イノベーションが起きる組織づくりとは~多様性を力に変え、変化に対応し続けるには

イノベーションが起きる組織づくりとは~多様性を力に変え、変化に対応し続けるには

FORUM 2019

近年、不況が続く中で多くの組織がリスクをとることを恐れるあまり、「新しいこと」にチャレンジすることを避け、イノベーションが起こりにくくなっています。一方で、職場を構成する社員の年齢層や雇用形態が多様化しており、1人ひとりの強みや個性を生かしたマネジメント・指導が求められています。

時代の変化が激しいなか、組織としてその変化に対応するためには、多様性を生かし、イノベーションを起こせる個人を輩出することが求められています。では、それを実現させるには何が必要かをお伝えします。

1.イノベーションについて改めて考える~企業組織で起こすイノベーションとは

1-1.改めて考える今の時代~必要なのは「自分発の物語」

今の時代には、4つの特徴があります。

①全世界フラット化の時代
以前の日本は、全世界に工作機械を輸出したり、高性能な製造設備を所持したり、高い製造技術を持つなどして優位性を誇っていました。しかし、新興国が大きく成長をしている現代において、技術力、資金力、マネジメント力、労働力で、日本の競争優位は大幅に消失しました。世界のフラット化には、もちろん日本も含まれているということです。
②グローバル化の時代
国内市場での優劣だけでなく、世界市場を踏まえた商品・サービスの提供が現代では求められます。例えばBOP市場(ボトム・オブ・ピラミッド)では、日本製品は過剰品質だと認識されます。そのため国内だけでなく、世界市場に目を向けることで、提供する商品やサービスの見直し・開発につながっていきます。
③個人が際立つ独創の時代
2000年代に創業された企業の中で、世界的な巨大IT企業になっている組織があるように、たった一つの小さな発想で、一夜にして巨大企業ができる時代になっています。今の時代では、個人が発した「ちょっとした発想」が、企業の出発点になっています。
④サービス化の時代
モノ消費からコト消費の時代になってからしばらく経ちました。今後もこの流れは加速していくでしょう。その中で、魅力的なコト消費には、サービスそのものや開発の背景に"物語"が必要になっています。

現代は、「個人の小さな物語」が乗数(10倍、100倍)的に伸び、新産業化している時代です。一方で、従来からの産業が付加価値を生み出せなくなっている時代でもあります。これからは、時代の変化をふまえながら、小さな物語や発想を大事にしていかなければ、産業を成長させることが難しくなっていくことでしょう。

1-2.イノベーションは多様

日本では、イノベーションは「技術革新」のみを捉えられがちですが、それは正しくありません。
例えば、ヨーゼフ・シュンペーターが定義したイノベーションには5つの種類があります。

■イノベーションの5つの定義(ヨーゼフ・シュンペーター 1911年)
プロダクト・イノベーション(画期的な新商品によるもの)
プロセス・イノベーション(新しい生産方法)
マーケット・イノベーション(新しい販売先の開拓)
サプライチェーン・イノベーション(原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得)
オルガニゼーション・イノベーション(新しい組織体制によるもの)

技術革新は、1のプロダクト・イノベーションにあたりますが、2~5も全てイノベーションです。これらは個人の着想からスピーディに生み出せる可能性があり、イノベーション実現の余地はまだまだ大きいことがわかります。イノベーションは、決して一部の特別な人が実現できるものではなく、誰もが実現できる可能性を持っている、ということです。

例えば、インソースでは2の「プロセス・イノベーション」を行っております。研修の実施者とテキスト(コンテンツ)の製作者を分離する、たったこれだけの仕組み作りで、比較的廉価に研修が作れるようになりました。

1-3.失われた20年で日本に起こったこと

失われた20年で起きたことを考えると、「不況が続くなかで、多くの組織がリスクをとるのを恐れるようになった」ということが言えます。

■合議制重視による機動力の消失
合議制には“リスクをとれなくするリスク”が存在します。
例えば、関西のとある企業では社長まで稟議を通すのに3個の判子が必要でした。一方で、別の企業では60個の判子が必要でした。部長は全員判子をおさないといけない決まりになっていたようです。後者の場合、たった一人の反対が、革新的な発想やアイデアを実現不可能にしてしまいます。リスクは見落とさないかもしれませんが、イノベーションは一向に進みません。
■意欲/資金の消失
革新的な新規事業に挑む意欲が消失されていたことに加え、業績不振によりリスクマネーが出なくなりました。
■「コンプライアンス遵守」への過剰な反応
コンプライアンスは極めて重要ですが、新しいことはコンプライアンス違反という、過剰な反応も起きてしまっておりました。やらなければ違反は起きない、という考えになっていたため、何もできない状態でした。
■「選択と集中」を日本中が誤解
「選択と集中」の生みの親であるジャック・ウェルチは、GE(ゼネラル・エレクトリック社)在任中に1000個の新規事業に挑戦していたと言われます。利益の出ない事業は全て切り捨てながらも、新しい事業を1000個やる。これがジャック・ウェルチの「選択と集中」でした。しかし日本では、事業を限定することが美徳である、優位である、と誤解してしまいました。

