXとセキュリティがいかに表裏一体であるかを示し、デジタル化を安全に進めるために欠かせない視点を解説します。
DX推進の裏に潜むリスク~サイバー攻撃の現状
DXの推進によって業務効率化や新たな価値創出が進む一方で、IT環境は急速に拡大・複雑化し、サイバー攻撃のリスクも高まっています。
特に、データ活用が進むことで企業の情報資産の価値が増し、それを狙うランサムウェアの攻撃が激化しています。ランサムウェアは、企業のシステムに侵入してデータを暗号化し、復旧のために「身代金」を要求する悪質な攻撃です。被害を受けた企業では、システム停止による業務中断、商品出荷の遅延、顧客対応の混乱などが発生し、経営への打撃は甚大です。
サイバー攻撃による実際の被害例
- 物流基幹システムが停止し、入出庫や配送が不能に
- 在庫データの喪失により、営業活動が一時停止
- 顧客情報の流出による企業イメージの低下
- 取引先からの契約打ち切りや訴訟リスクの発生
こうした被害は、特定の業種や規模に限らず、あらゆる企業に起こりうる現実です。
DX推進で増加する攻撃の入り口
DXによって企業のIT環境は複雑化し、以下のような「新たな侵入口」が増えています。
- クラウドサービスの利用拡大:
社外との接続が増え、従来の境界型防御だけでは限界が生じている - リモートワークの普及:
VPNや個人端末接続が増え、脆弱性が標的にされやすい - API連携やIoTデバイスの導入:
外部接続が増え、攻撃対象が広がっている
このように、クラウド活用や外部連携でDXの恩恵を受けることが、攻撃の入り口を増やすことにもつながっているのです。さらに、DXは業務システムの統合やデータの一元管理を進めました。複数部門の情報を一つの基幹システムで管理することで、業務効率や意思決定のスピードは向上します。
しかしその一方で、こうした集中型の構造がひとつ止まれば全部止まるというリスクを抱えることとなります。ランサムウェアなどの攻撃で統合システムが停止すれば、物流・営業・顧客対応など、全社的な業務が同時に麻痺する可能性もあるのです。利便性と効率性を追求した結果、攻撃者にとって狙いやすい構造が生まれてしまっている――これが、DX推進に伴う皮肉なリスク構造と言えるでしょう。
DX推進とセキュリティの「両輪思考」
経営戦略によるDX推進は、企業の競争力を高めるための重要な取り組みです。しかし、安全な環境が整ってこそ、デジタル化の恩恵を最大限に活かすことができます。経営層はDXとセキュリティの「両輪」を捉えることが急がれます。サイバー攻撃は、技術的な防御だけでは防ぎきれません。「人の操作ミス」や「不審メールの開封」など、日常業務の中にも人的リスクが潜んでいます。
全従業員が「自分にもできることがある」と理解し、日常業務に潜むリスクに気づいて対策を実践する姿勢が求められます。そのためには、組織全体の定期的な知識のアップデートと、IT部門任せにしない対策の積み重ねが最大の防衛力となります。
情報セキュリティ研修~近年の重大な脅威から学ぶリスク対策(半日間)
独立行政法人情報処理推進機構の「情報セキュリティ10大脅威」に選出されている、個人情報漏えいやサイバー攻撃などのセキュリティインシデントとその対策を学ぶ研修です。
さまざまな事例を取り上げながら、組織的、人的、技術・物理的なセキュリティ対策について理解を深めます。リアルな現状を知ったうえで、自組織においてどのような対策が有効かを見出せるプログラムです。
よくあるお悩み・ニーズ
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情報セキュリティ研修~身近な事例から社内リスクを抑制する
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業務で使用するツールにも脆弱性があることを知り、正しい使い方を再認識します。セキュリティ対策のステップを身につけます。
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便利さの裏にある落とし穴に気づく力を養うとともに、組織全体でリスクを防ぐ文化の構築を目指します。


