株式会社インソース総合研究所

【経営哲学】東洋思想から現代のマネジメントを考える~「人を動かす」ではなく「人が自然と動く」仕組みへ

「どうすれば、社員がもっと主体的に動いてくれるのか」多くの経営者や管理職が抱える、身近な悩みではないでしょうか。これまでのマネジメントでは、目標を設定し、役割を与え、進捗を管理し、必要に応じて指示や働きかけを行うことで、人や組織を動かしてきました。

いわば、外から「力を加える」ことで人や組織を動かす考え方です。しかし、価値観が多様化し、変化のスピードが速くなった現在、細かな指示や管理だけで組織を動かし続けることには限界があります。そこで、少し視点を変えてみます。「人をどう動かすか」ではなく、「人が自然に動く状況をどうつくるか」。このような経営のあり方を考えるとき、ヒントとなるのが「東洋思想」です。

このコラムはインソースが開講している、1科目から学べるプレMBA「神戸大学MBA教授陣に学ぶ経営学の実践知」(東京・有楽町開催)より、講座の一部をご紹介しております。

「人を動かす」から「人が自然と動く」へ~東洋思想に学ぶマネジメント

老子には、「無為」という考え方があります。これは単に「何もしない」という意味ではありません。ここでは、無理に物事を動かそうとするのではなく、物事が自然に動いていくあり方を考える視点として捉えてみます。また、孫子には「勢」という考え方があります。個々の人の能力だけに頼るのではなく、状況のつくり方によって、人や組織が持つ力を発揮しやすくするという発想です。つまり、人を押して動かすのではなく、人が動きやすい状況をつくるという考え方です。

たとえば、斜面に置かれた物体は、強く押さなくても自然に動きます。重要なのは「どれだけ強く押すか」ではなく、「どのような斜面をつくるか」です。この考え方を経営に置き換えると、個人に働きかけるだけでなく、人や組織がどのような状況に置かれているかに目を向けることの重要性が見えてきます。

評価制度、権限、情報共有、会議の仕組み、企業文化、目標設定など、さまざまな要素が組み合わさって、人や組織の行動を促したり、逆に行動を妨げたりします。たとえば、挑戦を評価する制度があれば新しい行動が生まれやすくなる一方、失敗を避けることが重視される環境では、挑戦そのものが起こりにくくなることがあります。つまり、マネジメントは、単に人を管理・統制することではなく、人や組織が動く「地形(制度・仕組み)」を設計することともとらえることができます。

「人が自然と動く」状況をつくる3つの視点

実務において設計する際は、以下のような視点で考えることが有効です。

①兆しを読む

組織や現場で起きている小さな変化に目を向けます。組織の中で生まれた小さな変化も、そのままにしておけば、やがて一つのやり方として定着したり、周囲に広がったりすることがあります。

だからこそ、変化がまだ小さい段階で、その背景や向かっている方向を捉えることが重要です。「この動きは、今後どのように広がっていくのか」「どのような条件を整えれば、望ましい方向により進みやすくなるのか」を考えます。

②小さく試す

最初から大きな制度変更や全社的な改革を行うのではなく、まずは限定された範囲で試してみます。ここで重要なのは、施策を成功させることだけを目指すのではなく、どのような条件が人や組織の動きを生み出すのかを確かめることです。

試行の際には、特別な支援や過度な労力をかけなければ成立しない方法になっていないかにも目を向けます。「何をしたから動きが生まれたのか」「どの条件が動きを後押ししたのか」を検証し、効果を見極めます。そうすることで、人や組織が動きやすくなるきっかけや条件を見つけ、次の施策や仕組みの設計につなげていきます。

③動きが続く仕組みを設計する

小さな試行を通じて、人や組織が動きやすい条件が見えてきたら、それを一時的な成功で終わらせず、継続的に動きが生まれる仕組みを設計します。

日常業務の作業手順、情報共有の方法、会議の進め方、評価のあり方などを見直し、望ましい行動が自然に生まれやすい環境を整えます。重要なのは、個人の意欲や能力だけに頼らないことです。試行で得られた反応を踏まえて仕組みを調整し、人や組織が無理なく動き続けられる状態をつくります。

経営の視野を広げる

ここまで、東洋思想を入り口に「人を動かす」のではなく、「人が動く」条件をつくるという考え方を見てきました。では、なぜ経営において、このような哲学的な視点が必要なのでしょうか。実際の経営では、どのような環境を整えればよいのか、何を変え、何を残すべきなのか、簡単には答えが出ないこともあります。制度を変えればよいのか、組織文化に働きかけるべきなのか。状況によって、適切な判断は異なります。

こうした場面で求められるのは、何を大切にして経営判断を行うのかという軸と、目の前の状況を多面的に捉える視点です。そこで重要になるのが、経営哲学と、異なる領域の知見を学ぶことです。