新しいことに挑戦するのは、リスクがあるし困難なことでもあります。失敗したら責任も問われます。経済低迷のもと、日本の多くの組織は「あそび」を避けるようになり、「自分発の小さな物語」を生かす余裕をなくしてしまったのです。

これが失われた20年で起こってきたこと、ではないでしょうか。
今こそ、脱却を図るときです。

1-4.企業組織におけるイノベーションとは

イノベーションの議論というのは数えきれないほどあります。宇宙開発といった規模でないとイノベーションとは呼ばない、という声もあります。しかし、まず企業において「利益を出しながら」という前提であれば、イノベーションのポイントは以下の4点ではないかと考えます。

<インソースが考える、企業組織におけるイノベーションの定義>
レベルや大小は問わないこと
~年間コスト10%減の改善でも、20年続ければ90%になる
数を追うこと
~組織の皆がイノベーターであることが理想
お金のにおいがする(収益性がある)こと
組織の内部だけでも実施できるとなおよい
~失敗コストが低減できる
①レベルや大小は問わないこと
改善はイノベーションじゃない、という人もいますが、10%のコスト減を10年間、20年間続けたらどうなるかを考えてみましょう。0.9を20回掛けると約0.1になります。つまり10%の改善でも、20年続ければ90%の改善、大きなイノベーションになります。レベルや大小を問わずに、とにかく改善であろうと、新しいことであろうと、“やり続ける”ということが大事です。
②数を追うこと
インソースでは「マーケティング道場」という、商品開発や事業開発を最前線で行ってきた講師陣が行う研修があります。そこで、おしなべて皆さんがおっしゃるのが“量”でした。例えば、あるお菓子メーカーさんの部長の方が話されていたのは、入社して3ヶ月で1000個アイデアを出さないと異動になる、という話でした。とにかく量を出すなかで、費用対効果のある発想を鍛えていくそうです。
逆にいえば、特定の人だけがアイデアやイノベーションを追うのではなく、組織全体の人、できるだけたくさんの人が新しいことにチャレンジすると数が生まれる、ということです。
③お金のにおいがすること
夢だけではイノベーションはなかなか実現できません。企業の中で行うからには、1年後か2年後か10年後か、どこかのポイントで収益を出さなければなりません。若手の発想、シニアの発想、スタッフの発想、誰しもが発想して良いのですが、何らかの収益性がなければ組織として実行することはできません。
④組織の内部だけでも実施できるとなおよい
外部と協力する良さ、を現代では多く語れます。しかし組織内で実施できるとリスクが低く、失敗コストが吸収できるという点も見落とせません。外部提携、ベンチャー投資をすると大きなコストがかかりますが、内部でできるイノベーションがあると、失敗やコストをうまく低減できます。バランスを取って、イノベーションを起こしていくことが重要です。

2.「組織」に求められる要件

■イノベーションが起きる組織に求められる4つの要件

  • 多様性と寛容性がある~人材に関しても「選択と集中」の考え方をやめる
  • 流動性がある~硬直した組織からは新しい発想が生まれない
  • フラットな組織体制である~ハイスピードで多くの「物語」を試せる
  • お金のにおいに敏感である~新しさを事業性、収益性の並立がわかる

2-1.多様性と寛容性 ~多様性が寛容性を生む

①人材特性の多様性
同質のメンバーばかりが集まるのはリスクになります。もし今、同じタイプの人材ばかりが集まっているのであれば、「自組織で活躍できる人材」の定義を見直し、拡げていくべきです。
多様性は、見て分かることが重要です。可視化することで「どのような人材が足りないか」を把握することができます。現組織に多様性が足りないと思えば、外から採用してでも多様性のある組織をつくることをおすすめします。
<可視化しておくべき人材の特性>価値観や行動タイプ、問題意識
②寛容性
多様な人材や考え方を歓迎するおおらかさ、すなわち寛容性が組織には必要です。一方、「多様な考え方を歓迎する」という考えに凝り固まらず、組織としていったん決断したら従う柔軟性もまた必要です。

