インテグリティとは?コンプライアンスを超えて、信頼と誠実で組織を強くする新しい経営の基盤

近年、企業経営において「インテグリティ」が注目されています。
マネジメント理論で有名なピーター・ドラッカーが著書のなかで「インテグリティこそ経営トップに求められる最も重要な資質である」と述べているほか、世界一の投資家として知られるウォーレン・バフェットも、インテグリティが欠如した人を雇用することの組織的なリスクについて語っています。
インテグリティとは信頼の土台~誠実さを貫く姿勢が人と組織を強くする
インテグリティ(integrity)とは、ラテン語のinteger(全体の・完全な・健全な)から転じた言葉で、「高潔」「誠実」「清廉」「真摯」と訳されます。
ビジネスにおけるインテグリティとは、誰も見ていない場面でも、自らの良心や価値観に従い、一貫した誠実な行動を取り続ける姿勢を指します。たとえば、気付かれにくいミスを報告し正しい対応を取る従業員や、利益が出にくい案件でも顧客に正直に説明する営業担当は、まさにインテグリティを体現しているといえます。
倫理やモラルとの違い
しばしば混同される言葉に「倫理」や「モラル」があります。
- 倫理:社会や組織における行動規範。職業倫理、企業倫理のような集団としての基準
- モラル:個人の内面的な道徳観や善悪の意識
- インテグリティ:倫理やモラルを自らのものとして理解し、行動に反映する姿勢
倫理やモラルが「知っている状態」ならインテグリティはそれを「実行している状態」といえます。
コンプライアンスだけでは不十分~インテグリティは+αの価値を生み出す
インテグリティを理解するうえで欠かせないのが、コンプライアンスとの違いです。両者は密接に関連していますが、性質は大きく異なります。
| 目的 | 基準 | 主体性 | |
|---|---|---|---|
| コンプライアンス | 法律や組織内規則などを守ることが目的で、ルール違反を避ける「守りの姿勢」 | 守るべき「最低限のライン」が基準 | 外部から与えられたルールに従う受動的な姿勢 |
| インテグリティ | 法令遵守を前提としつつ、高い倫理観に基づきどうあるべきかを追求する「攻めの姿勢」 | 法律で許されていても、倫理的に正しい行動や社会の期待に応える「理想の姿」が基準 | グレーゾーンでも自律的に判断し行動する能動的な姿勢 |
インテグリティとコンプライアンスは対立するものではありません。コンプライアンスは企業活動の土台であり、インテグリティはその上に築かれる企業価値の象徴です。したがって、コンプライアンスだけでは信頼は得られず、インテグリティを伴って初めて持続的な成長が可能になります。
インテグリティを体現する人の5つの特徴~信頼される人が共通して持つ行動原則
インテグリティのある人には、次のような特徴があります。
インテグリティのある人の特徴
- 誠実で正直である
自分の立場が不利になる可能性があっても、嘘やごまかしを言いません。自分の過ちを素直に認め、責任を持って対応します。
例:自分のミスを速やかに報告する、顧客に商品のメリットと注意点を正直に伝える - 一貫性がある
発言と行動に矛盾がなく、相手や状況によって態度を変えません。一貫した価値観に基づいて判断し、行動します。
例:誰も見ていない場所でも組織のルールを守る、誰に対しても同じ態度で接する - 責任感が強い
与えられた役割や仕事に対して、最後まで責任を果たそうとします。困難な状況でも、安易に投げ出すことはありません。
例:任された仕事を最後までやり抜く、部下の失敗も共に背負う - 公平・公正である
個人的な感情や利害関係にとらわれず、すべての人や物事を公平に扱います。立場の弱い人の意見にも真摯に耳を傾けます。
例:チームの成果を結果に基づき評価する、決定基準を明確に共有する - 他者への敬意を忘れない
役職や立場に関係なく、すべての人に敬意を持って接します。他者の意見や価値観を尊重し、建設的な対話を心がけます。
例:感謝を言葉で伝える、会議で異なる意見にも冷静に耳を傾ける
インテグリティが組織にもたらす3つの効果~信頼・生産性・リスク管理を高める
インテグリティがもたらすメリットは、次の3つが挙げられます。
組織の社会的信頼とブランド価値の向上
インテグリティの高い組織は、顧客や投資家から「信頼できるパートナー」として認識されます。誠実な製品開発、公正な取引、透明性の高い情報開示は、長期的な信頼関係を築き、ブランド価値を向上させます。
従業員のエンゲージメントと生産性の向上
倫理的で誠実な運営を行う組織は、従業員の誇りと信頼を生み、エンゲージメントが高まります。公平で透明性のある環境は、創造性や協働意識を促進し、生産性向上にも直結します。
