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『情報通信白書令和7年版』から読み解く~日本企業が取り組むべき生成AI・DXの5つの重点施策

総務省が毎年公表する「情報通信白書」は、日本国内の情報通信分野における最新の状況や政策動向を体系的にまとめた政府白書です。

令和7年版では、ICT(情報通信技術)の急速な進展、特に生成AI(生成型人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する状況が詳細に分析されています。情報通信白書は、国や自治体、企業にとって、デジタル戦略や投資判断の参考となる極めて重要な資料であり、技術動向、産業動向、利用実態、課題、将来展望を包括的に把握できます。

本記事では、情報通信白書令和7年版を基に、特に生成AIとDXの現状、課題、そして今後の方向性を整理し、デジタル化やDX推進に関心を持つ企業担当者に役立つ情報を提供します。

※出典:「情報通信白書令和7年版」(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r07.html)(最終アクセス:2025/11/14)

生成AIの利用率は日本27%~教育の遅れや導入方針の策定不足の影響

日本の個人利用は27%、世代間格差が明らかに

生成AIは、テキストや画像、音声などのコンテンツを自動生成できる人工知能であり、ビジネスや研究、教育など幅広い分野で活用が期待されています。総務省の調査によると、2024年度に「生成AIを使ったことがある」と回答した日本の個人は26.7%にとどまり、前年度の約9.1%から大幅に増加しました。

しかし、海外と比較すると依然として利用率は低く、米国68.8%、中国81.2%、ドイツ59.2%と差が開いています。特に20代では44.7%が利用しており、世代間格差が顕著です。この背景には、生成AIの認知度向上や教育の遅れ企業の導入方針の策定不足が影響していると考えられます。今後は、生成AIを安全かつ効果的に活用するための啓蒙活動や教育プログラムの整備が求められます。

企業における生成AIの導入状況

企業の生成AI導入はまだ発展途上です。大企業では約半数が導入方針を策定している一方で、中小企業では3割前後にとどまっています。業務効率化や新規サービス創出の可能性があるにもかかわらず、導入に踏み切れない要因として「どのように活用すべきかわからない」「情報漏えいやセキュリティ面の懸念」といった課題が挙げられています。

生成AI活用の具体例

例えば、カスタマーサポートではAIチャットボットによる自動応答が実用化されつつあり、問い合わせ対応の効率化に貢献しています。また、マーケティング部門ではAIを活用して広告コピーやキャンペーン案を生成することで、アイデア出しの時間を大幅に削減しています。教育分野では、学習教材の自動生成や個別指導の支援に活用される事例も増えており、生成AIは業務改革だけでなく教育改革にも貢献しています。

国際的な活用状況との比較

白書では、生成AIの活用における国際比較も示されています。先進国では企業・個人双方で生成AIの導入が進んでおり、日本との差はまだ大きい状況です。特に欧米では、AI活用における倫理規範やデータ管理のルールが整備されつつあり、企業は安心して導入できる環境が整いつつあります。日本でも同様の制度整備やガイドライン策定が進めば、導入のハードルは低くなると考えられます。

DXの成否を分ける3つの要因~人材・文化・プロセス再設計

企業におけるDXの進展

DXは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを改革し、企業価値を向上させる取り組みです。クラウドサービスの導入状況を見ると、2024年には日本企業の約80.6%が何らかのクラウドサービスを活用しており、10年前の倍以上に増加しています。特に業務システムや情報分析の分野でデジタル技術が基盤化していることがわかります。さらに、ビッグデータ解析やIoT(モノのインターネット)技術の活用も進展しており、製造業、物流、小売、金融といった多様な産業で業務効率化や顧客体験の向上が実現されています。

DX推進における課題

DX推進には、技術導入だけでなく組織文化や人材育成の側面も不可欠です。総務省の調査では、DXが十分に進んでいない企業の多くは「既存システムとの整合性」「運用コストの増加」「従業員のITリテラシー不足」といった課題を抱えています。また、サイバーセキュリティ対策や個人情報保護、偽情報対策といったリスクマネジメントも重要です。特に中小企業では人材不足や予算制約が課題となり、導入に消極的な傾向があります。

成功事例の紹介

ある製造業企業では、業務プロセスをデジタル化することで、従来1週間かかっていた在庫管理作業を1日で完了できるようになりました。また、小売業では、POSデータや顧客行動データを統合分析し、AIによる需要予測や販促施策の最適化を実現しています。さらに、人事部門では、従業員のスキルデータや研修履歴を基にAIがキャリアプランを提案することで、人材育成の効率化と社員満足度向上につなげています。

政策面の支援

総務省では、中小企業のDX導入を支援するため、補助金や専門家派遣、教育プログラムの提供など、多面的な支援策を実施しています。これにより、予算や人材の制約がある企業でもDXの推進が可能となり、国内全体のデジタル化が加速しています。

生成AIとDXがもたらす企業の未来~全体最適を意識した取り組みが重要

生成AIとDXは、今後の企業競争力を左右する重要な要素です。白書では、日本企業のデジタル化が国際的にはまだ遅れていることが指摘されていますが、一方でデジタル技術を活用することで新たなビジネス機会や業務効率化が可能であることも明示されています。企業は単に技術を導入するだけでなく、組織文化や人材育成、業務プロセスの再設計といった全体最適を意識した取り組みが求められます。生成AIは、単なる「効率化」だけでなく、「新しい価値創造」の鍵となるでしょう。特に、データ利活用の高度化やAIによる意思決定支援の導入は、業界を問わず企業戦略の差別化要因となります。

明日から始める生成AI・DX5つの実践策~小さな成功・人材育成・事例の応用・補助金・組織作り

白書の内容を踏まえ、企業が実践できる具体的な取り組みの方向性を提案します。

1. 遅れを取り戻すための施策を明確化する

日本企業は生成AIやDX推進で海外に遅れをとっています。しかし、導入方針の明確化や小規模な実証プロジェクトの積み重ねにより巻き返しは可能です。例えば、まず社内でAIチャットボットを導入して問い合わせ対応を自動化するなど業務ごとの「小さな成功」を積み上げることが有効です。

2. 組織的対応と人材育成の強化

技術導入だけではDXは成功しません。導入を担う人材の教育や、部門横断のプロジェクト体制を整えることが成否を分けます。総務省の調査でも、DXが進まない企業の多くは「従業員のITリテラシー不足」や「既存システムとの整合性課題」が原因となっています。研修やワークショップを通じて、社員が生成AIやデジタルツールを実務で使えるようにする取り組みが重要です。

3. 成功事例の応用で自社戦略を具体化する

製造業や小売業の事例から、自社の業務プロセスに合わせた戦略を構築することが求められます。例えば、販売データや顧客行動データを統合分析して、AIによる需要予測や施策の最適化を行うことで、業務効率化と売上向上を同時に実現できます。白書に掲載されている事例を参考に、業務単位で応用可能なアクションプランを設計すると良いでしょう。

4. 政策支援や補助金の積極活用

中小企業でも、補助金や専門家派遣、教育プログラムを活用することでDXや生成AI導入の実現性が高まります。国や自治体の支援策を調査し、導入費用や研修費用を効率的に補うことで、リスクを抑えつつDXプロジェクトを推進できます。

5. 短期効率化と中長期価値創造の両立

単に業務を効率化するだけでなく、生成AIを活用して新しいサービスやビジネスモデルの創出につなげる視点が必要です。短期的には業務自動化、長期的にはデータ利活用やAIによる意思決定支援を組み込み、組織全体で取り組むことで競争力の向上につながります。

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