改めて知るDXリテラシー~経営層・現場・制度で実践できる6つの仕組み

「DXを進めたいのに、現場から理解が得られない」
「ツールを導入しても活用が進まない」
DX推進に携わる方なら、一度はこのような課題に直面したことがあるのではないでしょうか。多くの組織で共通するのは、組織内のDXリテラシーに格差があり、従業員一人ひとりの理解や意識がバラバラな状態であることです。
結果として、業務変革や文化改革にまで踏み込めず、プロジェクトが停滞してしまいます。その停滞を防ぐには、DXリテラシーと意識の底上げが欠かせません。
DXリテラシーとは、デジタルで成果を生み出す力
DXリテラシーとは、単にITツールを使えることではなく、デジタル技術を活用して業務改善や新たな価値創出ができる能力を指します。
経営層であれば戦略策定や投資判断、現場では業務プロセス改善の視点、IT担当者には技術的知識と運用力が求められます。組織全体でこの能力を底上げすることが、DX推進の鍵です。
ITリテラシーとの違い
ITリテラシーは、主にパソコン操作やソフトウェアの使い方、基本的なデジタルツールの扱い方といった技術的スキルを指します。ITリテラシーが「道具の使い方」であるのに対し、DXリテラシーは「道具を使って成果を生む力」といえます。
経済産業省が定める「DXリテラシー標準」とは
経済産業省は、ビジネスパーソンが身につけるべきDXの基礎知識・スキル・マインドを示す指針として、「DXリテラシー標準」を策定しています。この標準は、誰もがDXを理解し実践できるための共通の基盤として、以下の要素で構成されています。
- Why(なぜ):DXの背景や社会・顧客・競争環境の変化を理解する
- What(何を):DXで活用されるデータや技術を理解する
- How(どうやって):データや技術を実務で活用する方法を習得する
- マインド・スタンス:新しい価値を創造するための意識や態度を養う
具体的な学習項目としては、データ分析手法や顧客視点での課題発見、AIやIoTなどの技術を活用した業務改善や新規事業創出の事例が挙げられます。これにより、従業員は単なる知識習得ではなく、実際の業務や組織変革にDXを応用する力を身につけることができます。
現場が主体的に動くための当事者意識の育て方
DXリテラシーを高める第一歩は、現場の一人ひとりに「自分ごと化」してもらうことです。そのためには、次のような視点を持つことが大切です。
- データ活用の重要性を理解する
勘や経験に頼らず、データに基づいて判断する力を身につけます。 - 業務プロセスを改善する視点を持つ
「この業務は本当に必要か?」「効率化できる余地はないか?」と問い直すことを習慣づけます。 - 顧客価値を再定義する
デジタル技術によって、顧客にどのような新しい体験や価値を提供できるのかを考えます。
これらの視点を持つことで、従業員の主体性が高まり、単なる「システム利用者」から「DXを推進する担い手」へと変わっていきます。
DXを浸透させる6つの仕組み~経営発信から人事制度まで
DXは技術導入だけでなく、組織全体の理解と協力があって初めて成果を生みます。個人のリテラシー向上と組織文化の醸成を並行して進めることが、DXを成功させることにつながります。
1.経営層は投資判断とメッセージをセットで示す
DXを本気で進めるには、まず経営層の強いメッセージが欠かせません。単なるスローガンではなく、実際の経営戦略や投資判断と連動した発信が必要です。
例えば「2030年までに売上の30%をデジタルサービスから創出する」という具体的な目標を示すと、従業員はDXが一過性ではなく組織の未来像に直結するものだと理解できます。また、発信は一度で終わらせず、組織内全体の会議などあらゆる機会で繰り返すことが重要です。
2.現場リーダーをDXアンバサダーに育てる
現場では「自分の仕事にどう関係があるのか」が実感できないと浸透しません。その役割を担うのが部署ごとのリーダーです。アンバサダーとなるリーダーには、部内勉強会の主催や、部内の相談窓口としての役割などを任せると効果的です。リーダー自身がDXリテラシーを高める教育を受けたうえで、現場で旗振り役を担えば、経営と現場をつなぐ架け橋になります。
3.小さな業務改善から始める
DXは壮大な変革に見えますが、従業員にとっては日常業務の延長線での「ちょっとした改善」から始まります。
例えば「Excelでの手作業集計を自動化し、1日1時間削減できた」といった小さな成果です。これを組織全体に共有し、「デジタルで仕事が楽になる」感覚を体験してもらうことが重要です。社内ポータルや表彰制度で成功事例を可視化すれば、成功が連鎖していく仕組みになります。
4.部署横断での学び合いと連携
DXリテラシーは部署ごとに閉じていては育ちません。営業、製造、バックオフィスなどの異なる部門が一緒に学ぶ場を設けることで、「自分の業務をデジタルで改善する」視点が広がります。
特に、部署横断のプロジェクトを経験すると、デジタルの活用が組織全体の成果につながる実感が得られます。
5.継続的な学習インフラの整備
eラーニングやナレッジ共有の仕組みを常設し、従業員が必要な時に学べる環境を整えることが必要です。例えば、社内ポータルに「DX学習ライブラリ」を設け、基礎から応用まで動画や資料を蓄積していき、さらに「学んだことをどう活かしたか」を投稿できる仕組みを加えれば、学びが実践につながるサイクルができます。
6.人事制度との連動
DXリテラシーが本当に浸透するのは、人事評価やキャリア形成に結びついた時です。DX推進に貢献した従業員を評価したり、昇進要件に「データ活用スキル」などを組み込んだりすることで、従業員はリテラシーを高めることが「自分の成長」につながると実感できます。
このように、トップダウンの発信とボトムアップの実践を結びつけ、学びを仕組み化することがDXリテラシー向上のポイントです。
(半日研修)DXリテラシー向上研修
DXリテラシーをいかに組織に浸透させるかを学ぶ研修です。経済産業省が策定した「DXリテラシー標準」をかみ砕いて、DX推進に最低限必要な知識とマインドをお伝えします。
よくあるお悩み・ニーズ
- DXを推進したいが、組織内にリテラシーの低い人が多く理解を得られない
- DXリテラシーを向上させるために、何から始めればよいかわからない
- そもそもDXを推進するために必要な知識、スキルがわからない
研修のゴール
- DXリテラシー向上のステップを理解できる
- DXリテラシーを向上させるための、今後の行動を考えられる
- DXを推進するために必要な知識を理解できる
セットでおすすめの研修・サービス
(半日研修)DX理解研修
DXの基礎知識から人材育成方法、組織内のDX実現の具体例を学ぶプログラムです。今これらが強く求められる社会的背景について改めて確認し、実際にDXを成功させている組織の事例を参照しながら、推進のためにまず何から始めていけばいいかを考えます。
DXについて右も左も分からないという方でも、3時間で基本知識を身につけられる設計です。
組織のDXを推進するために社内人材を育成する支援プラン
全従業員を対象に、DX推進に向けた体制づくりから、「全社員へのDX知識付与」「既存業務を整理するDX推進人材の育成」「AIを活用できるスペシャリストの育成」までを長期的に支援する研修プランです。
DXリテラシーアセスメント
「デジタルスキル標準(DXリテラシー標準)」に準拠したアセスメントサービスです。組織内人材のDXスキルを客観的に評価し、伸ばすべき領域を可視化します。DX推進に必要な人材育成の第一歩にお役立ていただけます。