経営哲学とは

経営哲学とは、経営者が大切にする価値観や、経営における基本的な考え方のことです。目の前の問題にどう対処するかという個別の判断ではなく、「そもそも、経営とは何を目指すものなのか」「人や組織をどのように捉えるのか」といった、より根本的な考えを指します。

経営環境が変化し、これまでのやり方が通用しなくなったとき、過去の成功事例や既存のルールだけでは判断できない場面が増えていきます。そうしたときに、経営哲学は「何を大切にして判断するのか」という軸になります。

異なる領域の知見を学ぶ

経営では、目の前の課題に対して、常に一つの正解があるとは限りません。組織をどう動かすか、どこに投資するか、どのような事業に取り組むかなど、さまざまな選択肢の中から、自社にとってのよりよい答えを考える必要があります。

そのためには、経営哲学だけでなく、戦略、マーケティング、財務・会計、組織、人材など、さまざまな領域の知識や考え方を組み合わせて判断することが重要です。一つの専門知識を深めるだけではなく、異なる領域の知見をつなぎ、経営を多面的に捉える視点が求められます。

とはいえ、経営を体系的に学ぶためには、必ずしもMBAのような資格を取得する必要があるわけではありません。実際の経営課題を題材にしながら、経営について考えるための知識や視点を学び、日々の判断に活かしていく。そうした実践的な学び方もあります。

第3期プレMBAプログラム「神戸大学MBA教授陣に学ぶ経営学の実践知2026」

経営について改めて学びたいけれど、MBAのように長期間かけて学ぶのは難しい。業務の専門領域を個別に学ぶだけでなく、それらを経営という大きな視点から捉えてみたい。こうしたニーズに応える学びの場として、インソースでは、神戸大学MBA教授陣による「経営学の実践知」を提供しています。このコラムでは第1回、「【プレMBAコース1】経営哲学」の内容についてご紹介しました。

2026年度は、MBAのコア科目である戦略論、マーケティング、財務会計などに加え、「経営哲学」「ビジネスデータ分析」を含む全8科目を開講。各科目は1日で完結し、講義だけでなくケース討議・演習を通じて、経営学の知識を実際の判断につなげる構成となっています。

経営を一つの専門領域だけから捉えるのではなく、さまざまな経営知を組み合わせて判断する力が求められる今、こうした実践的な学びを通じて普段の経営を一段深く考えてみてはいかがでしょうか。

2026年度 開催概要

  • 開講期間:2026年10月2日より、毎週金曜日 13:00〜18:00
  • 会場:インソース 有楽町セミナールーム(JR有楽町駅より徒歩1分)
  • 受講形態:1科目から受講可能(事前課題あり)※5科目以上の受講で修了証を発行
  • カリキュラム(全8科目):
    1. 経営哲学>2026年10月2日
      【プレMBAコース1】経営哲学:東洋思想から学ぶ、「正解のない経営判断」のための知恵<神戸大学MBA教授陣に学ぶ経営学の実践知>
    2. マーケティング>2026年10月9日
      【プレMBAコース2】マーケティング:起業家的機会をとらえるエフェクチュアル・マーケティング<神戸大学MBA教授陣に学ぶ経営学の実践知>
    3. ビジネスデータ分析>2026年10月16日
      【プレMBAコース3】ビジネスデータ分析:データという迷宮を、あるべき場へと接続する手法と実践<神戸大学MBA教授陣に学ぶ経営学の実践知>
    4. 財務会計>2026年10月23日
      【プレMBAコース4】財務会計:ビジネスパーソンの共通言語である財務諸表の体系的な理解と分析手法<神戸大学MBA教授陣に学ぶ経営学の実践知>
    5. 組織行動論>2026年10月30日
      【プレMBAコース5】組織行動論:多様性を活かし成果を生み出す、インクルーシブ・リーダーシップの実践<神戸大学MBA教授陣に学ぶ経営学の実践知>
    6. ビジネスエコノミクス>2026年11月6日
      【プレMBAコース6】ビジネスエコノミクス:経済学の分析モデルを企業経営の意思決定に活用する実用的知見<神戸大学MBA教授陣に学ぶ経営学の実践知>
    7. 戦略論>2026年11月13日
      【プレMBAコース7】戦略論:戦略理論とスピンオフ企業の事例から読み解く、新規事業創出の条件<神戸大学MBA教授陣に学ぶ経営学の実践知>
    8. 技術経営>2026年11月20日
      【プレMBAコース8】技術経営(MOT):技術を基点としたイノベーションのための組織と人材マネジメント<神戸大学MBA教授陣に学ぶ経営学の実践知>

プログラムの詳細およびお申込みについては、インソース事務局までお気軽にお問合せください。

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