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リスクマネジメントが形骸化する理由とは?現場の判断力を養う実務設計

「リスクマネジメント」という言葉は、多くの企業で既に定着しています。規程の整備や教育の実施、リスクの洗い出しなど、取り組みが進んでいる組織も少なくありません。

一方で、現場では同じ事故やミスが繰り返され、「対策はしているはずなのに変わらない」と感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。こうした違和感の背景には、制度やフレームワークそのものではなく、現場の判断や行動につながらない構造があります。

本記事では、リスクマネジメントが形骸化しやすい理由を整理したうえで、現場で機能するために何が欠けているのか、実務担当者が次に検討すべき観点を整理します。概念の説明に留まらず、判断が止まりやすいポイントと、その乗り越え方を具体的に見ていきます。

リスクマネジメントが「形だけ」になりやすい理由

多くの企業では、規程や手順、教育の仕組みが整備されています。それでも同種の事故やミスが現場で繰り返される場面が見られます。危機管理担当者が年度初めに規程を見直し、教育計画を立てても、実際の作業時に現場の判断や行動が変わらないケースが残ります。この差は意識や風土ではなく、制度と運用の接続点に原因があります。

制度設計と現場運用のズレ

リスク管理規程やマニュアルは抽象度が高く、現場作業者が「この状況で何を選ぶか」を即座に判断できる形になっていない場合があります。担当者が文書を配布し説明会を実施しても、日常業務の判断基準に落とし込まれず、結局は経験や慣習に頼った行動が続きます。

事故・ヒヤリハットが「共有」で止まってしまう問題

事故報告書やヒヤリハット情報を集約し、定例会で共有する運用は多くの職場で行われています。ただし「読む」「注意喚起する」で終わると、次の行動には結びつきません。別拠点や別部署の担当者が自分の作業に置き換えて考える機会がなく、同じ判断ミスが再発します。

リスクマネジメントの基本構造を整理する

現場でリスクマネジメントが機能しない場面を見ていくと、用語や役割の理解が曖昧なまま運用されているケースが多く見られます。制度や資料は整っていても、何を平時に決め、何を有事に判断するのかが整理されていないと、実務では迷いが生じます。ここでは定義を並べるのではなく、誤解されやすい構造に絞って整理します。

リスクマネジメントと危機管理の違い

リスクマネジメントは、事故やトラブルが起きる前に想定し、判断基準や行動の優先順位を決めておく取り組みです。一方、危機管理は、実際に事故や不祥事が発生した後に、被害拡大を防ぎ、復旧や説明対応を行う活動を指します。平時の想定が不十分なまま危機管理対応だけを強化しても、現場では同じ判断ミスが繰り返されます。

「リスクを洗い出す」と「行動が変わる」の間にある壁

多くの企業でリスクアセスメントや一覧表の作成は行われています。しかし、評価結果が管理資料として保管されるだけでは、現場の行動は変わりません。作業者が判断に迷う場面で参照できる基準や選択肢に落とし込まれていないためです。リスクを列挙する作業と、判断を変える設計の間に断絶が生じています。

現場で機能するリスクマネジメントと、機能しないものの分かれ目

同じ規程や教育制度を導入していても、事故やトラブルの発生状況には差が出ます。この違いは、制度の有無ではなく、現場でどのような学習と判断訓練が行われているかにあります。リスクマネジメントが機能するかどうかは、教育の設計段階でどこまで現場の判断に踏み込めるかで分かれます。

ルール理解型教育と判断訓練型教育の違い

ルール理解型教育は、規程や手順を正確に覚えさせる点では有効です。ただし実務では、複数の条件が重なり、手順書どおりに進まない場面が発生します。その際に必要なのは、どの情報を優先し、どの行動を選ぶかを考える力です。判断訓練型教育では、担当者が具体的な状況を想定し、自ら判断を下す練習を行います。教育担当者がこの違いを意識せずに設計すると、知識は増えても行動は変わりません。

