営業職「誰もやらない」101の秘策

 【インソース講師・森義隆氏インタビュー】

営業職「誰もやらない」101の秘策

《第3回》「非正規社員のメンタルヘルス」

インソース講師・森義隆氏インタビュー 【3】

《第3回》「非正規社員のメンタルヘルス」


☆非正規社員の労働環境☆

―――次にメンタルヘルスについてのお話を伺いたいと思いますが、現在、非正規社員の方々、いわゆるアルバイトの方や契約社員の方々の労働環境はどのような状態ですか?

◆まず一般的な流れとして、人件費のコストを縮小するために、大企業、中小企業を問わず、正社員雇用という形態を減少させている傾向にあります。 それにより、本来は正社員でやるべき仕事も、非正規社員が行うなど、職務内容やその責任が大きくなっています。それが原因でとまどってしまい、ストレスを感じている方も多いと思います。

◆また、正社員と同じ仕事をしていても、昇給・昇格といった待遇の格差や社会保障、福利厚生面の不備に関する不満があるということもあると思います。

―――3月に労働契約法、4月に改正パート労働法、本年度中に最低賃金法というのが施行されるそうですが、これによりまた非正規社員をめぐる環境が変わってくる可能性がありますね。

◆労働環境の改善を行うことが今回の法改正のポイントです。一つにはパート労働者を保護しようという思いがあるわけですね。最低賃金法に関していうと、現状では最低賃金に満たない労働環境で働かせている企業が少なくありません。

◆私のところにもよくご相談にいらっしゃる方がいます。この点には非常にメスを入れなければならないんですが、企業側に立った言い方をすると、あまりにそれをやると経営が成り立たない企業も出てくるわけです。

また、労働者のほうもわかっているけれど、あんまり言うと会社がつぶれてしまうから黙っているということもあると思います。

実際に、ご相談にみえられる方の中には、「あくまでもオフレコで」と言われる方もいらっしゃいます。

今回の法改正はパート労働者の保護を目的としているものですが、まだまだそれを実施するには環境が整っていないという問題があります。

◆また、いわゆる「ダブルワーク」などの過重労働をしている方も多いですね。私の知っている人でも、朝3時から7時までパン屋さんで、石釜で火を炊いて、パンを焼く準備をして、そして8時からは別のスーパーで仕事をしています。


☆安全配慮義務について☆

◆企業には従業員に対する安全配慮義務がありますが、こういうダブルワークの場合、労働法的にいって、パン屋さんと、スーパーのどちらに責任があるのかといった非常に大きな問題があります。
 
この辺りのことも、今回の法改正で解消されていません。労災との絡みもあって、なかなかメスを入れづらいところだと思います。

◆また健康上の理由から労働時間を減らすように言っても、断る方もいらっしゃいます。いろいろと事情がおありだとは思いますが、そういうときには、その会社の社長に「これで言うことを聞かなかったら、クビにすると言っていい」ということをいいます。

◆いわゆる解雇というのには、法的にも制約が入っていますけれども、これは別だと思うんですね。本人のことを考えたとき、「これ以上労働を継続した場合、安全配慮義務をもてない」とはっきりと経営者が伝えることが重要です。

こちらから業務命令として言っているのに、それでも拒むのであれば、「そのときはあなたにここにいてもらっては困る」と明確にNOを言う必要があります。

◆そこまでこちらが毅然とした態度をとると、やめる方はいないですね。やっぱり私の立場としては、お客さまである経営者を守るということが大前提としてありますが、延いてはそのことが働いている方にとっても良い結果を生むと考えています。

―――今回の法改正ではそのあたりについては......。

◆今のところ規定はされていないですね。ただ、「努力義務として経営者側、事業者側に配慮をしなさい」とかそういう言葉はありました。

―――ただ、まだ罰則規定はないわけですね。

◆罰則規定はないですね。そこが非常に日本の法体系の難しいところで、社会保障関係の法律に罰則規定はありません。それから、労働法、労働基準法に関しても、罰則は設けていますが、実際にそれが行使されたことはほとんどありません

◆そういう意味で、甘いという批判を受けています。ただ、現実に難しいと思うのは、元々労働基準法というのは、炭鉱労働者を想定してできた法律なんです。

ですから深夜労働の基準などについて決められているわけです。ということは、実態に見合っていない。それで、施行する労働監督署のほうでもわかっているので、現実には罰則が与えられない。なおかつ、違法なことが起こっているということもわかっているのですが、明確な証拠がないので処分を下せないということも多いです。

◆また、会社を罰してしまうと、その会社がつぶれ、ひいてはそこで働いている非正規雇用社員も路頭に迷うことになる、そういう悪い図式もあります。

だからなかなかできないという・・・。罰則ができない背景にはそのような事情もあります。


☆労働環境を改善するための今後の課題☆

―――そうなってくると、社会の中で、経営者側に、独自にモラルを守らせるというような空気をつくらないといけないと思いますが、そのためにはどのような活動をしていけばいいとお考えですか?

◆そうですね。教科書的になりますが、我々も、労働法に携わる一人として、官公庁や自治体とともに、自分の顧問先にもそういう指導をしていかなくてはならないといけないと思いますね。

◆マスコミにもどんどん声をあげてほしいですね。単に、労災認定がこうなった、ということだけではなくて、現実の非正規社員の方たちの労働環境はどういうものか、そして背景にはどういうものがあるか。そうした労働環境も含めた議論が必要だと思います。

◆また、今は努力義務にしているものを、義務規定というレベルに引き上げていかなきゃいけないでしょうね。そうしないと「法改正をしました、さあ、これで4月1日から施行です」だけでは、現実には何も動いていかないんですね。それを徹底させるには、まず、国がどうしなければいけないか、我々、社労士がどうしなければいけないか、そして、地域の監督署、ハローワークがどうしなければいけないか、考えなければいけないことはたくさんあると思います。

(つづく)

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