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バックオフィスの業務を効率化させる3つの選択肢~外注・EUC・API活用の特徴と利点

バックオフィスの業務は企業を支える重要な基盤です。しかし現場では、同じ入力の繰り返しや紙・メールによる承認の滞留など、単純業務が積み重なりやすい傾向にあります。こうした非効率を改善する代表的な手法は、次の5つに整理できます。

  1. 業務を委託する(BPOサービス等を利用した外注)
  2. 業務フローを見直して運用を統一する(業務の標準化)
  3. 会計・人事・販売などの業務系ソフトやクラウドを導入する(業務システムの導入/一体化)
  4. 繰り返し作業の自動化(画面操作・申請の自動化)
  5. システム間を連携しデータ受渡しを自動化する(API活用による連携)

これらは大きく3つの選択肢に集約できます。すなわち「外注」「EUC(End User Computing)」「API活用」です。

本コラムではまず3つの選択肢それぞれの要点を解説し、続いて業務特性ごとの改善手法を表にまとめます。最後に、"異なるシステム間をまたぐ"API活用について詳しく説明します。

業務効率化の3つの大きな選択肢

    1、専門会社に委託する(外注)

    外部の専門業者に作業代行やシステム構築を依頼する方法です。処理量が多い定型業務や専門知識を要する領域に適しています。作業範囲・成果物・責任分担を明確に定め、社内に窓口(担当者)を置くことで運用が安定します。

    2、EUCで作る(標準化+業務ソフト導入+自動化を含む)

    ここでいうEUC(エンドユーザー・コンピューティング)はソフトウェア開発の専門家ではない現場の人が自身の業務に必要なツールを作る方法です。具体的には次の取り組みを含みます。

    • 業務フローの見直しと標準化により、手戻りや属人化を抑える
    • 業務システムの導入により、データと権限を一元管理する
    • 必要に応じて、自社開発で不足機能を補完する

    柔軟性は高い一方で、工数と、ある程度のスキルを要するため、まずは業務の標準化や既存ソフトの導入から段階的に進めるのが現実的です。

    3、APIを活用する

    API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)は異なるシステム同士をつなぎ、データや機能を受け渡しする仕組みです。既存資産を、別のアプリケーションやシステムと連携をさせ、今のシステムに無い「機能」を利用できるようにします。具体的な活用としては、機能をゼロから開発するのではなく既存のAPIを利用することで、開発時間とコストを削減できます。

バックオフィスに多い非効率な作業と、自社で行える解決手段

バックオフィスには入力・承認・照合などの定型的かつ反復的な業務が多く存在します。業務の特性別に適した解決策を整理すると、下表のとおりです。

分類 主な業務 繰り返しの特徴 選択肢(解決手段)
操作 データ入力 同じ操作を繰り返す 繰り返し作業の自動化
システム間でのデータ移動 同じシステムを行き来する システムをつないで自動連係(API)
レポート作成 同じ形式で出力する 業務用ソフトを入れる
申請書の作成 同じフォーマットに入力する 仕事の流れを見直す・そろえる(標準化)
データ照合 同じ比較をする システムをつないで自動連係(API)
時間 アカウントの更新 同じ更新作業をする システムをつないで自動連係(API)
定期処理 同じ時間に処理する 繰り返し作業の自動化
対人 レポート送付 同じ相手に送る 繰り返し作業の自動化
催促 同じ通知・リマインドをする 業務用ソフトを入れる(カレンダー機能など)
情報 データ確認 同じ情報を確認する システムをつないで自動連係(API)
資料検索 同じ資料を参照する 業務用ソフトを入れる(クラウドストレージ)
プロセス管理 同じフローをたどる 業務用ソフトを入れる(業務管理システム)
フロー 承認業務 同じ承認フローを通す 業務用ソフトを入れる(電子承認)
点検 同じチェックリストで確認する 業務用ソフトを入れる(点検アプリなど)
対応 FAQ対応 同じエラー対応をする 繰り返し作業の自動化(チャットボットなど)

表からわかるように、改善手段はおおむね「標準化」「業務用ソフト導入」「自動化」「API連携」に集約されます。標準化やRPA(画面操作の自動化)は、1つのシステム内の効率化に有効です。

しかし、異なるシステム間をまたぐ「転記」「照合」「同期」といった作業は依然として残ります。ここで力を発揮するのが、システム同士を直接つなぐAPI連携です。

APIを活用するメリットと可能性

たとえば次のような例では、APIを活用することで手作業を大幅に減らせます。

バックオフィスでの具体例

項目 具体例(現場イメージ) 効果
操作の自動化 受注が確定したら、請求書が自動作成され、倉庫へ出荷指示が自動で送られる 手入力が減り、ミス減、処理が速い
定期処理 毎夜2時に社員情報を更新(退職者は停止・新入社員は追加)、月末の締め処理や日次レポートも夜間に実行 日中の負荷減、やり忘れ防止
情報照合 顧客のメールや住所の違いを自動で見つけ、そろえる。違い一覧も自動で作られる 情報がどこでも同じに、確認時間短縮
承認フローの連携 購買申請が承認されたら、購買システムの状態が自動で「承認済み」になり、必要な権限付与や、発注も自動で進む 転記・連絡不要、反映漏れ防止、即時化

