出世の要件~能力だけでは決まらない、出世するための基本ルールと戦略|マネージャーの要件1
あいまいな言い方ですが、今回は「上を目指す人」、出世の要件について書いてみたいと思います。とても優秀な人材で停滞する人もいれば、あいつがここまで出世するとは!という事も良くおこります。35年以上組織で働いてきて、社長も20年以上やった今、思う事をつらつらと書いてみます。
出世についての基本ルール考察
「よく誰々が引き立ててくれたから出世できた」とか「俺が引き立てたからお前は偉くなった」と言うお話をされる方がいますが、その話は、あまり合理性がないと思います。いわゆる原因と結果を混濁している様に思います。私の実感として、出世するのは以下の条件が揃う時です。
出世の大前提は上位のポストに空きがあった~これが一番
出世できる条件として、第一に上位のポストに空きがある部署に在籍していることです。上位ポストの役職者は業務の継続性を考え、大抵の場合、その部署で適任者を探すからです。逆になかなか出世しないのは上司の引き立てがないのではなく、上のポジションが詰まっていたり、その部署、場合によっては勤めている企業の成長がストップしていることが原因なのです。そういった意味では空きポストのある部署に望んで異動したり、新たに上位者が必要になる成長著しい部署に異動するのが早く出世する近道です。
そもそも出世できる能力があった~昇格要件は内部統制で決まっている
社長であっても内部統制を守ることが強く求められるのがこのご時世です。つまり、ルール通り会社を経営するしかできないのです。なので、昇格するためには、上司の口添えだけではまず無理です。社内ルールに照らして、昇進の要件を備えていることが出世の条件なのです。一定以上の業績を上げた実績や、もとより能力があったので出世できたというのが理由となります。
上位者が能力向上を支援してくれた~上司の教育のおかげはある
同程度の能力の昇格候補者が複数いて、そのうち一人を抜擢するような場合、上位者の支援の効果はないわけではありません。逆に言えば、上司の口添えが効果を発揮するのは、そんなレアな時だけなのです。組織においては合理性最優先です。
今思えば、私も沢山の上司にお世話になってきました。強く感じるのは、至らぬ私の育成をがんばってくれた事です。恥ずかしながら、異動したり、転職してすぐに成果を出した事はなく、至らぬ点を指導してもらったり、すぐに成果が出なくても、信頼して仕事を任せてくれた結果、だんだんとできる事が増え、それなりに仕事ができる様になったのだと改めて感謝の念を抱いております。
運をつかむ~収益の観点で自分なりに考えられる
出世には、運の要素も強くあります。出世が遅れ、誰も顧みない様な業務を担当していても、その分野が大きく成長した結果、チャンスを掴む。時にはそんなこともあります。その幸運は意識的に掴もうとすることが重要だと思います。
私が銀行でSEとして働いていた1990年代、個人向け金融サービスはあまり注目されない分野でした。エンジニアとして銀行の統計資料を作成していた際、年金層や富裕層向け個人金融サービスの一人あたり利益は銀行員なら誰もが憧れる企業金融の一社あたり利益と比べても遜色がない事に気がつきました。利益が高いならいずれ重要な仕事になると考え、個人金融部門を志望し異動しました。そこで担当した個人向けネット金融はマイナーの中のさらにマイナーでしかありませんでしたが、ご存知の通りその後、大きな成長を遂げました。
冷静に収益の観点で考えるのが運をつかむコツです。世間が騒ぐ花形ビジネスは参入者が溢れ、成功するのは結構難しいものでです。自社において利益が高いが日の当たらない分野、社会的ニーズがあり、将来利益が見込まれる分野について、自ら勉強をしたり、スキルを磨いて、異動を希望したり、自ら新規事業に乗り出して、運をつかんで欲しいと思います。運次第では能力以上の出世が可能になると思います。
業績、能力を上げる以外の出世戦略
高い業績を上げていれば、早く出世するのは当然であると思います。ここでは、それ以外の昇格戦略を書いてみたいと思います。
長期間同じ企業で働く~組織内スキルをアップする
実は自分の能力に自信がなくても出世できる方法はあります。それは、同じ組織に長期間在籍し続ける事です。一般的に優秀と認められる能力以外に、組織にはその組織でしか使えないノウハウが存在します。例えば、社内人脈が豊富であることです。仕事は1人でできるものではありません。困った時にどの部署の誰にアドバイスももらえばいいか、誰の支援を求めればいいかを知っていれば、仕事はどんどん捗っていきます。
弊社(インソース)の幹部社員を見ていると、能力が高いので出世したのではなく、長くここで働いた結果、能力が伸びて出世した人材が非常に多くいます。粘り強く働いていく中で、仕事がだんだんできる様になっていく人も想像以上に多いものです。能力伸長のスピードは人によって異なるからです。
出世できないから転職しようと思った時は、冷静になって自分の実力を評価し、まだまだ力不足かもしれないと考えたなら今の職場でじっくり仕事をするのが良いと思います。
必要な時に必要な場所にいる~勘がいい人材には重要な仕事が任される
軍隊において優秀な人材は「必要な時に必要な場所にいること」(コリンパウエル、リーダーの条件)と言われています。これは、あらゆる組織において共通する普遍的なルールであると思います。どんなに優秀な人材であっても、必要な時に、必要な場所にいなければ、力を発揮する事ができません。「こんな重大事にあいつはどこに行ったんだ」と言われる人が、みなさんの周りにも一人はいると思います。
大トラブル、大チャンス、こういった場面に必ず「いる」というのは、組織が直面する課題を常に考えて行動している証拠です。「仕事の全体把握ができているな」をしているなと思われたら、重要なポジションに抜擢される可能性は高まります。その結果、成果を上げやすくなり、それをもって出世するのです。長期休暇や遠方への出張を計画しているなら慎重に時期を選ぶべきでしょう。
管理者としての仕事に対するスタンスができている
初級管理者として抜擢する際のポイントは「この人に任せておけば、一定の成果が出る、トラブルを起こさない、職務を全うしてくれる」と認められる点にあります。日常の言動や行動が「子供っぽい」と判断される場合、実績があったとしても管理者に抜擢するのは難しいと人事部門は考えるものです。管理者は組織の顔であり、部下マネジメントを求めます。仕事ができる、実績があるだけでは困るのです。
もし、出世が遅れているなと思う人は、行動や言動、仕事に対するスタンスが管理者として適切かどうか今一度チェックしてみてください。信頼できる先輩に聞くのも良いと思います。
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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
マネージャーの要件シリーズ
- 出世の要件~能力だけでは決まらない、出世するための基本ルールと戦略|マネージャーの要件1
- 係長の要件~部下指導・業務改善・リスク管理|マネージャーの要件2
- 課長の要件~課長は勇気を持ってPDCAを回す人|マネージャーの要件3
- 部長の要件~部長は企業の未来を作る仕事|マネージャーの要件4
- 役員の要件~役員はただの熱血漢や社長の腰巾着ではダメ|マネージャーの要件5
- 経営者の要件~経営者は業績を上げる専門職|マネージャーの要件6