不祥事の防止とリスク管理の向上
インテグリティが根付く組織では、従業員一人ひとりが倫理的判断を下せるため、法令ではカバーできないグレーゾーンの問題にも対応可能です。品質データの改ざんなどの不祥事や、ハラスメントの発生リスクを低減し、組織の持続可能性を高めます。
インテグリティを浸透させる3つの仕組み~組織文化として根づかせるために
インテグリティは、個人の資質だけに頼るものではありません。組織全体での仕組みづくりが不可欠です。
経営層による明確なメッセージの発信
組織のインテグリティを高めるうえで最も重要なのは、トップの強いコミットメントです。トップが率先してインテグリティの重要性を語り、誠実な行動を示すことで、その価値観は組織全体に浸透します。組織内の会議などでの継続的な発信が重要です。
行動規範の策定とインテグリティ宣言
従業員が日々の業務で判断に迷った際の道しるべとして、具体的な行動規範を策定することが有効です。さらに、組織としての決意を内外に示す「インテグリティ宣言」を行う組織も増えています。このように組織が具体的な行動に移すことで、従業員一人ひとりの意識を高めることができます。
インテグリティ・マネジメントの導入
インテグリティを組織文化として定着させるために、次のような継続的な仕組みをつくることを「インテグリティ・マネジメント」と呼びます。
- 評価制度への反映:業績だけでなく、インテグリティに基づいた行動(誠実さ、チームワークへの貢献など)を人事評価の項目に加える
- 相談・通報窓口の設置:従業員が倫理的な問題について安心して相談できる窓口を設置し、問題を早期に発見・解決できる体制を整える
- 定期的なモニタリング:従業員意識調査などを通じて、組織のインテグリティの状態を定期的に測定し、改善策につなげる
信頼される組織へ~一人ひとりの意識が企業文化をつくる
インテグリティを高めることで、組織は社会からの信頼を手に入れ、リスクマネジメントを強化することができます。そのためには、従業員一人ひとりがインテグリティの概念を理解し、実践力を養うことが重要です。さらに、組織としての仕組みを整えることで文化として根付き、長期的な成果や持続可能な成長につながります。日々の積み重ねが、組織の信頼力と強さを支える基盤となるのです。
(半日研修)(リーダー向け)インテグリティを考える研修~正しく行動するための判断軸をつくる
インテグリティの概念を理解し、自身やチームの考え方、行動の判断軸をつくっていく研修です。インテグリティの必要性やこれまでの偉人の考え方を学び、インテグリティそのものへの理解を深めつつ、自身やチームでどのように実践していくかを考えます。
よくあるお悩み・ニーズ
- 組織としてインテグリティを理解し、高めていきたい
- ルールの徹底やコンプライアンス教育以外の手段を必要と感じている
- チームで動く際の共通の言語となるような研修を行いたい
研修のゴール
- 日頃の業務における判断軸を考え、深める
- 偉人のエピソードを参考に、俯瞰力を磨く
- 自身やチームでインテグリティを浸透させるためにできることを考える
セットでおすすめの研修・サービス
(役員・管理職向け)インテグリティを考える研修(半日間)
インテグリティを自組織で浸透させるためには、どうすればよいかを考える研修です。役員・管理職は率先して実践すべき立場として、また組織内に浸透させる立場として、ディスカッションをしながら深めていきます。
自組織にとってのインテグリティを考える力・判断するための俯瞰力を身につける・組織にもたらす効果を認識し、浸透させる手段を考える力を身に付けることが出来ます。役員、上級管理職の方・理念浸透や組織全体のコンプライアンス強化をはかりたい方におすすめです。
【偉人に学ぶ】志を立て、運命を開拓する~渋沢栄一の生き様から考える仕事の向き合い方
本研修では、幕末期から昭和初期という激動の時代を生き抜いた渋沢栄一の生き様から、働くうえで大切にしたいことを学びます。研修を通して、普段の自分の仕事の向き合い方を振り返っていただくとともに、渋沢栄一の考えを学び、自分の志を考えていただくワークなどを通して、変化の多い今の時代を乗り越えるヒントを得ていただきます。
【ラインナップ】人格の陶冶研修シリーズ
ビジネスパーソンに求められる人格について、考える場を提供する研修・サービスのラインナップです。ルールで明確に規制されてはいないものの、倫理的にやってはいけないことが世のなかには多くあります。そのときに何を判断基準として行動していけばよいかを考えます。