こうした仕組みは、既存のシステム間でデータや処理を連携させることで実現します。新しいシステムを追加するのではなく、今あるシステムを活かして連携させるのが、API活用の特徴です。

API活用のメリットと留意点

メリット 説明
短期間で効果を得やすい 小さな連携から始めて迅速に改善を実感できる
既存システムを活用して新規投資を抑制 現行環境を活かし、導入コストを低く抑えられる
拡張性が高い 将来的な追加連携や機能拡張に対応しやすい

上記の表の様なメリットがある一方で、「APIを提供していないシステム」や「利用範囲・権限に関する制約」がある場合があります。事前にセキュリティ設計と運用体制を整備しておくことが重要です。

API活用を発注・依頼する場合に最低限必要な知識

API活用を効果的に進めるためには、発注や依頼を行う側にも、最低限の理解が求められます。以下の観点を押さえておくことで、活用をスムーズに進め、成果を上げやすくなります。

観点 最低限押さえる内容(発注側が持つべき知識)
業務フローの可視化 作業手順・入力項目・承認者を明確化し、流れを図示する
運用ルールの策定 例外対応、締切、責任者の役割・連絡経路を定義
データ管理の責任明確化 正とする情報、更新責任者、保存場所・版管理を決定
個人情報・セキュリティ基礎 アクセス権管理、持ち出し禁止方針、監査ログの保管方法

APIの「技術的な仕組み」を理解する必要はありません。重要なのは、どの情報が正で、どの流れを自動化したいのかを明確にすることです。

小さく始めるロードマップ

1、二重入力や手作業が多い業務を1つだけ選ぶ

まずは影響が小さく効果が見えやすい業務を1つ選びます。現場で「同じデータを複数回入力している」「手作業で時間がかかっている」と感じられる業務が候補です。選定は業務担当者と発注担当が一緒に行い、優先理由(時間削減効果など)を簡単に書き出しておきます。

2、少量のデータで自動連携を試す

選んだ業務について、まずは少ない件数で連携テストを行います。社内ITや外注先に「テスト用データ20件程度で動作確認をお願いします」と依頼し、動作結果と問題点を記録します。ここで「できた/直す点」を明確にすることで、本格導入前の手戻りを減らせます。

3、一部ユーザーで本稼働、エラー通知先と対処方法を決める

テストで問題がなければ、対象ユーザーを限定して本番運用を開始します。運用中に不具合が出たときの連絡先(担当者名・連絡方法)と、よくある障害への対応手順を事前に決めておきます。一定期間の様子を見て問題がなければ、範囲を順次拡大します。

業務の効率化の手段を知っていれば選ぶことができる

バックオフィスの効率化は、外注・EUC・API活用という3つの選択肢を状況に応じて組み合わせる考え方が有効です。発注する立場の方が全体像と判断基準を把握していれば、定型作業の削減や自動化、システム連携を着実に進められます。APIは万能ではありませんが、既存システムを有効活用して成果を出しやすい有力な手段です。

(半日研修)API理解研修~効率的にアプリケーションを開発する

インソースでは、APIを活用してできることを知りたい、依頼を出す立場の方が短時間で要点をつかめる研修をご用意しています。

APIの基本、活用シーン、検討時の注意点を体系的に学べるため、外注やEUCと並べて最適な選択がしやすくなります。

よくあるお悩み・ニーズ

  • APIを学習したいが、何から始めればよいか分からない
  • APIを利用した開発のために、基礎を理解したい
  • APIを活用してできることを知りたい

本研修の目標

  • APIの基礎やセキュリティについて理解している
  • 簡単なAPIを自身で実行できる
  • APIテスターとノーコードツールの使い方がわかる

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>講師派遣型研修の詳細はこちら

セットでおすすめの研修・サービス

管理職が事務ミス防止の仕組みを考えるプラン

コンサルタントを入れて、管理職が自部門の事務ミスを見直し、事業拡大や人員増加しても、事務ミスを防ぐ仕組みづくりについて学ぶプランです。

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コラムのEUCによる業務改善にあたる、Excelマクロを生成AIを使って作る研修です。VBAの基礎知識があればコードを書くのは生成AIにお任せできます。

ワークを通して、コードを書かずにCopilotと日本語の指示パーツを使って業務を分解・言語化するコツを理解します。出力結果の検証と改善を繰り返しながら、ハンズオンで自動化の手順を身につけます。

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ITツールによる業務改善ワークショップ(半日間)

自動化できる業務を見出し、適したITツールの検討から導入までをシミュレーションするワークショップです。

事前に自身の業務で効率化したいものを整理したうえで、業務改善の具体例やアイデアを学びます。最後には、ITツールを導入した場合のコストやリターン、スケジュールについてディスカッションし、具体的な改善案を考えます。

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