筋道立てて話しているのに伝わらないのはなぜ?~グライスの「協調の原理」から探る
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「順序立てて、簡潔に」。わかりやすい説明のコツとして、よくそう言われます。もちろん、それは話し方の基本として大切なことです。
ところが、同じように話しても、そのまま伝わる相手と、なぜか理解してもらえない相手がいます。この差は、話の組み立て方だけでは説明できません。グライスの「協調の原理」を手がかりに、話が伝わるとはどういうことか、読み解いてみましょう。
グライスの「協調の原理」とは~会話を成り立たせる4つの作法
私たちが会話をするときには、無意識のうちに従っているルールがあります。イギリスの言語学者ポール・グライスは、これを「協調の原理」と名付けました。協調の原理は、次の4つの公理から成り立ちます。
- 量の公理~必要なだけの情報を与え、多すぎず少なすぎず伝える
- 質の公理~根拠のないことや、間違っていると思うことは言わない
- 関連性の公理~相手の関心や話の流れに関係のあることを言う
- 様態の公理~曖昧さや冗長さを避け、順序立ててわかりやすく話す
注目したいのは、いわゆるロジカル(論理的)に話すというのは、この4つのうちの一つ、様態の公理にあたる点です。順序立てて話すことは重要ですが、それだけでは会話全体を支えきれません。残りの3つが欠けると、どんなに筋道の通った説明でも伝わらないのです。
ロジカルに話しても伝わらないのはなぜか~不足しがちな3つの視点
きちんと順序立てて話したのに、相手が理解しづらそうにしている。そんなときは、様態以外の公理に目を向けてみるとよいでしょう。
- 量:相手の理解度に合わない情報量は、多くても少なくても負担になります。前提知識のある相手に一から説明すれば冗長になり、初めての相手に要点だけ渡せば言葉が足りません。
- 質:事実と推測を混同して話したり、根拠の曖昧な情報を伝えたりすると、相手に不信感や混乱を与え、理解を妨げてしまいます。
- 関連性:相手が今知りたいことと、話の中身がずれていないか。また、同じ内容でも、相手が普段使う語彙に寄せて言い換えるだけで、伝わり方は大きく変わります。
つまりわかりやすさとは、話し手の論理の正しさではなく、話す内容やその意味を、聞き手の頭にどれだけ負担をかけずに届けられるかで決まります。相手がわかった!と言える話し方とは、相手に合わせて情報の「量」や「関連性」を調整し、確かな「質」の情報を届けることなのです。
明日からできる~相手に合わせて伝えるコツ
具体的には、次のような工夫から始めてみてください。
- 話す前に、相手の前提知識と「今いちばん知りたいこと」を想像する
- 会話の序盤で軽い問いかけをして、相手の反応から理解度を測る
- 専門用語は、相手が日常で使う言葉に置き換える
- 渡す情報は「腹八分目」にとどめ、反応を見ながら足していく
順序立てる力を土台にしつつ、相手に合わせて調整する。この両輪がそろってはじめて、「わかった」と言ってもらえる説明になります。
分かった!と言わせる話し方研修~グライスの協調の原理に学ぶ
グライスの協調の原理を手がかりに「話がわかる」という現象を構造的に理解したうえで、ロールプレイングを通じて、相手にとって負担が少なく理解しやすい話し方を習得します。
「伝えたつもり」で終わらせず、相手の理解度に合わせて量・語彙・伝え方などを使い分けられるようになりたい方におすすめです。
よくあるお悩み・ニーズ
- 説明が相手に正しく伝わらないことがある
- 要点をまとめて話すよう求められることが多い
- 多様な人とうまくコミュニケーションを取れるチームをつくりたい
本研修の目標
- 協調の原理を理解し、自分の話し方として意識できる
- 相手にとって理解しやすい情報量と伝え方を選択できる
- 相手の立場や状況に合わせて話を進められる
対象者
- プロジェクトリーダー・現場リーダーの方
- 部下・後輩指導をする立場にある方、説明する機会の多い方
- 窓口応対など、説明をする機会の多い方
セットでおすすめの研修・サービス
分かりやすい説明の仕方研修~言いたいことを簡潔に伝える
わかりやすい説明の基本の型を身につける研修です。論理的思考を鍛え、目的・意図を明確にしたうえで、話の構造と展開を整理する方法を学びます。
総合演習では長文の内容をわかりやすく説明するワークにも取り組み、メンバー同士のフィードバックから客観的な気づきを得られます。協調の原理でいう「様態の公理」、つまり順序立てて話す土台を固めたい方に適した一本です。
コミュニケーション基礎研修~きき上手は話し上手、きくから始めるコミュニケーション
「話す」ではなく「きく」を極めることで、円滑なコミュニケーションを目指す研修です。
「聞く・聴く・訊く」の違いや傾聴のスキル、相手に話してもらうための質問の仕方を学びます。相手の理解度を測るには、まず相手の話を丁寧にきくことが出発点です。伝える力とあわせて、相手を捉える「きく力」を鍛えたい方におすすめします。
コミュニケーション研修~エトス・パトス・ロゴスで伝える力を強化する
古代ギリシャの哲学者アリストテレスが説いた、エトス(信頼性)・パトス(共感性)・ロゴス(論理性)の3要素から、相手に動いてもらう伝え方を学ぶ研修です。
論理性だけに偏らず、信頼と共感を含めてバランスよく伝える視点が身につきます。関連性や文脈を意識した伝え方を、さらに深めたい方に適しています。