多様性と寛容性は、自然に生まれるものがではなく、経営者や人事が作り出すものです。
意図的に、ねらいを持って作り出すようにするとよいでしょう。

2-2.流動性 ~変化は自発的に作る

■組織がかたまってしまうと、新しいアイデアは出ない

世の中の変化に合わせて、自組織も常に変化させるべく、柔軟な組織体制や人員配置の変更が可能な状態をつくっておくことが重要です。つまり、組織体制や人員配置、業務フローなどは「経営者や人事が、流動性を“デザイン”する」ということです。

流動性を確保することの付随的なメリットは2点あります。

(1)変化の少ない組織は、無意識のコンプライアンス違反が起きやすいが、流動性があると、「自部署にとっての『当たり前』、他者から見た『異常』」に気づきやすくなる。

(2)流動性(=キャリアパスのパターンが複数あること)を示すことは、社員が自社内での成長余地を大きく感じることにつながり、離職防止に効果的である。

現代において、法令順守は絶対です。しかし、変化の少ない組織というのは、無意識のコンプライアンス違反が起きやすいものです。外部から情報が入ってこないため、前例踏襲が善だと思ってしまう可能性があります。そこで、他者から見た異常に気づきやすくするためにも、流動性は必要です。また、キャリアパターンが複数あることは、社員が自組織でどのように成長していくかを想像する余地を生み出すため、離職防止につながります。

2-3.「多様性・流動性」 と「一体感」を両立させるために

「多様性・流動性」と「一体感」は相反するところがありますが、これらを両立させるためには2つの視点が必要です。

まずは「理念」という視点です。自分が何のために働いているのかをわかっており、理念をもとにした判断や行動ができるということです。次に「収益確保」という視点です。つまり、お金のにおいがわかる人材であるということです。

全てのメンバーが理念と収益確保の2つの視点を理解していると、同じ視点で判断や行動ができるだめ、基準が明確になります。そうすることで、様々の多様な人材を束ねることや権限委譲が可能になり、フラットでシンプルな組織を実現することができます。多種多様な意見があったとしても、理念と収益確保という全員が認識している基準で判断することで、異なる意見を持つメンバーにも理解や納得を促すことができます。結果的に、変化の激しい環境の中で、存分に勝負できる組織になっていきます。

また同時に、理念に基づく行動が利益を生み、利益をあげることが社会貢献につながるという"普遍的な真理"を浸透させることもポイントになります。

3.「個人」に求められる要件

3-1.組織内でイノベーションを起こせる個人に求められる要件

個人がイノベーションを起こすには、以下の5つの要件が求められます。
なお、人事部門が意識して育成を行えば、どんな組織でもこれらの5つの要件を身につけた人材を輩出することができます。

①粘り強さ
諦めたり飽きたり、慢心したりせず、粘り強く努力しつづけられる力が重要です。
②深い業務知識と経験
知らないことは、できません。臨界点に到達するくらい“業務”を知っている必要があります。
③幅広い知識・教養~「かけ合わせ」を起こす力
幅広い知識や教養を「かけ合わせる」ことが、新しいものを生みます。特に現代では、ITの知識が不可欠です。
④異端と常識の併存
組織内でイノベーションを起こすことと、起業することは異なります。前者の場合、「異端児」であると同時に、常識的で他者への配慮ある動きができることが必要です。周囲からの信頼と好感がないと、組織内イノベーションは起こせません。
⑤着想力
イノベーションを起こすには着想力が必要ですが、最重要ではありません。また訓練によって身につけられるスキルでもあります。

個人がイノベーションを起こすには、以下の5つの要件が求められます。
なお、人事部門が意識して育成を行えば、どんな組織でもこれらの5つの要件を身につけた人材を輩出することができます。

<「かけ合わせ」を起こすための知識とスキル>

③の要件である、イノベーションを起こすために「かけ合わせる」知識や教養には、雑学だけでなく社会意識や業務ノウハウ、ITリテラシーなどがあります。これらを多面的にかけ合わせることが重要です。さらに、観察眼やゼロベース思考、着想力、プロジェクトマネジメント力をかけ合わせることで、組織で収益性のあるイノベーションが実現できます。(※◎がついている要素は、インソースの研修で強化することが可能です)

イノベーションは才能のある一部の人ができるのではなく、これら知識やスキルのかけ合わせでできるため、知識やスキルを身につけていけば必ずできます。自分は才能がないから、と諦めたり言い訳をしたりするのではなく、イノベーションを起こすために自分に何が不足しているのかを理解し、身につける努力を行えば良いのです。