汎用的な教育と自社事例ベース教育の違い

汎用的な事例教材は、理解を助ける一方で、自分の業務に置き換えにくい場合があります。しかし、自社で実際に起きた事故やヒヤリハットを使った教育は、作業手順や判断の前提条件を具体的に想起させます。現場担当者が「自分ならどうするか」を考える機会が生まれ、判断の基準が明確になります。どの事例を教材化するかを選ぶこと自体が、リスクマネジメントを機能させる重要な作業です。

実務担当者が次に検討すべきリスクマネジメントの進め方

リスクマネジメントを見直そうとすると、洗い出しや制度改定から着手しがちです。ただ、すべてを一度に改善するのは現実的ではありません。担当者が判断を止めずに前に進めるためには、着手順と運用の組み込み方を整理する必要があります。ここでは、既存の体制を前提に、次に検討すべき実務上のポイントを整理します。

どのリスクから着手すべきかの考え方

最初に対象とすべきは、重大事故につながりやすいもの、発生頻度が高いもの、現場で判断が割れやすいものです。特に、過去に何度も起きているにもかかわらず、対策が注意喚起で止まっているリスクは優先度が高くなります。担当者は事故報告書やヒヤリハット記録を確認し、「なぜ判断が分かれたのか」「どこで迷いが生じたのか」を基準に整理することが重要です。

教育・OJTにどう組み込むか

集合研修だけでリスク意識を定着させるのは難しいのが実情です。日常業務やOJTの中で、判断が必要な場面を意図的に取り上げる設計が求められます。例えば、業務前の短時間ミーティングで事例を共有し、その場で判断を確認する運用が考えられます。担当者は「いつ」「どの業務で」「誰が判断を確認するか」を決め、一度きりで終わらない仕組みを作る必要があります。

リスクマネジメントを現場判断につなげる一つの選択肢

ここまで整理してきたとおり、リスクマネジメントが機能しない要因は、判断訓練の不足や自社事例が教材化されていない点、事故報告書が共有で止まっている点にあります。これらを同時に解消しようとすると、既存の集合研修や文書配布だけでは対応が難しくなります。それを解決する選択肢として位置づけられるのが、インソースが開発したサービス、事故報告書を起点に判断訓練へつなげる「AI-OJT」です。

AI-OJTは、社内に蓄積された事故報告書やヒヤリハット資料を読み取り、数分でケーススタディ教材へ変換します。教材は「自分ならどう判断するか」を問う構成となり、現場で迷いが生じやすい場面を具体的に扱えます。汎用事例ではなく自社事例を使うため、判断基準を業務に即した形で共有しやすくなります。

AIが企業独自のケーススタディを生成し、現場での事故を未然に防ぐプラットフォーム「AI-OJT」

現場から上がってくる事故報告書を、有効活用したい。 現場での事故や不祥事を未然に防ぐ教育を、もっと実効性のあるものにしたい。 そんな企業の声に応える形で誕生したのが、事故予防に特化した生成AIプロダクト「AI-OJT」です。

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セットでおすすめの研修・サービス

リスクマネジメント研修~未然に防ぐ方法を学ぶ

リスクを未然に防止にするためには、リスクマネジメントに関する視野を広げ、そして、自社のリスクについてあらゆる角度から多面的に考えられるようになる必要があります。

本研修では、一般的なリスクや事例など外部の視点を学ぶことによって、リスクに対する視野を広げます。また、自社を取り巻くリスクについて、内部・外部に存在する様々なリスクを洗い出し、対策の優先度を実際に評価していただきます。リスクが顕在化した後の取り組みや、リスク管理を行う際に組織全体で気を付けるべきことなども合わせて学び、すぐに現場に持ち帰って活用をいただける内容となっています。

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経営幹部のためのリスクマネジメント研修(3日間)

組織の経営幹部には、リスク(まだ現実化していない危険)とクライシス(現実化した危機)をひと続きにとらえ、総合的な経営判断として危機管理をすることが求められます。

本研修では、経営トップの視座で、リスクマネジメントのPDCAから財務・法制度との連携、企業文化改革まで、幅広い観点を取り上げます。また、リスク管理を「守り」だけでなく、信頼強化・ブランド価値向上という「攻め」につなげるための、迅速な初動やリスクコミュニケーションなども学びます。経営トップ層の方が、事業を安全に継続していくために必ず押さえておきたいポイントを、網羅的に学べる内容です。

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