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ENERGY vol.02(2020年夏号)掲載

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行動経済学を活用した若手リーダーの育成

アフターコロナ時代、成果を上げる「業務主体者」が評価される

コロナ禍の影響でテレワークが浸透する中、成果主義が強化されてきています。働いている時間ではなく、どれだけ成果を上げ、組織に貢献できたのかで評価されるようになります。成果がシビアに問われる時代になるからこそ、受け身な姿勢は評価されません。アフターコロナ・ウィズコロナ時代を生き抜く若手リーダーに求められる役割は、「上司の指示に忠実に従うフォロワー」ではなく、自分で仕事を見つけ、推進できる「業務主体者」です。

「人は感情で動く」ことに着目した行動経済学とは

しかし、部下の主体性は勝手に引き出されるものではありません。では、どうすれば誰もが効果的に部下の主体性を引き出せるのでしょうか。インソースでは、行動経済学の活用が解決に有効と考えています。

行動経済学とは、「人は感情で動く」ということに着目した学問です。コロナ禍でマスク不足に伴い、他の紙製品もなくなるかもしれないというデマが流れました。合理的に判断すれば、買いだめせず普段通りに購入するはずですが、実際には多くの人が店に殺到しました。このように人は感情で動き、時には非合理な行動をとります。

同様に、部下も「モチベーションが下がり、自分で考えようとする意欲がなくなる」「失敗したくないから、言われたことしかしない」など、感情で動いてしまいます。ここで、主体性を発揮できない理由を行動経済学を活用して分析することで、主体性を引き出す方法を見つけることができます。

ナッジ理論のフレームワークEASTを活用し、主体性を引き出す

行動経済学を現場でより使いやすくしたものを、ナッジ理論と言います。

部下の主体性を引き出すためには、図表1のようにナッジ理論のEASTというフレームワークを活用することができます。

●Easy:行動のハードルを下げる

まず、若手リーダーを育成するためには、本人の実力を超えた困難な仕事を任せて、成長を促していくことが求められます。困難な仕事に対して、部下は高いハードルを感じますが、その仕事をスモールステップに分解することで、ハードルを下げることができます。仕事を主体的に推進できない部下に対しては、図表2のように「マイかんばん」を活用し、仕事のプロセスとゴールをイメージさせることが有効です。

●Attractive:目的意識を持たせる

モチベーションが低下している部下には、「何のためにやるのか」目的を示すことで、モチベーションを高めることができます。

キャリアの視点から業務を捉えさせることで、「自分の仕事は、今後のキャリアとつながっている」という実感を持たせることができます。対話の時間が少ない場合には、1対1面談の活用がおすすめです。時間を取りじっくり話すことで、部下に業務からの気づきをうながし、意欲を高めることができます。

●Social:周囲の期待を伝える

主体者になるためには、周囲が期待することを察知して、先回りして行動できなければなりません。周囲の期待を理解できていない部下に対しては、その期待を伝える質の高いフィードバックが不可欠です。

Can:できたこと、Keep:維持すること、Change:変えること、Try:挑戦することの4つの視点から、仕事へ取り組む姿勢、進め方、成果に対してフィードバックを行います。

●Timely:適切なタイミングで介入する

図表3 のように「与えられた業務は卒なくこなすが主体性は低い部下」「やる気はあるが成果に結びつきにくい部下」など様々な特性をもった部下がいます。そこで個々人のレベルに合わせた適切なタイミングで介入することで、主体性を引き出すことができます。

以上のように、戦略的に部下の主体性を引き出すことは、若手リーダー育成の第一歩となります。EASTの打ち手のうち、自分の部下にはどれが有効か、日々部下を観察し実行されてみてはいかがでしょうか。

文/安西 菜穂

インソース コンテンツ開発部 チーフ研究員。早稲田大学文化構想学部卒。2017年インソース入社。2018年から現職。部下指導や主体性発揮など行動経済学を活用した研修プログラムを開発。

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