不祥事を防ぐには~内部統制における管理職の役割と「人」に焦点を当てた意識改革がカギ【事例に学ぶ】
現代社会において内部統制の改善に取り組む
内部統制は、企業や組織の健全な発展を支える重要な基盤です。コンプライアンスの確保、業務の効率化、財務報告の信頼性向上、資産の保全など、多面的な役割があります。
これらを果たすことで、企業価値の向上や持続的成長に貢献します。そのため、経営者や従業員が一体となって、継続的に内部統制の改善に取り組むことが重要です。
内部統制の主軸となるリスクとは
内部統制の主軸となるリスクには次のようなものがあります。
リスクの種類 | 主な内容 |
---|---|
不正・コンプライアンスリスク | 横領・粉飾決算・贈収賄・法令違反 |
財務報告リスク | 会計ミス・不適切な財務管理 |
IT・セキュリティリスク | サイバー攻撃・情報漏洩・システム障害 |
業務リスク | 生産の遅延・人的ミス・業務プロセスの不備 |
外部環境リスク | 市場変動・法規制変更・災害 |
※「リスクをゼロにする」のではなく、「リスクを管理し、最小限に抑える」ことが重要
※リスクは日々変化するため、定期的な見直し・改善が不可欠
内部統制と共同体倫理について考える
内部統制と共同体倫理は相互補完的な関係にあります。内部統制がルールとして倫理的行動を促し、共同体倫理がそのルールを実践する文化を形成することで、組織全体の健全性が保たれます。組織が持続的に発展するためには、単に規則を設けるだけでなく、それを支える倫理観を醸成することが不可欠です。
内部統制における管理職の役割
全体最適のための内部統制とは
内部統制とは、不正防止や業務の適正化だけでなく、組織全体の持続的な成長を支える仕組みです。特定部門や個人の都合に偏るのではなく、組織全体の方向性に沿った意思決定や連携体制の構築が重要です。これにより、透明性と一体感のある経営が実現します。
管理職に求められる主な役割
- 内部統制の現場責任者として、ルールの運用状況を把握・管理する
- 部門間の連携促進により、情報や課題をスムーズに共有
- 経営層と現場の橋渡し役として、方針の伝達と現場課題の吸い上げを行う
- コンプライアンス文化の醸成に向け、日常業務に落とし込んで指導・浸透させる
事例に学ぶ:組織的な不祥事の背景と再発防止
ある企業で、帳簿上の数値改ざんや虚偽報告が長期間にわたり放置されていた。内部統制が実質的に機能していなかったことが、後に社外の監査で発覚し、組織ぐるみの問題として大きな批判を受けた。
このような事例では、次のような問題が共通して見られます。
課題の本質
- 倫理観より数値達成が優先される組織風土
- 不正を見逃す形骸化した監査体制
- 内部通報が機能せず、声を上げにくい環境
再発防止に向けた取り組みのポイント
不祥事の再発を防ぐためには、制度の見直しだけでなく、組織全体の意識改革が求められます。
- トップダウンでのコンプライアンス経営の推進
→経営層自らが「不正を許さない」姿勢を明確にし、日常に落とし込む - 実効性のある監査とIT活用
→単なる形式ではなく、データ分析やモニタリング機能で早期検知を強化 - 内部通報制度の再整備
→匿名性の確保や報復防止策を取り入れ、通報しやすい環境をつくる - 業務プロセスと管理ルールの再点検
→単にルールを設けるだけでなく、「守りやすい」「機能する」制度設計にする
内部統制を全体最適の視点で機能させるには、制度だけでなく、それを動かす"人"の意識が重要です。全社的な視野を持った行動が、信頼される組織づくりへの第一歩となります。
内部統制研修~組織の健全性を保ち、企業価値を向上させる
危機の際には改めて自社の内部統制を見つめ直し、リスクマネジメントの課題の解決が必要となります。本研修は、内部統制の概要や管理者としての役割認識、リスクマネジメントなどを学んでいただく研修です。内部統制の基本的な知識や考え方を身につけます。
よくあるお悩み・ニーズ
- リスクマネジメントや内部統制についてあまり理解できていない
- 部長や役員として、リスクマネジメント・内部統制においてやるべきことがわからない
- リスクマネジメント、内部統制についての自社内での改善点や強化のポイントを把握していない
本研修の目標
- 組織内でリスクが発生した時に対応できる組織体制(内部統制)について理解できる
- 内部統制上、部長や役員に求められる役割を理解できる
- 部長や役員が行うべきリスクマネジメントを習得できる(環境の変化による組織的な対応)
- 今後、組織内で行うべき内部統制強化の実行プランを整理できるようになる
セットでおすすめの研修・サービス
不正リスクアセスメント付き ワークショップ
本サービスは、従業員様の回答を完全匿名化できる独自開発のアセスメントシステムを用いて、組織の不正に関するリスク度合いを数値化し、その内容や背景要因を可視化します。
アセスメントで得られた客観的なデータをもとに、全従業員様を対象としたワークショップを実施し、不正防止のための知識を深め、組織全体で実効性の高い対策を議論し、行動変容を促します。
コーポレートガバナンスと内部統制研修(1日間)
コーポレートガバナンスと内部統制の違いをふまえながら、それぞれの概要や実現手段、管理者に求められる役割、取るべき具体的な行動などを学びます。
コーポレートガバナンスと内部統制の基本的な知識や考え方を、同時に身につけたい方におすすめの研修です。
リスクマネジメント研修~内部統制基礎編(1日間)
「内部統制とは何か」の理解と、内部統制を行ううえで知っておくべき知識の習得を目指す研修です。
具体的にはまず、内部統制の目的やフレームワーク、金融商品取引法と会社法における内部統制の違いなどを知ることで、「内部統制とは何か」についての理解を深めます。そのうえで、「統制環境」「リスク環境」「統制活動」「情報と連絡」などの観点から、内部統制をマネジメントするうえで求められる知識を身につけていきます。
管理職向け意識調査
課題発見・戦略思考・部下育成などの管理職層に必要なスキルをどの程度意識できているか、自己評価により見える化します。
管理職研修を企画する際に事前調査として行うことで、自組織の管理職層全体の強みや課題が分かり、より効果の高い教育が実現できるようになります。また、この調査結果は、管理職を中心とした全社の人材育成体系・人事評価制度の見直しに活用することもできます。