2023年11月08日
運送業界の「2024年問題」が目前に迫っている。2024年4月から働き方改革法案でドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限され、物流量の減少が懸念されているのだ。ドライバーの拘束時間が短縮されることで、これまで通りのやり方では、トラック輸送量が大幅に減少せざるを得ない。そこで知恵を絞っているのが、商用車の車体メーカー。ジャパンモビリティーショーでは、日本自動車車体工業会がドライバーの負担軽減と物流効率を引き上げる独自製品が紹介されている。
短い労働時間で輸送量を減らさないためには、勤務時間全体におけるドライバーの運転時間を長くする必要がある。ドライバーの勤務時間には荷物の積み下ろしに伴う待機時間が含まれる。積み下ろしに時間がかかれば、その分だけドライバーの運転時間が減る。いわば「アイドリング状態」の時間を短縮できるのが、日本トレクスの「スワップ冷凍フラットパネルバンボデー」だ。
シャシー(車体)とボデー(荷台)が分離し、運転手は目的地に着いて荷台を取り外し、別の荷台をセットすることで荷物の積み下ろしにかかる時間を大幅に短縮できる。展示している冷凍バンボデーは冷凍機を内蔵。荷台のみでも冷凍保管が可能で、食品輸送に最適だ。
荷物の積み下ろしで手待ち時間を短縮することは、ドライバーの運転時間を増やすために重要な対策だ。しかし、トラックの閉鎖された荷室での積み下ろし作業は、空間的な制限もあり、なかなか思い通りには運ばない。ならば荷台を開放して、どこからでも荷物の搬出・搬入作業をできるようにしたらどうか。その発想で開発されたのが、山田車体工業の「フルリフトFLAP」だ。
荷台側面がガルウイングのように大きく開放されるのに加えて、ルーフ(天井部分)と上桟が70cmほど上がるので、広々とした空間でどの方向からでも荷物の積み下ろしがスムーズにできる。溶接構造を多く取り入れることでボデーの強度を保ち、高い気密性を確保。自社開発のカーボンFRPを使用した断熱サンドイッチパネルの採用で庫内温度を安定して維持、結露の発生が少ないと好評だ。温度や湿度の変化を嫌う精密機械や美術品の輸送にも用いられている。
長時間労働の禁止に伴い、ドライバーは1人でも多く確保しておきたい。そのためにも初心者や女性、高齢者などを新たな働き手として受け入れることも「2024年問題」の解決には重要だ。自動車を運搬するキャリアカー(陸送車)は、不安定な姿勢での作業や高所での車両への乗り降り、固縛作業が必要で、高所作業によるケガのリスクもつきものという厳しい労働環境だった。
陸送車は、熟練作業者のみが車両の積み下ろしや運転ができる「ドライバーを選ぶ」車両でもある。今回出展した「3台積み自動移動フロア」は自動移動フロアで車両を積み込むため、高所作業や不安定な姿勢での作業をなくした。初心者や女性でも運転はもちろん、車両の積み下ろしという特殊な作業を容易にこなすことができる。
運転手不足の中でも熟練度の高いベテランドライバー不足は深刻だ。ドライバーの技量が最も求められるのはトレーラーだろう。トレーラーを思い通りに運転するためには、優れた運転能力と経験に基づく運転スキルが必要になる。
東邦車輛の16輪ステアリングトレーラは、従来は固定しているトレーラーの車輪を油圧でコントロールしてドライバーの運転を助け、狭い道路でも小回りがきく。都心部のビルやマンション建設で、建設機械や鉄骨をはじめとする長尺の建設資材を輸送するニーズに応える。
ドライバー不足で社会問題化しそうなのが、過積載問題の再燃だ。「10t大型リヤダンプ スケールダンプ仕様」は高精度の計量装置を内蔵しており、実際の積載量が荷台壁上部に取り付けられた電光掲示板に表示される。後続車や周囲から正確な積載量が分かるため、過積載を予防する効果があるという。
公共工事では過積載は厳禁。万が一にも過積載で事故が起こった場合は、発注取り消しや入札停止になることも。一方、正確な積載量が一目で分かるため、積載量ギリギリまで積み込むことができる。無駄のない運搬が可能だ。
ドライバー争奪戦になると、「ホワイト企業」の運輸会社に人材が集まる。スケールダンプで積載量を表示して走行するダンプカーを運行する会社なら、コンプライアンス意識が高いと認識されるはずだ。同車は「グッドデザイン ベスト100」にも選出されている。
配信元:M&A Online
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