3-2.IT活用力は現代のイノベーションの源泉

さらに、ITを活用すると、イノベーションはスピードアップします。例えば、システムの画面イメージ(プロトタイピング)を作れるだけでも、劇的にイノベーションの可能性が広がり、スピードが早くなります。

実際に、インソースでも社内のITリテラシー向上に向けて、次のようにレベル分けした教育を実施しております。

<インソースの社内人材ITリテラシー向上教育の例>

  • ・レベル1は、本社の社員が対象です。システムを理解していて、プロトタイピング、画面設計ができるレベルを目指します。統計やRPAもできるようになって業務を改善しつつ、本社にふさわしい設計能力をつけることで、システム開発のスピードを上げます。
  • ・レベル2は、若手社員が対象です。レベル1のスキルに加え、データベースの設計や開発言語(Angular)の習得を目指します。
  • ・レベル3は、SEが対象です。レベル2のスキルに加えて、更新システムを作るスキルを身につけます。
  • ・最後のレベルXは、営業が対象です。システムを理解しつつ、RPAを使いこなせるようになり、システムは作らなくても自分の業務は楽にできる、という状態を目指します。

イノベーションを起こす一環として、IT人材というのは今後のテーマになってくると考えております。インソースは、公開講座を中心に、このようなIT人材を育成する研修体系を提供していく予定です。IT人材の不足で悩んでいるお客さまに、寄り添うサービスを提供していきたいと考えています。

4.組織向け関連サービス

組織における多様性・寛容性・流動性の醸成には、以下のようなサービスがございます。

■アセスメントサービス「giraffe」~従業員の人材の特性を可視化

≪Point≫

  • ・106問の簡単な設問にお答えいただくだけで、受検した社員一人ひとりの価値観や行動タイプに関する「特性」を測れる
  • ・結果の活用例:個人の性質を踏まえたマネジメント強化と育成方針の立案・仕事の成果の要因特定・人材育成のポートフォリオ作成

※インソースグループの株式会社らしくが提供

■「業務改善コンサルティング」~客観的に仕事の仕組みを見直す

≪Point≫

  • ・改善対象の選定、目標設定、改善のためのマニュアル作成や改善活動の進捗管理、成果発表会の実施など、一連のプロセスをインソースのコンサルタントが伴走しご支援
  • ・業務改善目標の達成に加え、改善プロセスを通じた組織の一体感の醸成やリーダー育成が可能

■「理念策定・浸透サービス」~今一度、丁寧に理念と向き合う

≪Point≫

  • ・理念策定のための組織課題の把握、経営層へのヒアリングや従業員参加型ワークショップを実施し、形骸化しない理念の決定をご支援
  • ・策定した理念を従業員に浸透させ「自分ごと化」させるための、映像やエピソードブックなどのツール制作や浸透状況の検証を実施

※インソースグループのミテモ株式会社が提供

5.個人向け関連サービス

イノベーション人材の育成には、以下のようなサービスがございます。

■企画力研修 ~新規事業開発(ビジネスプランの作り方)プログラム(4回コース・計6日間)

実際に“小さな物語”を発案できる個人に対しては、事業として形にするための教育を実施することが有効です。

研修名 日数 研修のポイント
第1回新規事業開発研修 2日間
  • ①自社の中期経営計画を踏まえ、研修の目的・意義を理解
  • ②講義により、ビジネスプラン作成のポイントを理解
  • ③アイデアをまとめ、研修時間中にミニビジネスプランとしてまとめる

※研修中に作成したミニビジネスプラン(要約)を持ち帰り、宿題として、日常業務の中で追加資料(特にユーザーニーズ調査と実現方法)の作成を進める

第2回新規事業開発研修
(1回目の1カ月後)
2日間
  • ①本格的なビジネスプランを講師と一緒に作成

※研修中に作成したビジネスプランを持ち帰り、不足部分を宿題として作成を進める

第3回新規事業開発研修
(2回目の1カ月後)
1日間
  • ①第2回新規事業開発研修で作成したプランのレビューを実施し、講師からフィードバックを行う
  • ②講師の指導を元にビジネスプランの精緻化を進める

※宿題が不十分であったり、成果が出ないと判断した場合、この回で終了とする

第4回新規事業開発研修
(3回目の2週間~1カ月後)
3時間程度 プレゼンテーションの基本を踏まえ、事前のリハーサルを行い、経営陣を前に成果を発表

その他にも、様々な知識・スキルの向上に関するサービスがございます。

■観察眼やゼロベースの思考力、着想力の習得、強化

■プロジェクトマネジメント力の習得、強化

【参考】上司の部下育成力・フィードバック力の向上

■ITリテラシーの向上

■AI・RPAに関する知識や活用スキルの習得

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