■必要なのは「判断軸」
通常、クレーム対応には「判断」を求められます。
「購入した商品を自宅で試着してみたところ、袖口にシミがあることが分かったので返品したい」
⇒通常商品ならば、ご要望通り返品の手続きを承る
⇒アウトレット商品ならば、返品不可の前提で販売しているので、丁重にお断りをする
上記の例のように、明確に対応方法が決められている中での判断は、さほど難しいものではありません。しかし、次の例のような場合、応対者の判断はかなり難しくなります。
「明日の娘の発表会用に注文したドレスが、メーカー側の手違いで間に合わないですって? 一体どうしてくれるの!」
⇒取り急ぎ、既存のドレスの中から一つお選びいただき、それで明日の発表会はご対応いただく。でき上がりの遅れているドレスについては、そのまま買い取るのか返品されるのかはお客さまに決めていただく。
こちらの例の応対者は、このままではお客さまに納得していただくことはできないと考え、まずは明日の発表会用のドレスをご用意することが必要と「判断」しました。そこで、自店ででき得る方法として、既製品のドレスの中からお選びいただくという方法を提示しました。さらに、今回の納期遅れはこちら側のミスであり、注文したドレスの返品を要望されても仕方がないと「判断」し、どうされるかはお客さまに委ねることにしました。
このような「判断」は、いずれもイレギュラーな条件下での選択であり、全てのパターンを想定してルール化したりマニュアル化することは、現実的ではありません。
判断の基準とする「判断軸」を応対者が身につけ、それに基づいてケースバイケースで考えていくことが必要となります。
■そもそも判断軸とはどんなものか?
判断軸とは、複数の対応策・選択肢の良し悪しを評価(=判断)するための「ものさし」のことを言います。
判断軸は1つとは限らず、複数の判断軸から多面的に判断を行う必要があります。しかし、その複数の判断軸は、背反の関係(トレードオフ)となることもあるので、「どの判断軸を優先するか」を判断するための判断軸も必要となってきます。
■判断力は身につけることが可能
判断力は一定の経験を経て身につくものです。ただ、単に経験を重ねるだけでなく、判断の指針とする具体的な「判断軸」を意識的に自分の中に持つことで、より早く判断力を身につけることができるようになります。
■適切な判断をゆがめる心理的要素
適切な判断を行うにあたっては、人の判断をゆがめる心理的要素があることを認識し、極力排除しなければなりません。以下に代表的な例を示します。
・二分割思考~白黒をはっきりつけ、どちらかに決めつけてしまう
例)「○○に決まっている」「そんなのムリに決まっている」
・完全主義思考~100点でなければ、0点と同じという考えのため、落としどころを見つけられない
例)「この値段でないと購入できない」
・自動思考~自分勝手な思い込みが悪循環を引き起こす
例)「あの人はクレーマーに違いない」という思い込みが態度に表れる
・スキーマ~決まった思考パターンで、思考のショートカットを行う
例)「この○○は他でもやっているので、大丈夫」など、前例主義の典型的思考パターン
・属人主義~誰が発言したかという情報が判断に影響を与える
例)「○○課長がこう言っているから間違いない」
☆次回もお楽しみに!